愛犬が年齢を重ね、獣医師から心臓病と告げられたとき、とても心配になりますよね。
そんなとき、
「薬代は毎月どれくらいかかるのだろう?」
「治療は一生続くのだろうか?」
「投薬は途中でやめてしまっても大丈夫?」
といった疑問をお持ちではありませんか?
日本では小型犬の飼育が主流であるため、特に「僧帽弁閉鎖不全症」と呼ばれる心臓病が多く見られます。
この病気では、投薬が長期間に及ぶケースが多く、薬代だけでなく検査費や通院費も継続的に必要になることをご存知でしょうか?
今回は、現役獣医師の意見をもとに、犬の心臓病にかかる投薬費用の目安やサイズ別の違い、治療を続けるべき理由について分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、愛犬が心臓病と言われたときにかかる費用や、急な入院時の費用などについて、正しい理解を深めましょう。
目次
【結論】犬の心臓病の投薬費用は月3,000~30,000円程度がひとつの目安
結論から申し上げますと、犬の心臓病の投薬費用は、月額3,000~30,000円程度が一般的な目安です。
これは、病気の進行度や体重、使用する薬の種類によって大きく変わります。
軽度で薬が少ない場合は月額数千円で済むこともありますが、心臓病が進行すると複数の薬を併用するため、費用は増加します。
具体的に使用される薬としては、
- 強心剤
- 血管拡張薬
- 利尿剤
- 抗不整脈薬
などが挙げられます。
(参考文献:Dog Heart Medication Cost in Dogs | SpectrumCare)
薬代だけでなく診察費・検査費・通院費もかかる
実際に犬の心臓病を治療するために、薬代だけでなく、診察や検査に関わる費用もかかります。
心臓病の犬に行う具体的な検査としては、
- 血液検査
- レントゲン検査
- 心エコー検査
- 血圧検査
- 尿検査
などが挙げられます。
これらの検査は、治療が適切に行われているか確認するうえで必要な検査です。
通院頻度は月1回前後が多く、一度の検査の費用は2~5万円程度かかると言われています。
(参考文献:Dog Heart Disease Treatment Cost in Dogs | SpectrumCare)
犬の心臓病で投薬が必要になる主な病気
では、犬の心臓病で投薬が必要になる病気には、どのようなものがあるのでしょうか?
近年、手術による心臓病の治療方法が開発されていますが、多くの心臓病において投薬が必要になります。
具体的には、
- 僧帽弁閉鎖不全症
- 拡張型心筋症
- 肺高血圧症
などが挙げられます。
今回は「僧帽弁閉鎖不全症」について、詳しく見ていきましょう。
犬で多い心臓病は僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症は、小型犬の飼育が主流である日本において、非常に多い心臓病です。
実際の診察においても、心臓病を抱える多くの犬が、僧帽弁閉鎖不全症に罹患しています。
加齢によって心臓の弁(僧帽弁)が変性し、うまく閉じなくなることで血液が逆流し、全身への血液の流れが滞る病気です。
好発犬種としては、
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- チワワ
- トイ・プードル
- ポメラニアン
などが挙げられます。
初期症状として、咳や疲れやすさなどが見られることもあり、進行すると肺水腫や心不全を起こし、命に関わることも珍しくありません。
(参考文献:Mitral Valve Disease in Dogs | VCA Animal Hospitals)
心雑音だけでは投薬が不要なケースもある
では、僧帽弁閉鎖不全症において、どのようなケースで投薬が必要になるのでしょうか?
もし健康診断などで、獣医師から心臓の雑音(心雑音)を指摘されても、必ずしもすぐに投薬が必要になるわけではありません。
犬の僧帽弁閉鎖不全症では、アメリカ獣医内科学会(ACVIM)から、以下の表のような分類が提唱されています。
表 ACVIMのステージ分類
| ステージA | 心臓に構造的な異常(逆流など)は認めないが、犬種的に心疾患のリスクがある。 |
| ステージB1 | 心臓に構造的な異常(逆流など)があるものの、症状はなく、心拡大もない。 |
| ステージB2 | 心臓に構造的な異常(逆流など)があり、症状はないものの、心拡大がある。 |
| ステージC | 現在あるいは過去に心不全の兆候(肺水腫など)の既往があり、標準的な治療に十分反応する。 |
| ステージD | 現在あるいは過去に心不全の兆候(肺水腫など)の既往があり、標準的な治療に十分反応しない(≧フロセミド8mg/kg q24h)。 |
心雑音は、ステージB1から確認されるものの、治療はステージB2以降から始めることが推奨されています。
そのため、レントゲン検査や心エコー検査などで心臓の拡大を確認し、拡大がなければ経過観察となるケースも少なくありません。
犬の心臓病の投薬費用の内訳
では、実際に犬の僧帽弁閉鎖不全症を治療するにあたり、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?
犬の僧帽弁閉鎖不全症では、薬代だけでなく検査や入院においても費用がかかります。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
心臓の薬代
犬の僧帽弁閉鎖不全症の投薬費用は、月額1~3万円程度が一般的な目安です。
ただしこれは、小型犬における目安であり、病気の進行度や体重、使用する薬の種類によって大きく変わります。
使用される薬には、
- 血管拡張薬
- 利尿剤
- 強心薬
- 抗不整脈薬
などが挙げられますが、軽症では1種類のみの投薬で済むこともあります。
しかし、進行すると複数の薬を併用することも多く、その分費用が増えることも珍しくありません。
(参考文献:Dog Heart Medication Cost in Dogs | SpectrumCare)
診察料・処方料
前述の薬代のほかに、通院時の診察料や処方料が毎回必要になります。
これらは1回あたり1,000~2,000円程度が一般的です。
僧帽弁閉鎖不全症では、薬の調整や副作用の確認を行うために、症状が安定していても継続的な診察が必要となります。
私自身の経験では、多くの犬が1~2か月ごとに検査や処方のために来院しています。
血液検査・レントゲン・心臓エコー検査
犬の僧帽弁閉鎖不全症の治療では、定期的な検査が欠かせません。
一部の心臓の薬は、腎臓に負担をかけることが知られており、心臓と腎臓のそれぞれの負担のバランスをうまく取ることが、治療において大切です。
そのため、心臓病の犬に行う具体的な検査としては、
- 血液検査
- レントゲン検査
- 心エコー検査
- 血圧検査
- 尿検査
などが挙げられます。
それぞれの料金の目安は以下の表にまとめました。
表 検査にかかる費用の目安
| 検査内容 | 料金の目安 |
| 血液検査 | 1~2万円 |
| レントゲン | 5,000円~1万円 |
| 心エコー検査 | 1~2万円 |
| 血圧検査 | 1,000~2,000円 |
| 尿検査 | 2,000~3,000円 |
(参考文献:Dog Heart Disease Treatment Cost in Dogs | SpectrumCare)
救急受診・入院が必要になった場合の費用
犬の僧帽弁閉鎖不全症では、ときに急に病状が悪化し、夜間救急への受診や入院治療が必要になる場合が少なくありません。
その場合、多くは酸素室での管理や点滴・注射での治療、緊急での各種検査が行われます。
これらを含めると、一度に約20~40万円の費用が発生することもあるため、急な出費へ備えることも大切です。
(参考文献:Dog Heart Failure Treatment Cost in Dogs | SpectrumCare)
犬のサイズ別|心臓病の投薬費用の目安
では、犬の僧帽弁閉鎖不全症において、犬のサイズにより投薬費用にどれくらい差が出るのでしょうか?
心臓の薬は体重によって投与量が変わるため、犬のサイズによって投薬費用に差が生じます。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
(参考文献:Dog Heart Medication Cost in Dogs | SpectrumCare)
小型犬の投薬費用
チワワやマルチーズ、トイ・プードルなどの小型犬で、1種類のみの投薬を行った場合は、月1~2万円程度がひとつの目安です。
小型犬は僧帽弁閉鎖不全症が多い犬種ですが、大型犬と比べ、投薬量が比較的少量で済むため、費用は抑えやすい傾向があります。
ただし、病状が進行し、複数種類の薬を使用する場合は、月2~3万円ほどかかることも少なくありません。
中型犬の投薬費用
体格が大きめなキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルやコッカー・スパニエルなどの中型犬では、月2~3万円程度がひとつの目安です。
症状の進行や薬の種類によって差が大きくなる傾向があり、定期検査の費用を含めると年間負担はさらに増加します。
病状が進行し、複数種類の薬を使用する場合は、月4~5万円ほどかかることも少なくありません。
大型犬の投薬費用
大型犬では小型犬と比べ薬の投与量が増えるため、1種類のみの投薬を行った場合でも、月2~4万円以上になるケースもあります。
病状が進行し、複数種類の薬を使用する場合は、月5~6万円ほどかかることも少なくありません。
また、僧帽弁閉鎖不全症以外にも、拡張型心筋症などの重症化しやすい病気にかかることもあり、検査や入院費を含めるとさらに高額な治療になる場合があります。
犬の心臓病の治療はいつまで続く?
犬の心臓病は慢性的に進行する病気が多く、治療は生涯にわたることが一般的です。
近年では外科手術による治療が行われているものの、私の経験では長期にわたる投薬が必要になるケースが多いと感じています。
その理由をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
(参考文献:Mitral Valve Disease in Dogs | VCA Animal Hospitals)
心臓病の薬は完治ではなく進行抑制・症状緩和が目的
現在の犬の心臓病における内科的な治療の目的は、「病気を完全に治す」というより、「進行を遅らせて生活の質を保つ」ことにあります。
つまり、適切な投薬によって咳や呼吸困難を軽減し、健康な犬と変わりない生活を送れるようにするということです。
適切な時期から投薬を開始すれば、長期的な予後が期待できるケースもあります。
自己判断で薬をやめると悪化するリスク
適切な投薬管理により、長期的に安定して生活を送れている場合、「もう薬は必要ないのでは?」と感じる飼い主様も少なくありません。
しかし、症状が落ち着いて見えても、自己判断で薬を中止すると急激に悪化する可能性が否定できません。
その理由としては、あくまで薬が心臓の機能をサポートしているのであって、心臓病の犬では、心機能自体は低下していることが多いためです。
減薬・薬の変更・通院間隔の調整という選択肢
ここまでは、犬の心臓病では、長期にわたる検査や治療が必要になる理由を解説しました。
しかし、実際のところ経済的負担が大きくなるケースも少なくありません。
私自身も、経済的な理由から、必要な検査が実施できなかった経験があります。
そのようなときは、一度獣医師へ相談することを推奨します。
具体的な方法としては、薬の種類を絞って減薬する、検査の頻度を見直すといった方法で、経済的な負担を軽くすることができる可能性があります。
高価だから治療をすべて諦めるのではなく、継続できる治療方法を一緒に考えることが重要です。
「犬 心臓病 投薬 費用」に関するよくある質問
Q1.心臓病の犬はどのくらいの頻度で通院が必要ですか?
犬の心臓病での通院は、軽度であれば3~6か月ごとで済む場合もありますが、投薬開始後は月1回前後の通院になることがあります。
病状が進行すると、薬の調整や肺水腫のチェックのため、頻繁な受診が必要になるケースも少なくありません。
一方、心雑音のみで心拡大がないケースでは、年に1回の定期検査となることもあるため、検査の頻度は個々の症例に合わせて調節することが一般的です。
こまめな通院が難しい場合は、一度獣医師と相談することをおすすめします。
Q2.犬の心臓病は手術で治せますか?
日本でも、一部の高度な設備を持つ動物病院で、心臓病の手術が行われています。
しかし、実施できる病院は限られるうえ、費用も高額です。
なかには数百万円規模になるケースもあり、すべての犬で手術を行うわけではありません。
また、手術を行っても、完全に投薬をゼロにすることができないケースも少なくありません。
そのため、犬の心臓病では、現在でも多くの場合は投薬による内科治療が中心となっています。
Q3.費用が厳しい場合、治療をやめてもいいですか?
犬の心臓病の治療では、経済的な理由で悩まれる飼い主様は少なくありません。
しかし、自己判断で治療をすべて中断すると、急激な心臓病の悪化につながる可能性があります。
もし経済的な負担を感じたときは、まずは獣医師へ相談し、薬の見直しや通院頻度の調整などを行い、負担を減らす方法を一緒に考えることが大切です。
【まとめ】犬の心臓病の投薬費用は決して安くはないが、自己判断でやめることは危険
犬の心臓病の治療は、薬代だけでなく定期検査や通院費も必要になるため、長期的に見ると決して安い治療ではありません。
特に小型犬に多い僧帽弁閉鎖不全症では、生涯にわたる管理が必要になるケースも少なくありません。
しかし、適切な投薬によって症状の進行を抑え、愛犬が穏やかに過ごせる時間を延ばせる可能性があります。
一方で、費用面に不安があり、自己判断で治療を中止すると、急に病状が悪化する可能性も否定できません。
経済的な負担を感じたときは、治療方針や通院頻度について獣医師と相談しながら、継続可能な方法を探すことが、愛犬の生活の質にとっても大切です。
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監修・うさパラ コンテンツ制作チーム