愛猫が突然、吐きそうで吐かない仕草や、「オエッ」という変な音を出し始めたら、心配になりますよね。
そんなとき、
「すぐに動物病院を受診したほうがいいのだろうか?」
「おなかの調子が悪いのだろうか?」
「元気そうだし、様子を見てもいいかな?」
といった疑問をお持ちではありませんか?
実は、嘔吐の原因としてよく挙げられるのが毛玉ですが、それ以外にもさまざまな原因が挙げられます。
また、嘔吐かと思ったら実は「咳」の症状で、猫喘息のほか、気管支炎や猫風邪といった病気の可能性があることをご存じでしょうか?
特に咳と嘔吐は見た目が似ており、飼い主様が判断を誤りやすいポイントです。
軽い症状に見えても、重大な病気が隠れているケースも少なくありません。
今回は、現役獣医師の意見をもとに、咳と嘔吐の違いや、猫が吐きたそうで吐かない理由、やりがちな誤った対処法などについて、分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、愛猫の体調に異常が起きたときに、適切な対応ができるよう知識を深めましょう。
目次
【結論】原因の切り分けが大切、「嘔吐」と「咳」
猫が突然吐こうとしたり、変な音を出したりする際に、見分けるべきポイントは「嘔吐」なのか「咳」なのか、ということです。
嘔吐は主に消化器の症状であり、咳は主に呼吸器の症状であるため、両者を切り分けることで、からだのどこに不調があるのかを知ることができます。
(参考文献:Cat Hairballs 101: How to Help | PetMD)
咳と違い「オエッ」という仕草に見える
一般的に咳と嘔吐の仕草はとても似ていて、見分けることが難しいと言われています。
私自身の診察でも、嘔吐なのか咳なのか、飼い主様の言葉だけでは判断に悩むことも少なくありません。
その際は、動画で症状を記録しておくと、より明確に区別できることがあります。
実際に、咳の場合は「カハッ」「ケホッ」「ゼーゼー」といった音を立てることが多く、嘔吐の場合は「オエッ」と吐いているような仕草に見えることが多いです。
(参考文献:Cat Asthma: What It Is, Symptoms, and Treatment | PetMD)
(参考文献:Cat Coughing: Why It Happens and When To Call Your Vet | PetMD)
猫が吐きそうで吐かない理由①猫喘息や気管支炎
では、猫が吐きそうで吐かないときには、どのような理由が考えられるのでしょうか?
まず、1つ目の理由としては、猫喘息や気管支炎などの呼吸器疾患が挙げられます。
猫喘息は、猫の肺や気管支などに炎症が起こり、空気の通り道が狭くなることを特徴とする慢性的な呼吸器疾患です。
猫が環境中のアレルゲンを吸い込むことで、
- 咳
- 呼吸困難
- チアノーゼ
- 異常な呼吸音
といった症状が発作的に起こります。
症状が重い猫喘息の場合は、緊急で治療が必要なケースもあるため、注意が必要です。
猫喘息は、猫がアレルゲンを吸い込んだ際に起きるアレルギー反応によって引き起こされます。
具体的には、
- ほこり
- タバコの煙
- 植物
- ダニ
- カビ
- 家庭用品
などがアレルゲンとなることが一般的です。
(参考文献:Cat Asthma: What It Is, Symptoms, and Treatment | PetMD)
猫が吐きそうで吐かない理由②毛玉の可能性
猫が吐きそうで吐かない理由として、最も一般的な原因は毛玉です。
毛玉は特に長毛種で起こりやすく、猫が自分で毛づくろいをしている際に毛を飲み込んでしまうことで、徐々に胃の中に毛が溜まります。
その結果、猫は嘔吐し毛玉を吐き出しますが、場合によっては、毛玉を排出するまでに何度も吐きそうで吐かない様子が見られることが少なくありません。
通常のグルーミングのほかにも、皮膚疾患により抜け毛が増えたり毛づくろいの頻度が増えたりする場合や、ストレスから過剰に毛づくろいをする場合は、毛玉を吐く頻度が増加することが多いです。
猫が頻繁に毛玉を吐く場合は、そのような原因が隠れている可能性もあるため、一度動物病院を受診することを推奨します。
(参考文献:Cat Hairballs 101: How to Help | PetMD)
猫が吐きそうで吐かない理由③食べ過ぎ・消化不良
猫がフードを食べ過ぎてしまったり、消化不良を起こしていたりするときも、吐きそうで吐かない様子が見られることがあります。
特に多頭飼いでは、他の猫に取られないように早く食べなければならないと感じて、早食いしてしまう猫もいます。
この場合、食べたばかりの食べ物をすぐに吐き戻してしまうことも少なくありません。
また、急に食事内容を変更したり、人の食べ物を盗食してしまったりした際に、消化不良を引き起こすことでも、嘔吐が見られることがあります。
猫に吐きそうで吐かない様子が見られた場合は、そのような原因に心当たりがないか確認してみましょう。
(参考文献:Why Is My Cat Gagging? | PetMD)
猫が吐きそうで吐かない理由④誤飲
猫は好奇心が旺盛な動物で、食べてはいけないものを誤飲してしまうことがあります。
私自身の診察においても、特に若い猫で、誤食によって体調不良を起こした症例をよく診察します。
誤飲した異物が消化管を刺激すると、猫は異物を吐き出そうと頻繁に嘔吐することが多いです。
また、異物が消化管を閉塞すると、食欲不振や排便しなくなるなどの症状が見られることも少なくありません。
このような症状に心当たりがある場合は、早急に動物病院を受診しましょう。
もし異物を猫の口内に見つけても、無理に取り除くと猫のからだに損傷を引き起こす可能性があるため、控えましょう。
(参考文献:Why Is My Cat Gagging? | PetMD)
猫が吐きそうで吐かない理由⑤猫風邪
猫が咳をしている場合は、風邪を引いている可能性があります。
猫風邪の最も一般的な原因はウイルス感染と言われており、約90%は猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルスによって引き起こされると推定されています。
猫風邪の場合は、咳のほかに、
- くしゃみ
- 鼻水
- 目やに
- 発熱
- 口内炎
- 角膜潰瘍
といった症状が同時に見られることも少なくありません。
多くの猫の場合、抗生物質の投与により7日から10日ほどで治ることが多いです。
しかし、猫によっては二次的な細菌感染や肺炎などを起こす場合もあります。
猫の嗅覚や味覚が鈍るほどの重度な鼻詰まりがある場合は、食欲にも影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
(参考文献:Cat Colds: Symptoms, Causes, and Treatment | PetMD)
よくやりがちな誤った対処法
ここまでは、嘔吐と咳の違いや吐きそうで吐かない理由について解説しました。
では、もし猫に嘔吐が見られた場合によくやりがちな、誤った対処法とはどのような方法なのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
無理に口をこじ開けて取ろうとする
一般的に、誤食した異物が原因で嘔吐をしている場合は、その異物を取り除く治療が必要となります。
もし、愛猫の口腔内に異物と思われるものがある場合、口をこじ開けて取りたくなりますよね。
しかし、無理に異物を取ろうとすると、歯や歯肉、消化管などを傷つけてしまう可能性があります。
また、猫は口の中のものを取られると思うと、反射的に飲み込んでしまうことも少なくありません。
その結果、より病状が悪化する可能性も否定できません。
目で見える位置に異物があったとしても、動物病院を受診し適切な処置を受けさせてあげましょう。
(参考文献:Why Is My Cat Gagging? | PetMD)
人間の薬を飲ませる
愛猫が咳や嘔吐をしていると、人間の咳止めや吐き気止めを飲ませて様子を見たくなりますよね。
現在は、インターネットでさまざまな情報を得ることができますが、猫に人間の薬を飲ませることは絶対に避けましょう。
猫は人と異なり、一部の薬剤で中毒を起こすことが知られています。
また、人間と猫で投薬量が大きく異なることも少なくありません。
さらに、咳と嘔吐の症状は区別が難しいため、現在の症状に合った薬を選ぶことはさらに難しいと思われます。
自己判断せず、獣医師の指示に従いましょう。
(参考文献:8 Risks of Treating Your Pet at Home | PetMD)
フードを大量に与える
猫が嘔吐をしているときに、フードを大量に与えると、さらに嘔吐を悪化させる可能性があります。
一般的に、フードは少量ずつで、一日の回数を増やして与えることが多いです。
また、咳をしている際も、フードを大量に与えることは避けましょう。
咳をした拍子に吐くこともあり、そのことで最悪の場合、誤嚥性肺炎を引き起こすことも少なくありません。
(参考文献:What Are the Best Cat Foods for Sensitive Stomachs? | PetMD)
再発を減らす予防
ここまでは、猫が吐きそうで吐かない原因とよくやりがちな誤った対処法について解説しました。
では、猫の嘔吐や咳の再発を減らすには、どのような対策をすればよいのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
毛玉予防
前述の通り、猫が吐きそうで吐かない理由の最も一般的な原因は「毛玉」です。
この毛玉を予防することが、嘔吐の再発を減らすうえでとても重要です。
具体的には、
- 毛玉対策のフードを使用する
- サプリメントを使用する
- こまめにブラッシングをする
- 皮膚のかゆみに対する治療を行う
といった対策が挙げられます。
愛猫に合ったケアを行ってあげましょう。
(参考文献:Cat Hairballs 101: How to Help | PetMD)
空気環境の見直し
愛猫に頻繁に咳が見られる場合は、室内の空気の衛生環境を見直すことも大切です。
咳の原因となる細菌やウイルスは、猫のくしゃみや咳による飛沫を介して感染します。
また、猫喘息の原因となるホコリや煙、ハウスダストマイトなどを減らすためにも、換気をしたり空気清浄機などを使用したりすることが大切です。
特に多頭飼育の場合は、こまめな換気を心がけましょう。
(参考文献:Cat Asthma: What It Is, Symptoms, and Treatment | PetMD)
定期健診・早期相談
どの病気にも言えることですが、定期的な健康診断や早めの受診を心がけることで、病気の早期発見・早期治療を行うことが大切です。
特に咳の場合は、短時間で急激に悪化することも少なくありません。
また、背景に命に関わる病気が隠れていることもあります。
病気を早期に発見することで、治療がスムーズになることはもちろん、手遅れになる前に愛猫の命を救えることもあります。
(参考文献:Cat Coughing: Why It Happens and When To Call Your Vet | PetMD)
(参考文献:Complete Cat Health Guide for Every Life Stage | PetMD)
【まとめ】猫の「吐きそうで吐かない変な音」は自己判断せず獣医師へ
愛猫が吐きそうで吐かず、変な音を出している場合、その原因はさまざまです。
嘔吐の場合、多くは毛玉が原因ですが、消化不良や誤飲など、受診が必要な病気が原因であることも少なくありません。
また、咳の場合も同様に、猫喘息や気管支炎などの治療が必要な病気が隠れていることもあります。
さらに、嘔吐と咳は見た目が似ているため判断が難しく、誤った対応をすると悪化する恐れもあります。
愛猫の症状をよく観察し、無理な対処をせず獣医師に相談することが大切です。
小さな体調の変化でも自己判断せず、動物病院を受診するよう心がけましょう。
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監修・うさパラ コンテンツ制作チーム