
愛犬がお散歩やドッグランでたくさん遊んだあと、足をかばって歩く様子をみると、心配になりますよね。
そんなとき、「犬も筋肉痛になるのだろうか?」、「どこか痛めてしまったのかな?」、「動物病院を受診した方がいいのだろうか?」といった疑問をお持ちではありませんか?
実際、獣医学的には十分に解明されていないものの、激しい運動や長時間の運動のあとには、犬にも人の筋肉痛のような筋肉の痛みやこわばりが生じることがあります。
一方で、足をかばったり引きずったりする様子は、関節や靱帯の損傷、骨や神経の病気などでも見られるため、「筋肉痛だから様子を見よう」と自己判断するのは危険です。
本記事では、現役獣医師の知見をもとに、犬に筋肉痛のような症状が現れるケースやよく見られる症状、考えられる病気、動物病院を受診する目安をわかりやすく解説します。
最後までお読みいただき、愛犬の筋肉痛について正しい理解を深め、症状が見られた際の対処法を身につけましょう。
- 犬に筋肉痛のような症状が出るケース
- 筋肉痛に似て見える病気やケガの可能性
- 自宅で確認したい点と受診を考える目安
【執筆】まーふぃー先生(獣医師)
犬猫をはじめとした小動物診療に携わってきた獣医師。院長経験を経て、フリーランスとして開業。現在は診療・往診のほか、ペットの健康や医療に関する記事作成、ペット用品の監修など幅広い業務を行っている。
目次
【結論】犬も筋肉痛のような痛みが出ることはあるが、自己判断は避けよう
結論から申し上げますと、人の筋肉痛のような痛みや違和感が、犬でも運動後に見られることがあります。
しかし獣医学的に、正確な筋肉痛の定義が定まっていないため、筋肉痛と診断されることはあまりありません。
私の経験上、犬が足をかばったり引きずっていたりする場合は、
- 外傷
- 関節炎
- 骨折
- 脱臼
- 靱帯の損傷
- 神経疾患
といった病気が原因であることが多いと感じています。
そのため、「筋肉痛だろう」と様子を見ていても、症状が良くならず病状が悪化することも珍しくありません。
愛犬の体調に異変を感じた場合は、早めに動物病院へ相談することが大切です。
(参考文献:Lameness in Dogs|VCA Animal Hospitals)
犬に筋肉痛のような痛みが出ることはある
犬でも、人の筋肉痛と似て、
- ドッグランで激しく運動したあと
- アジリティでトレーニングしたあと
- 長時間のお散歩をしたあと
- 急に運動量が増えたあと
などに、筋肉に痛みや違和感が出ることがあります。
ただし、健康な成犬では、筋肉痛のような症状が顕著に現れることは多くありません。
では、なぜ犬でも筋肉痛のような症状が現れるのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①激しい運動のあとに痛みやこわばりが出ることがある
近年、日本で人気の犬種として、トイプードル、チワワ、ヨークシャーテリアなどの小型の愛玩犬が挙げられます。
これらの犬種は狩猟犬などに比べると日頃の運動量が少なく、筋肉があまり発達していないケースをよく見かけます。
そのため、このような犬種が、ドッグランや長時間のお散歩で急に運動量が増加した場合、筋肉の痛みやこわばりが出ることもあります。
また犬では、腸腰筋や棘下筋などの筋肉を傷めるケースも報告されています。
(参考文献:Muscular Trauma in Dogs and Cats|Merck Veterinary Manual)
②年齢や運動量の変化で体に負担がかかることがある
特にシニア犬では筋力が低下しやすく、若い頃と同じ運動でも体への負担が大きくなります。
また、普段あまり運動しない成犬で、急に運動量が増えた場合も筋肉へ負荷がかかりやすく、痛みにつながることがあります。
さらに、シニア犬では、
- 変形性脊椎症
- 変形性関節症
- 免疫介在性多発性関節炎
- 膝蓋骨脱臼
などの持病があることも多く、運動によって筋肉に負荷がかかりやすくなるケースも珍しくありません。
(参考文献:Arthritis in Dogs|VCA Animal Hospitals)
犬の筋肉痛に似て見えるサイン
では、犬に筋肉痛のような痛みや違和感がある場合、どのような症状が見られるのでしょうか?
犬は人と異なり、筋肉が痛くても「痛い」と言葉で伝えることができません。そのため、愛犬の歩き方や姿勢、行動の変化から、飼い主さんが異変に気付いてあげることが大切です。
具体的には、
- 足をかばう
- 歩き方がいつもと違う
- 立ち上がりやジャンプを嫌がる
- 触られるのを嫌がる
- 震えている
- 元気がない
といった症状が挙げられます。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
(参考文献:Arthritis in Dogs|VCA Animal Hospitals)
①足をかばう・歩き方がいつもと違う
私の診察でも、最もよく相談を受けるのが、歩き方に関する症状です。
犬が足を痛めたときには、足をかばう・引きずるなど、いつもと比べて歩き方が異なる様子が見られることが少なくありません。
また、左右の足がともに痛い場合は、腰を振るように歩くことがあります。
これらの症状は、筋肉の痛みだけでなく、関節や靱帯の異常でも見られます。
症状が改善しない場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
②立ち上がる・階段を上る・ジャンプを嫌がる
普段は問題なくできていた動作をためらう場合は、筋肉や関節に痛みがある可能性があります。
足をかばう様子がなくても、
- 立ち上がりに時間がかかる
- 階段を避ける
- ゆっくり歩く
- ジャンプを嫌がる
- 歩幅が狭い
といった様子が見られる場合は、痛みや違和感を抱えているサインかもしれません。
症状が軽いように見えても、改善がない場合は一度獣医師に相談するよう心がけましょう。
③触られるのを嫌がる・震える・元気がない
犬の体に強い痛みがある場合、
- 特定の部位を触ると嫌がる
- 急に攻撃的になる
- 体を震わせる
- 元気がなくなる
といった様子が見られることも珍しくありません。
特に痛みが強い場合は、筋肉痛以外にも病気が隠れている可能性があります。
このような症状が見られる場合は、様子を見ずに動物病院を受診しましょう。
筋肉痛と思っていても別の原因が隠れていることがある
激しい運動や長時間のお散歩の後に起こる歩き方の異常や四肢の痛みは、筋肉の痛みや違和感だけでなく、さまざまな病気やケガでも起こります。
特に症状が強い場合や様子を見ても改善しない場合は、筋肉痛と自己判断せず原因を調べることが重要です。
では、実際にどのような原因で歩き方の異常や四肢の痛みが起こるのでしょうか?
よくあるトラブルとして、関節や靱帯、骨、神経のトラブルが挙げられます。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
(参考文献:Lameness in Dogs|VCA Animal Hospitals)
(参考文献:Muscular Trauma in Dogs and Cats|Merck Veterinary Manual)
①関節や靱帯のトラブル
激しい運動や長時間のお散歩の後では、全身の関節や靱帯、腱を痛めたり、炎症が起きたりすることが少なくありません。
具体的な病名としては、
- 膝蓋骨脱臼
- 前十字靱帯断裂
- 半月板損傷
- 上腕二頭筋腱炎
- 肩関節や股関節脱臼
- 滑膜の腫瘍
- 側副靱帯断裂
といったものが挙げられます。
なかでも、日本では小型犬や高齢犬が多いため、膝蓋骨脱臼や前十字靱帯断裂がよく起こると実感しています。
②骨や神経のトラブル
前述の関節や靱帯のトラブルの他に、骨や神経のトラブルから痛みや違和感が生じることもあります。
具体的な病名としては、
- 骨折
- 離断性骨軟骨症
- 椎間板ヘルニア
- 骨や神経の腫瘍
といったものが挙げられます。
これらの病気でも、まるで人間の筋肉痛のような様子が見られることも珍しくありません。
愛犬の様子に異変が見られた場合は、自己判断せず一度獣医師に相談しましょう。
自宅で確認したいポイントと動物病院へ相談する目安
では、愛犬の様子に異変が見られた場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
まずは、いつから症状が出たのか、運動や転倒など思い当たる出来事があったかを確認しましょう。
また、症状が片足だけなのか両足なのか、歩けるかどうか、食欲や元気に変化はないかも重要な情報です。
歩行の様子だけでなく、愛犬の状態を全体的に確認しましょう。
軽い筋肉への負担であれば安静で改善することもありますが、もし症状が続く場合や悪化するときは、動物病院で診察を受けるべき目安の一つだと考えられます。
具体的なチェックすべきポイントを、それぞれ詳しく見ていきましょう。
①いつから・何のあとに変化が出たかを確認する
動物病院を受診する前に、
- 何日前、または何時間前から症状が出たのか
- 症状が出る前に何をしていたか
- ここ数日の歩き方に異常はなかったか
- どのような症状が出ているのか
- 良くなっているのか、または悪くなっているのか
- 食欲や元気などに異常はないか
- 触って痛みがないか
といった点について確認しましょう。
また、動画で歩き方を撮影しておくと、獣医師へ状態を伝えやすくなるのでおすすめです。
②痛みが強い・長引く・悪化する場合は相談する
前述のとおり、軽い筋肉への負担であれば安静で改善することもありますが、
- 痛みが強い
- 数日経っても改善しない
- 症状が悪化する
- 食欲や元気がなくなってきた
- 患部が腫れる、熱感がある
といった場合は、様子を見ずに動物病院を受診するべきケースだと考えられます。
適切な検査を受け、治療を受けることをおすすめします。
犬が痛がるときに飼い主さんが避けたい対応
では、愛犬の四肢に痛みが見られる場合、どのような対応をすればよいのでしょうか?
正しい知識を持って対応しないと、場合によっては病状を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。
例えば、愛犬が足を痛がる様子が見られると、マッサージをしたり温めたりしてあげたくなるかもしれません。
しかし、原因が骨折や靱帯の断裂などであった場合は、症状を悪化させる恐れがあるため、避けましょう。
また、人用の痛み止めを自己判断で与えることは、愛犬に中毒を起こす危険があるため、絶対に避けましょう。
まずは愛犬を安静にさせ、前述のような症状や原因の心当たりを観察したうえで、動物病院へ相談し適切な対応について指示を受けることが大切です。
「犬 筋肉痛」に関するよくある質問
Q1.犬の筋肉痛は何日くらいで治りますか?
私の経験上、軽度の筋肉への負担であれば、安静にすることで数日以内に症状が改善することが多いです。
しかし、実際は症状の程度や原因によって、どれくらいで改善するかは異なります。
関節や靱帯などのトラブルであれば、適切な治療を行わない限り、症状が改善しないことも珍しくありません。
不安がある場合や症状が続く場合は、軽度に見えても自己判断せず、動物病院へ相談することをおすすめします。
Q2.犬が散歩の翌日に歩き方がおかしいのは筋肉痛ですか?
激しい運動や運動量が急に増えたあとであれば、筋肉への負担が原因で歩き方に異変が見られる可能性はあります。
しかし、それ以外でも同様の症状が見られることも少なくありません。
具体的には、関節や靱帯のトラブル、肉球のケガ、骨や神経の病気などの可能性も否定できないため、症状が続く場合は、自己判断せず獣医師の診察を受けることをおすすめします。
特に痛みが強く、元気や食欲がない場合は、早急に動物病院を受診しましょう。
Q3.犬が痛がるときは温めたほうがよいですか?
痛みの原因がはっきりしない段階で、温めたり冷やしたりすることはおすすめできません。
炎症やケガの種類によって適切な対応は異なるため、誤った処置で症状が悪化する可能性があります。
まずは安静を保ち、一度動物病院に連絡し、どのような対応をすべきか指示を仰ぎましょう。
痛みが続く場合や、その他の体調に変化が見られる場合は、動物病院を受診し、適切な検査や治療を受けることをおすすめします。
【まとめ】犬の筋肉痛は決めつけず、痛み方と変化を見て相談しよう
犬でも激しい運動や急な運動量の増加によって、人の筋肉痛を思わせるような筋肉の痛みやこわばりが見られることがあります。
しかし、歩き方の異常や足をかばう様子は、関節や靱帯の損傷、骨や神経の病気などでも起こるため、「筋肉痛だろう」と自己判断することは避けましょう。
まずは安静にしながら、いつから症状が出たのか、痛みの程度や歩き方の変化をよく観察することが大切です。
症状が改善しない場合や悪化する場合、食欲や元気の低下を伴う場合は、早めに動物病院を受診し、適切な検査や治療を受けさせることをおすすめします。
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監修・うさパラ コンテンツ制作チーム