2026/08/17

愛猫が年齢を重ね、体重減少や多飲多尿といった症状から「甲状腺機能亢進症」と診断されたとき、今後の薬代や治療がとても心配になりますよね。
そんなとき、「毎月どれくらい薬代がかかるのだろう?」、「投薬をやめてしまったらどうなるのだろう?」、「そもそも甲状腺機能亢進症って?」といった疑問をお持ちではありませんか?
猫の甲状腺機能亢進症は、体内で甲状腺ホルモンが過剰に産生される病気ですが、適切に治療を行うことで、症状の改善が期待できます。しかし、自己判断で投薬を中断すると、症状が再発するおそれがあります。
今回は、現役獣医師の意見をもとに、猫の甲状腺機能亢進症の治療費や治療方法、症状、副作用、投薬をやめた場合のリスクなどについてわかりやすく解説します。
最後までお読みいただき、猫の甲状腺機能亢進症について正しい理解を深めましょう。
- 猫の甲状腺機能亢進症の薬代は月5,000〜10,000円程度が目安
- 投薬中止で起こり得る再発や体調悪化
- チアマゾールの副作用と飲ませ忘れ時の対応
【執筆】まーふぃー先生(獣医師)
犬猫をはじめとした小動物診療に携わってきた獣医師。院長経験を経て、フリーランスとして開業。現在は診療・往診のほか、ペットの健康や医療に関する記事作成、ペット用品の監修など幅広い業務を行っている。
目次
猫の甲状腺機能亢進症の薬代はいくら?
猫の甲状腺機能亢進症は、一般的には内服薬で治療を行います。使用する内服薬は、体内で産生される甲状腺ホルモンの量を調節する作用を持ちます。
そのため、一時的に投薬を行うのではなく、診断された後は生涯投薬を続けることが一般的です。では、猫の甲状腺機能亢進症の治療にかかる薬代はいくらくらいなのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
(参考文献:Hyperthyroidism in Cats | VCA Animal Hospitals)
月5,000〜10,000円程度がひとつの目安
多くの場合、猫の甲状腺機能亢進症の治療には、「チアマゾール」という薬が使用されます。この薬のみで治療を行った場合、その費用は動物病院により異なるものの、月5,000〜10,000円程度がひとつの目安となります。
基本的にはこの薬のみで治療を行いますが、外科的な手術や療法食といった別の治療を検討することも珍しくありません。
その場合は、この金額よりも高くなることがあります。
(参考文献:Cat Hyperthyroid Medication Cost in Pets | SpectrumCare)
猫の甲状腺機能亢進症とは?薬代が継続してかかる理由
では、そもそも猫の甲状腺機能亢進症とはどのような病気なのでしょうか?
猫の甲状腺機能亢進症は、高齢の猫でよく見られ、継続的な治療が必要なホルモンの病気です。その理由も含め、詳しく見ていきましょう。
(参考文献:https://spectrumcare.pet/costs/cat-hyperthyroid-medication-cost)
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気
猫の甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、全身の代謝が異常に高まる病気です。主に「甲状腺」という臓器が過形成を起こし、ホルモンを過剰に分泌することが原因であることが多いです。
その結果、
- 食欲増進
- 体重減少
- 嘔吐・下痢
- 多飲多尿
などの症状が見られます。
一般的には、薬でホルモンの分泌を抑える治療が行われますが、甲状腺を外科的に摘出する治療や、療法食による治療が行われるケースも少なくありません。
薬は病気を完治させるものではなく、ホルモンをコントロールするもの
前述の通り、薬はあくまでホルモンの分泌を抑え、正常な分泌量に近づけるように治療を行うためのものです。
投薬によって根本的に甲状腺機能亢進症を治療するものではありません。一方、根本的な治療は、甲状腺そのものを外科的に摘出する治療になりますが、全身麻酔や術後の合併症のリスクから、積極的に行うケースは少ないと言われています。
私自身の診察でも、手術を行うケースはほとんど経験していません。
そのため、現在でも猫の甲状腺機能亢進症は、薬による対症療法を行うことが一般的です。
(参考文献:Hyperthyroidism in Cats | Cornell University College of Veterinary Medicine)
内服治療では生涯にわたる投薬が必要になることが多い
前述の通り、薬はホルモンの分泌を抑えるものであるため、治療は生涯にわたって行われることが一般的です。投薬を中断した場合は、甲状腺機能亢進症の症状が再発することも珍しくありません。
一方、途中で投薬が不要となるケースや、薬の副作用で投薬が難しくなるケースもあります。治療の方針や費用について悩んだときは、自己判断で休薬せず、一度獣医師に相談するようにしましょう。
猫の甲状腺機能亢進症で見られる症状
ここまでは、猫の甲状腺機能亢進症の治療とその薬代について解説しました。
では、実際に甲状腺機能亢進症の猫にはどのような症状が見られるのでしょうか?それぞれを詳しく見ていきましょう。
(参考文献:Hyperthyroidism in Cats | VCA Animal Hospitals)
食欲はあるのに体重が減る
猫の甲状腺機能亢進症でよくある症状の一つとして、甲状腺ホルモンが過剰になることで代謝が亢進し、食欲はあるのに体重が減少する症状が挙げられます。日頃からこまめに体重を測定しておくと、病気の早期発見につながります。
また併せて、
- 落ち着きがなくなる
- 夜泣きをする
- 攻撃的になる
といった、異常に活動的な様子が見られることもあります。
水をよく飲む・尿が増える
甲状腺ホルモンが過剰になると、心拍数や血液循環が増加し、腎臓へ流れる血液量も多くなります。
その結果、腎臓で作られる尿の量が増加し、体内の水分が通常より多く排出されます。
失われた水分を補おうとして水を飲む量が増え、多飲多尿の症状が現れることがあります。
日頃から一日にどれくらい水を飲んでいるか計測しておくと、病気の早期発見につながります。
嘔吐・下痢・毛づやの悪化
甲状腺ホルモンが過剰になると、胃腸の動きが活発になる傾向があります。そのため、嘔吐や下痢が頻繁に見られることが少なくありません。
私自身の診察でも、繰り返す嘔吐で来院したケースで検査を行い、甲状腺機能亢進症が見つかることも多いです。また、代謝の異常な亢進や栄養状態の変化、グルーミング不足などの影響で毛づやが悪くなることもあります。
猫の甲状腺機能亢進症の薬の副作用と注意点
では、猫の甲状腺機能亢進症の治療薬であるチアマゾールに副作用はあるのでしょうか?チアマゾールは、猫の甲状腺機能亢進症の治療で使用される薬ですが、 副作用が見られることもあります。
副作用でよくある症状を詳しく見ていきましょう。
(参考文献:Hyperthyroidism in Cats—Two FDA-Approved Drugs Available to Treat It | FDA)
嘔吐・下痢・食欲不振など
チアマゾールは、ときに嘔吐や下痢、食欲不振などの消化器症状を引き起こします。
その理由として、
- 消化管の粘膜への刺激
- 薬剤への不耐性
- 急激な甲状腺ホルモンの低下
といったものが考えられています。
繰り返し消化器症状を引き起こす場合は、投薬量の調節を含めた治療の見直しが必要であるケースも少なくありません。
皮膚のかゆみ・顔まわりの異常
チアマゾールを投薬した後、顔をかゆがったり、顔や首の皮膚に脱毛や皮膚炎が起こったりすることがあります。
これは、チアマゾールに対するアレルギー反応が関与していると考えられています。
特に投薬開始後数週間以内に見られることが多く、重症例では投薬を中止することがあります。
チアマゾールを初めて投薬する場合は、特に体調を慎重に確認するようにしましょう。
異変があるときは自己判断で中止せず動物病院へ相談する
チアマゾールの副作用としては、前述した症状のほかに、
- 食欲不振
- 嘔吐・下痢
- 肝臓や腎臓の数値の上昇
- 免疫介在性溶血性貧血
- 血小板減少症
- 好中球減少症
といったものがまれに見られることが報告されています。
これらの副作用は、外見からでは分からないこともあります。愛猫の体調に異変を感じた場合は、自己判断せずまずは動物病院に相談するよう心がけましょう。
猫の甲状腺機能亢進症の投薬をやめてしまった場合のリスク
では、もし自己判断で投薬をやめてしまった場合、どのようなリスクが考えられるのでしょうか?
投薬を中止すると甲状腺ホルモンの値が再び上昇し、症状が再燃したり、高血圧で心臓への負担が大きくなったりして、体調を崩す原因となることも珍しくありません。では、それぞれを詳しく見ていきましょう。
甲状腺ホルモン値が再び上がる
甲状腺機能亢進症の治療薬は、あくまで過剰に分泌される甲状腺ホルモンの分泌を抑えるための薬です。
そのため、自己判断で投薬を中止すると再び甲状腺ホルモンの値が上昇し、病気のコントロールが難しくなることがあります。
症状が落ち着いているように見えても、病気そのものが治ったわけではありません。
獣医師の指示なく投薬を中断しないことが大切です。
高血圧や心臓への負担が大きくなる
自己判断で投薬を中止し、甲状腺ホルモンが再び過剰な状態が続くと、心拍数や血圧が上昇し、心臓や血管への負担が大きくなります。その結果、高血圧や心肥大、不整脈などの心疾患を引き起こすリスクが高まります。
また、高血圧によって、
- 目
- 腎臓
- 脳
などの重要な臓器にも悪影響が及ぶことも少なくありません。
そのため、自己判断で投薬を中止することは非常に危険です。
薬代が負担でも、急にやめる前に相談すべき理由
甲状腺機能亢進症は長期間の治療が必要となるため、薬代が家計の負担になることもあります。
しかし、費用を理由に自己判断で投薬を中止すると、症状の再発や悪化によって追加の検査や入院治療が必要となり、結果的にさらに高額な医療費がかかる場合があります。そのため、薬代が負担であっても、急に投薬を中止することは避けましょう。
また、検査の頻度や投薬量の調節を行うことで、費用負担を工夫できるケースもあります。治療費に不安がある場合は、自己判断で投薬を中止せずに、一度動物病院に相談することが大切です。
(参考文献:Cat Hyperthyroid Medication Cost in Pets | SpectrumCare)
「猫 甲状腺機能亢進症 薬代」に関するよくある質問
Q1.血液検査はどのくらいの頻度で必要ですか?
一般的には、治療開始後は2〜4週間ごとに血液検査を行い、甲状腺ホルモン値や肝臓・腎臓の数値などを確認します。それらの数値に問題がなく、猫の体調が安定している場合は、そのまま投薬を継続することが多いです。
その後は、3〜6か月ごとの定期検査が推奨されることが一般的です。ただし、猫の状態や使用している薬の量によって適切な検査間隔は異なります。
副作用の早期発見にもつながるため、獣医師の指示に従って定期的に受診しましょう。
(参考文献:Methimazole for Dogs & Cats: Uses, Dosage & Side Effect | SpectrumCare)
Q2.薬を飲ませ忘れた場合はどうすればいいですか?
薬を飲ませ忘れた場合、飲ませ忘れに気づいたタイミングによってその対応は異なります。まず、次の投薬時間が近くない場合は、気づいたときにすぐ投薬することが一般的です。
しかし、次の投薬時間が近い場合は、飲ませ忘れた分を飛ばし、通常どおり次回分を与えることもあります。
ただし、薬を飲ませ忘れたからといって、2回分をまとめて与えることは避けましょう。また、適切な対応は薬の種類や猫の状態によって異なる可能性があるため、動物病院へ相談するよう心がけましょう。
(参考文献:Methimazole for Dogs & Cats: Uses, Dosage & Side Effect | SpectrumCare)
Q3.薬をやめるとすぐ悪化しますか?
投薬を中止した場合、多くの猫で甲状腺機能亢進症の症状が再発します。
症状の再発時期には個体差があるものの、投与中止から数日から数週間で食欲増進や体重減少、多飲多尿などの症状が再び見られるケースも見られます。また、目立った症状がなく見た目には元気そうでも、高血圧や心臓への負担が隠れて進行していることがあります。
症状がないからといって自己判断で休薬せず、必ず獣医師と相談しながら治療を継続しましょう。
(参考文献:Hyperthyroidism in Cats | VCA Animal Hospitals)
【まとめ】見込まれる費用を正しく把握し、愛猫に無理のない治療計画を立てよう
猫の甲状腺機能亢進症は高齢猫でよく見られる病気であり、多くの場合は生涯にわたる治療が必要になります。
薬代は月5,000〜10,000円程度がひとつの目安ですが、定期的な血液検査や診察費が別途かかることも考慮しておきましょう。
また、症状が落ち着いているように見えても、自己判断で投薬を中止すると再発や高血圧、心疾患などのリスクが高まります。
費用や副作用に不安がある場合は、獣医師と相談しながら治療方針を見直すことが大切です。
愛猫が少しでも快適に長く暮らせるよう、継続的な管理と定期的な健康チェックを心がけましょう。
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愛猫の状態に合わせて、無理なく継続できる治療方法を一緒に検討していくことが大切です。
監修・うさパラ コンテンツ制作チーム