2026/09/14

愛犬に寄生したマダニを取り除いた後、刺された場所が腫れていると、心配になりますよね。
そんなとき、「化膿してしまったのだろうか?」、「早く動物病院を受診した方がいいのかな?」、「自分で消毒していいの?」といった疑問をお持ちではありませんか?
実は、マダニに咬まれた後の腫れは、皮膚での一時的な炎症反応である場合もありますが、口器の取り残しや細菌感染、愛犬の舐め壊しなどで悪化しているケースも珍しくありません。
また、マダニはさまざまな感染症を媒介するため、患部だけでなく全身の様子にも注意が必要です。
この記事では、犬のマダニを取った後に腫れが生じる主な理由や、自宅での正しい対処法、動物病院を受診すべきサイン、避けたいNG行動、今後の対策までを、獣医師が分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、愛犬がマダニに刺されたときの正しい対処法を身につけましょう。
- マダニを取った後に腫れが出る主な理由
- 受診を考えたい腫れや全身症状の目安
- 自宅で避けたいNG処置と今後の予防策
【執筆】まーふぃー先生(獣医師)
犬猫をはじめとした小動物診療に携わってきた獣医師。院長経験を経て、フリーランスとして開業。現在は診療・往診のほか、ペットの健康や医療に関する記事作成、ペット用品の監修など幅広い業務を行っている。
目次
【結論】犬のマダニを取った後に腫れたら、患部をいじらず全身状態も確認する
結論から申し上げますと、愛犬のマダニを取った後に患部が腫れた場合は、自己判断で対処せず、速やかに動物病院を受診しましょう。
また、マダニはさまざまな感染症を媒介する可能性があるため、発熱や元気・食欲の低下など全身状態にも変化がないか観察することが大切です。
さらに、患部を何度も触ったり、残った異物を取り除こうとしたりすると、炎症や感染を悪化させる恐れがあります。
まずは、愛犬が患部を舐めたり掻いたりしないよう注意し、獣医師に相談しましょう。
(参考文献:Tick Removal – Integumentary System – Merck Veterinary Manual)
(参考文献:Companion Animal Parasite Council | Ticks)
犬のマダニを取った後に腫れる主な理由
では、なぜ愛犬からマダニを除去した後、患部に腫れが見られるのでしょうか?
その原因には、
- 咬まれた刺激による一時的な炎症
- 口器の一部が皮膚内に残って炎症を起こす
- 愛犬が患部を気にして舐め壊す
といったことが考えられます。
原因によって対処法が異なるため、患部の状態や愛犬の様子をよく観察することが重要です。それぞれの原因を詳しく見ていきましょう。
(参考文献:Companion Animal Parasite Council | Ticks)
(参考文献:Tick Removal – Integumentary System – Merck Veterinary Manual)
①咬まれた刺激で赤みや腫れが出ることがある
愛犬の皮膚がマダニに刺されると、その刺激やマダニの体液によって、局所的な炎症反応が起こります。
そのため、マダニを除去した後も、しばらく赤みや軽い腫れが続くことが少なくありません。
多くは1~2週間程度で徐々に改善しますが、腫れが大きくなる、改善しないといった場合は、口器の取り残しや二次感染などの原因も考えられるため注意が必要です。
②口器が残ると炎症や化膿につながることがある
マダニは皮膚から吸血する際、棘のついた「口器」という部位を皮膚に刺し、セメント様物質を分泌して口器を固定します。
そのため、マダニを適切に取り除くことができなかった場合、口器だけが皮膚のなかに残るケースが珍しくありません。
そうすると、残った口器が異物として炎症を起こしたり、細菌感染から化膿したりすることもあります。
私の診察でも、マダニを適切に取り除くことができず、腫れが長く残った症例を経験しています。
③犬が舐めたり掻いたりして悪化することがある
犬は皮膚に違和感やかゆみがあると、患部を舐めたり掻いたりすることが多いです。
その結果、患部の炎症や細菌感染が悪化することがあります。
また、マダニに刺された時点では細菌感染がなかったものの、舐め壊すことで二次的に細菌が入り込み、感染を引き起こすケースも少なくありません。
必要に応じてエリザベスカラーなどを活用し、患部を舐めたり掻いたりしないよう対処することが大切です。
動物病院を受診したほうがよい腫れのサイン
では、愛犬からマダニを取り除いた後、患部や愛犬の体調にどのような変化が起きたら、動物病院を受診すべきなのでしょうか?
軽度の腫れであれば自然と治まる場合もありますが、
- 腫れや赤みが強くなる
- 腫れが長期間続く
- 黒い点や硬いしこりが残っている
- 元気や食欲が低下する
といった様子が見られる場合は受診が必要です。
特に、マダニ媒介性の感染症や、患部の化膿が疑われるケースでは、早急な治療が重要になります。それぞれを詳しく見ていきましょう。
(参考文献:Tick-borne infectious diseases of dogs)
(参考文献:ACVIM consensus update on Lyme borreliosis in dogs and cats)
(参考文献:Consensus statement on ehrlichial disease of small animals)
(参考文献:Canine babesiosis)
(参考文献:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A|厚生労働省)
①腫れや赤みが強くなる・数日続く
愛犬がマダニに刺されたとき、刺された箇所を中心に赤みや腫れが起こります。
これは一般的に、マダニを除去してから数時間以内に現れ、軽度であれば直径は約1~3cmであることが多いです。
これらの赤みや腫れは、1~2週間で治まることが多いですが、
- 赤みや腫れが5cmを超える
- 赤みが輪状の模様になる
- 2週間を超えても腫れが引かない
といった様子が見られる場合は、感染症や重度の炎症反応の可能性があります。
②黒い点や硬いしこりが残っている
もし患部に黒い点が残っている場合は、口器の取り残しの可能性があります。
また、硬いしこりが長期間続く場合は、マダニに刺されたことにより「肉芽腫」が形成されていることも少なくありません。
これは、犬の免疫が残った口器を異物と認識し、免疫反応によって作られるしこりです。
特に、ダニの口器が皮膚に埋め込まれたままになっている場合に発生しやすくなります。
通常、犬に痛みはなく、体が徐々に異物を分解・吸収するにつれて、2~8週間程度で自然と治まることが多いと言われています。
③元気や食欲の低下など全身症状がある
マダニは吸血する以外にも、さまざまな感染症を媒介することで、犬や人に健康被害を引き起こします。
具体的な感染症としては、
- SFTS(重症熱性血小板減少症)
- ライム病
- 日本紅斑熱
- バベシア症
- エールリヒヤ症
などが挙げられます。
特にSFTSは近年、日本での感染が増加しており、犬や人で高い致死率が報告されています。
元気がない、食欲がない、発熱しているなどの症状がある場合は、マダニ媒介感染症を含めた全身性の病気も考えられます。
患部だけでなく愛犬全体の様子を観察し、異変があれば速やかに動物病院を受診しましょう。
マダニを取った後に自宅で避けたいNG処置
では、愛犬からマダニを除去した後の対処法として、誤った方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
現在は、マダニ媒介性感染症の観点から、マダニを見つけたらすぐに除去することが推奨されています。
しかし、慣れない飼い主様がマダニを除去した場合、その後にマダニの口器が残る、患部が腫れるといったことが起こることが少なくありません。
口器が残って腫れているからといって自己流の処置をすると、かえって症状を悪化させることがあるため、注意が必要です。
それぞれの対処法を詳しく見ていきましょう。
(参考文献:Companion Animal Parasite Council | Ticks)
①残った部分を押し出す・ほじる
マダニを除去する際、口器が残り黒い点が見えても、自分で押し出したり針などでほじったりすることは避けましょう。
愛犬の皮膚をさらに傷つけ、細菌感染や炎症を悪化させる原因になる可能性があります。
一般的に、残った口器は時間とともに排出されることが多いです。焦らずに、まずは獣医師に相談のうえ、指示に従いましょう。
②マダニを潰す・素手で触る
除去したマダニを潰すと体液が飛散し、愛犬や飼い主様が病原体に触れるリスクがあります。そのため、マダニを除去する際も素手で扱わず、手袋を着用しましょう。
また、マダニを取り除く前に潰してしまうと、皮膚に口器が残っている可能性が高まります。
口器が残り慢性的な炎症が続く場合は、最終的には外科的な切除が必要になることもあるため、注意が必要です。
③人用の薬や消毒薬を自己判断で使う
人用の薬や消毒薬を、自己判断で愛犬に使用することは避けましょう。人用の薬の中には、犬には適さない成分が含まれることがあります。
最悪の場合、
- 患部を悪化させる
- 中毒症状を引き起こす
- 副作用が起こる
といった可能性があるため、注意が必要です。
私の診察でも、人用の薬を誤食し、体調を崩して来院するケースを経験しています。まずは動物病院を受診し、獣医師の指示に従いましょう。
受診時に伝えることと今後のマダニ対策
では、愛犬からマダニを除去して患部が腫れた場合は、受診時にどのようなことを説明すればよいのでしょうか?
診察の際は、状況をできる限り詳しく伝えることで、判断がスムーズになります。
また、一度マダニに咬まれた犬は、今後もマダニの予防を徹底することが重要です。
そのため、動物病院を受診した際は、マダニの予防に関しても獣医師からの指示を仰ぐ必要があります。それぞれを詳しく見ていきましょう。
(参考文献:Companion Animal Parasite Council | Ticks)
(参考文献:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A|厚生労働省)
①除去した日時・写真・取った方法を伝える
まず、動物病院を受診した際は、獣医師による問診が行われます。
そのときには、
- マダニをいつ見つけたか
- 見つける前にどこを立ち寄ったか
- どのように取り除いたか
- 適切に取り除けたか
- その後の愛犬の体調はどうか
- マダニ予防は行っていたか
といったことが聞かれることが多いです。
これらの内容を整理したうえで、動物病院を受診することをおすすめします。
また、マダニを除去する前後の写真があれば、より診断の参考になります。マダニ本体を持参できる場合は、袋やビンに密封して、細心の注意を払って持参しましょう。
②散歩後のチェックと予防薬を続ける
マダニは、主に草木が多い場所に潜み、寄生するタイミングを見計らっています。
そのため、お散歩やキャンプなどの帰りは、愛犬の全身をくまなくチェックし、マダニがいないか確認しましょう。
特に、
- 頭
- 耳
- 首
- 脇の下
- 股
- 四肢の指の間
- 尾の付け根
といった部位は、マダニが寄生しやすい部位と言われています。
また、愛犬にマダニの予防薬を定期的に与えることも有効です。
さらに、ウェアや忌避剤を使用することでも、愛犬にマダニが付着するリスクを軽減することにつながります。
「犬のマダニを取った後の腫れ」に関するよくある質問
Q1. 腫れはどれくらいで治りますか?
直径が約1~3cmの軽度の腫れであれば、1~2週間で治まることが多いとされています。
しかし、赤みや腫れが5cmを超えると、口器の残存や二次感染が起きていることが珍しくありません。その場合は、2週間を超えても腫れが引かないことがあり、最悪の場合、外科的に切除しないと治らないケースもあります。
そのため、腫れに気づいた場合は、軽度であってもまずは獣医師に相談するよう心がけましょう。放置して炎症が長引いた場合、その分治療に時間がかかることも少なくありません。
Q2. 口器が残っていても自然に出てきますか?
残存した口器が小さいのであれば、時間の経過とともに自然に排出される場合もあります。
しかし、犬によっては炎症や感染を起こし、肉芽腫を形成することも珍しくありません。
そのため、腫れや赤みが続く場合は経過観察だけでは治らないことがあり、外科的な治療が必要なケースもあります。
まずは無理に取り除こうとせず、動物病院を受診し獣医師の判断を仰ぎましょう。
(参考文献:Companion Animal Parasite Council | Ticks)
Q3. 腫れがなくても病気になることはありますか?
マダニに刺された患部が腫れていなくても、マダニ媒介性の感染症にかかる可能性はあります。
咬まれた部位に大きな異常がなくても、数日から数週間後に発熱や元気消失、食欲不振などの症状が現れることが少なくありません。
そのため、患部だけで安心せず、愛犬の体調の変化にも注意し、異常があれば早めに受診しましょう。
また、一部のマダニ媒介性の感染症は、愛犬のみならず飼い主様にも感染する可能性があるため、注意が必要です。
(参考文献:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A|厚生労働省)
【まとめ】マダニを取った後の腫れは自己判断せず、変化を見て相談しよう
犬のマダニを取った後に腫れが見られる場合は、咬まれた刺激による一時的な炎症であることもありますが、口器の残存や二次感染が関係している可能性もあります。
患部を無理に触ったり自己判断で薬を使用したりせず、速やかに動物病院を受診しましょう。
また、患部の腫れの大きさや色の変化のみならず、愛犬の元気や食欲など全身状態をあわせて観察することが大切です。
少しでも悪化する様子や気になる症状があれば、マダニ媒介性の感染症にも注意する必要があります。
愛犬をマダニから守るためにも、日頃から予防薬の継続とお散歩後のチェックを習慣にしましょう。
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マダニを取った後に腫れが残ると、「口器が残っているのでは」と不安になる飼い主様は多くいらっしゃいます。
しかし、すべての腫れが異常というわけではなく、咬傷による一時的な炎症反応である場合も少なくありません。
一方で、炎症が悪化したり全身症状が現れたりするケースでは、早期の診断・治療が重要になります。
患部を無理に触らず、愛犬の様子をよく観察し、少しでも迷う場合は早めに動物病院へ相談しましょう。
毎月のマダニ予防薬を継続し、散歩後のボディチェックを習慣にすることで、愛犬だけでなく飼い主様自身をマダニ媒介感染症から守ることにもつながります。
監修・うさパラ コンテンツ制作チーム