【獣医師監修】犬の椎間板ヘルニアが治る確率とは?症状の特徴や治療方法について解説

   

愛犬がある日突然、後ろ足を引きずったり、歩けなくなったりすると、とても不安になりますよね。

そんなとき、

「このまま歩けなくなるのでは?」

「椎間板ヘルニアにかかったのかな?」

「すぐに受診した方がいいのだろうか?」

といった疑問をお持ちではありませんか?

椎間板ヘルニアは、日本でも小型犬を中心によく見られる病気で、突然歩けなくなることも少なくありません。

実は、その症状の進行度や治療開始までの時間によって、症状が改善する可能性が大きく異なることをご存知でしょうか?

今回は、現役獣医師の意見をもとに、犬の椎間板ヘルニアの病態や治る確率の目安、症状の特徴、治療方法などについてわかりやすく解説します。

最後までお読みいただき、椎間板ヘルニアについて正しい知識を深めるとともに、もし愛犬が突然歩けなくなったときの対処法を身につけましょう。

うさパラ コンテンツ制作チーム

【監修】うさパラ コンテンツ制作チーム

犬猫ペットのお薬通販輸入代行うさパラのコンテンツ制作チーム。専門知識を活かし、正確で分かりやすい情報発信を心がけています。 薬剤師 獣医師 が在籍。

【結論】犬の椎間板ヘルニアが治る確率は、「治療開始までの時間」で大きく変わる

結論から申し上げますと、犬が椎間板ヘルニアで歩けなくなった場合、治療開始までの時間が長くなるほど、治る確率が低くなる傾向があります。

では、実際にどれくらいの時間が目安とされているのでしょうか?

詳しく見ていきましょう。

(参考文献:Intervertebral Disk Disease in Dogs | Today’s Veterinary Practice

(参考文献:Degenerative Diseases of the Spinal Column and Cord in Animals – Nervous System – | MSD Veterinary Manual

特に犬の椎間板ヘルニアは48時間以内の対応が重要

一般的に椎間板ヘルニアでは、時間の経過とともに脊髄へのダメージが進行します。

そのため、早期に診断し、早期に治療を行うことが、運動機能の回復にとても重要と言われています。

特に麻痺が出始めてから48時間以内に適切な治療を行うことで、運動機能が回復する可能性が高まるとされています。

逆に治療が遅れると脊髄の損傷が進行し、運動機能が回復しないケースも少なくありません。

私自身の診察でも、発症から時間がたっており、治療をしても症状の改善が乏しかった症例を経験しています。

犬の椎間板ヘルニアとは基礎知識

では、そもそも椎間板ヘルニアとはどのような病気なのでしょうか?

まず椎間板とは、脊椎を構成する椎骨と椎骨の間に存在し、クッションの役割を果たす組織です。

この椎間板が加齢とともに変性してヘルニアを起こすことで、多くの場合、脊髄を圧迫し痛みや麻痺を引き起こします。

そのような病気のことを「椎間板ヘルニア」と呼びます。

(参考文献:Degenerative Diseases of the Spinal Column and Cord in Animals – Nervous System – | MSD Veterinary Manual

脊髄が圧迫されると痛みや麻痺が起こる理由

脊椎の中央には、太い神経である脊髄が通っています。

また、脊髄には、痛みを脳へ伝える「感覚神経」や、脳からの指令を四肢へ伝える「運動神経」などが走行しています。

そのため、脊髄が圧迫されるとそれらの神経も障害を受け、結果として痛みや麻痺などの症状が引き起こされるのです。

さらに、圧迫の程度や、どの神経が障害されたかなどによって、症状の出方が異なります。

犬種によって発症しやすさが違う

椎間板ヘルニアは犬種によって発症リスクに差があり、

  • ミニチュアダックスフンド
  • コーギー
  • フレンチブルドッグ
  • ペキニーズ
  • ビーグル
  • ラサアプソ

といった犬種は起こりやすいとされています。

これらの犬種では、椎間板の変性が若いうちから進みやすい傾向があり、椎間板ヘルニアの平均的な発症年齢は3~6歳と言われ、若いときから発症が見られることも少なくありません。

(参考文献:Intervertebral Disc Disease | American College of Veterinary Surgeons

加齢・体型・生活環境も発症リスクになる

前述の通り、椎間板ヘルニアの原因は主に加齢による椎間板の変性です。

しかしそれ以外にも、肥満や生活環境が発症のリスクになることも少なくありません。

体重が増加し肥満になると、関節にかかる負担が増加します。

また、段差の乗り降りのためにジャンプをしたり、滑りやすいフローリングで転倒してしまったりした場合も、その衝撃で椎間板ヘルニアを発症する可能性があります。

前述のような好発犬種では、これらのリスクにあらかじめ備えておくことが大切です。

(参考文献:Dachshund – Intervertebral Disc Disease | UFAW

犬の椎間板ヘルニアの症状の特徴

では、もし愛犬が椎間板ヘルニアを発症した場合、どのような症状が見られるのでしょうか?

椎間板ヘルニアの症状は、どこにヘルニアが発生したかで異なります。

ここでは、胸腰部に椎間板ヘルニアが生じた場合のグレード分類をご紹介します。

(参考文献:Understanding the Stages of Intervertebral Disc Disease in Pets | The Cooke Veterinary Medical Center

(参考文献:Dachshund – Intervertebral Disc Disease | UFAW

グレード1:痛みだけが出る初期症状

グレード1では、

  • 背中を触ると嫌がる
  • 抱っこを嫌がる
  • 動きがぎこちない
  • 震える
  • 突然痛がる
  • 上を見上げるのを嫌がる

といった痛みのサインが見られることが多いです。

この段階では麻痺はなく、一般的に安静と内科治療で改善する可能性が高いと言われています。

内科治療では約90%の症例で症状の改善が認められ、外科治療でも約90%の症例で改善が認められたと報告されています。

グレード2:ふらつきや後ろ足を引きずる軽度麻痺

グレード2では、歩行時にふらつく、後ろ足を引きずるなど軽い麻痺の症状が見られるものの、自力での歩行は可能です。

それに加えて、前述のような痛みのサインが認められることも少なくありません。

この段階でも、一般的に安静と内科治療で改善する可能性が高いと言われています。

内科治療では約90%の症例で症状の改善が認められ、外科治療でも約90%の症例で改善が認められたと報告されています。

グレード3:自力で立てない・歩けない中等度麻痺

グレード3では、麻痺が進行し、自力で立ち上がれず歩行も困難になります。

かろうじて足を動かすことができ、痛覚も残っていることが多いものの、手術を検討するケースが増える段階です。

内科治療では約70%の症例で症状の改善が認められ、外科治療では約90%の症例で改善が認められたと報告されています。

早期に適切な治療を行えば、運動機能が回復する可能性があります。

グレード4:足が動かず、痛みへの反応は残る重度麻痺

グレード4では、麻痺が進行し、自力で足を動かすことも、歩行することも困難になります。

また、自力で排便・排尿ができなくなるケースも少なくありません。

さらに、痛覚が徐々に鈍くなり、深部痛覚のみ残っていることが多い段階です。

内科治療では約50%の症例で症状の改善が認められ、外科治療では約80%の症例で改善が認められたと報告されています。

早期に適切な治療を行えば、運動機能が回復する可能性があります。

グレード5:深部痛覚が消失した最重度の状態

グレード5では脊髄の障害が重度となり、歩行や排泄が困難になることに加え、痛みへの反応が完全に消失した状態となります。

内科治療で症状が改善する割合は5%未満と報告されています。

また、発症から24時間以内に外科治療を行っても、症状が改善する割合は50%程度と報告されており、48時間を超えるとさらに改善する割合が低下するため、早期の治療が重要な段階です。

犬の椎間板ヘルニアで手術を勧められるケース

では、椎間板ヘルニアの治療において、内科治療ではなく手術が勧められるケースとはどのような場合なのでしょうか?

一般的に、手術はグレード3以上、特に歩行不能や麻痺が進行している場合に検討されることが多いです。

実際、私自身の診察でも、グレード1の症例ではまず内科治療から始めるケースが多いです。

しかし、内科治療では根本的な原因を取り除くわけではないため、症状の再発が見られることが少なくありません。

このように、内科治療で改善が見られない場合や再発を繰り返すケースでも適応となります。

そのため、獣医師と相談しながら、手術を行うかどうか総合的に判断することが大切です。

(参考文献:Understanding the Stages of Intervertebral Disc Disease in Pets | The Cooke Veterinary Medical Center

犬の椎間板ヘルニアが疑われるときに今すぐすべき行動

では、もし愛犬に椎間板ヘルニアを疑うような症状が見られる場合、どのような行動を取るべきなのでしょうか?

前述の通り、椎間板ヘルニアの治療は早期に行うことが大切であるため、異変に気づいたときは適切かつ迅速に行動することが重要です。

実際に取るべき行動をそれぞれ詳しく見ていきましょう。

(参考文献:Intervertebral Disk Disease in Dogs | Today’s Veterinary Practice

(参考文献:Degenerative Diseases of the Spinal Column and Cord in Animals – Nervous System – | MSD Veterinary Manual

まず安静にして歩かせない

まず、体を動かすと痛みや麻痺が悪化する可能性があるため、安静にさせましょう。

特に、段差の乗り降りや滑りやすい床での移動には注意が必要です。

内科治療を行う場合でも、治療中は安静にする必要があります。

安静にする期間は最低でも1~2か月間は必要と言われており、治療においても安静が重要であることが分かります。

自宅で無理にマッサージやストレッチをしない

次に、自己判断でマッサージやストレッチなどの運動を行うことは避けましょう。

場合によっては、症状を悪化させるリスクがあります。

もしマッサージやリハビリを行う場合は、獣医師による指導のもとで行うことが安全です。

まずは無理に動かさず、安静の状態で動物病院を受診しましょう。

受診時に伝えると診断が早くなる情報をまとめておく

動物病院を受診する際には、症状が出るまでの経過をまとめておくと、診察をスムーズに進める助けになります。

具体的には、

  • いつから症状が出たか
  • どのように悪化したか
  • 食欲はあるか
  • 排尿や排便は可能か
  • 痛みはあるか

といった情報を整理しておくとよいでしょう。

また、歩き方などの愛犬の様子を動画で撮影しておくのも有効です。

「犬 ヘルニア 治る確率」に関するよくある質問

Q1.犬のヘルニアは自然に治ることがありますか

犬の胸腰部椎間板ヘルニアでは、グレード1〜2で症状が軽度の場合は、安静と内科治療によって自然回復するケースも多く見られます。

ただし、「ヘルニアを放置してよい」という意味ではなく、適切な診断と治療を行うことが前提となります。

椎間板ヘルニアのような症状であっても、必ずしも椎間板ヘルニアとは限りません。

また、症状が軽く見えても急に進行することも少なくありませんので、必ず動物病院での診察を受けるようにしましょう。

(参考文献:Degenerative Diseases of the Spinal Column and Cord in Animals – Nervous System – | MSD Veterinary Manual

Q2.グレード5でも歩けるようになりますか

犬の胸腰部椎間板ヘルニアのグレード5は最も重症なグレードであるため、治療によって症状が改善する確率は低くなります。

しかし、歩けるようになる可能性がゼロというわけではありません。

発症から手術までの時間が短いほど、運動機能が回復する可能性は高まります。

また、術後のリハビリを積極的に行うことでも、運動機能が改善する場合があります。

症状が重度だからといって治療を諦めるのではなく、まずは動物病院を受診し、獣医師と相談したうえで治療を決定しましょう。

Q3.高齢犬でも手術は受けられますか

結論から申し上げますと、高齢犬でも全身状態が良好であれば手術は可能であることが多いです。

ただし、犬の胸腰部椎間板ヘルニアの手術は、基本的に全身麻酔で行われます。

そのため、全身麻酔のリスクや合併症を考慮する必要があります。

年齢だけで判断せず、術前検査により愛犬の全身の状態を把握し、椎間板ヘルニアの症状と手術のデメリットを十分に踏まえたうえで、総合的に判断しましょう。

【まとめ】愛犬の足がおかしいと感じたら、すぐに専門医へ

犬の椎間板ヘルニアは、早期発見・早期治療ができるかによって、症状が改善する可能性が大きく変わる疾患です。

特に「後ろ足を引きずる」「急に歩けない」といった症状は、見逃してはいけない椎間板ヘルニアのサインであることも少なくありません。

軽度であれば内科治療で改善するケースも多い一方、麻痺が進行すると手術が必要になることもあります。

特に発症から48時間以内の治療開始が、運動機能の回復を左右します。

迷っている間にも症状は進行するため、異変に気づいたらすぐに動物病院を受診することが何より重要です。

愛犬の未来を守るために、迅速な行動を心がけましょう。

監修者コメント
監修者の写真

椎間板ヘルニアは、私自身の診察でもよく見かける病気です。 適切なタイミングで治療を行えば、多くの犬で症状の改善が期待できる一方、時間経過とともに改善の可能性が低下します。 実際に、様子を見ているうちに治療が遅れて、運動機能が十分に回復しなかった症例も経験しています。 インターネットの情報だけで自己判断せず、速やかに動物病院を受診するよう心がけましょう。 今回の記事が、犬の椎間板ヘルニアへの理解を深める一助となれば幸いです。

監修・うさパラ コンテンツ制作チーム

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