てんかんの治療を続ける愛犬に、「お薬だけでなく、毎日の食事で何かサポートできることはないだろうか」。
そうお考えの飼い主様は少なくないでしょう。
そんな中で、自然な甘みがあり犬も大好きな「さつまいも」が良いとされるインターネット記事があり、選択肢として気になる方も多いはずです。
しかし同時に、「甘いものは発作によくないのでは?」という不安もよぎります。
この記事では、犬のてんかんと、さつまいもの関係について、獣医師が科学的な根拠に基づいて徹底解説します。
【監修】うさパラ コンテンツ制作チーム
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目次
【結論】犬のてんかんに、さつまいもは「与え方に注意すれば」有益な食材になり得る
さつまいもは犬が食べても良い食材で、上手に活用できます。
ただし、与える際は必ず味付けをせず、1日の総カロリーの10%以内という少量に留め、毎日量を大きく変えないことが大切です。
体重やうんちの状態、発作の記録を見ながら、その子に合った量に調整しましょう。
もし肥満や糖尿病、心臓病などの持病がある場合は、与える前に必ずかかりつけの獣医師に相談してください。
さつまいもはあくまで「治療の補助」と考え、主治医の治療方針を最優先しましょう。
(参考文献:Can Dogs Eat Sweet Potatoes?|petMD)
犬のてんかんとは?
犬のてんかんとは、脳の神経細胞が突然、過剰に興奮することで「てんかん発作」が繰り返し起こる、脳の慢性的な病気です。多くは原因が特定できない「特発性てんかん」で、遺伝的素因などが関わると考えられています。完治は難しい病気ですが、抗てんかん薬による適切な治療を続けることで、発作の頻度や重症度をコントロールし、発作がない時と同じように穏やかな日常生活を送ることを目指します。
さつまいもが犬のてんかんに良いとされる理由①脳の安定したエネルギー源「複合炭水化物」
さつまいもの主成分である炭水化物は、脳にとって大切なエネルギー源です。
さつまいもは食物繊維と結びついた「複合炭水化物」なので、消化吸収が穏やかで、血糖値の急な変動を起こしにくいのが特徴です。
脳のエネルギーを安定して供給することは、てんかんの管理をサポートする上で役立ちます。
(参考文献: Sweet Potatoes|The Nutrition Source)
さつまいもが犬のてんかんに良いとされる理由②脳の健康をサポートする「抗酸化物質」
さつまいもに含まれるβカロテンや、紫芋のアントシアニンといったポリフェノールには、体のサビつきを抑える「抗酸化作用」が期待できます。
脳の細胞を酸化ストレスから守ることは、長期的な健康維持の助けになります。
ただし、これらが犬に対して直接的に発作を抑えるという科学的な証明はまだ十分ではないため、「健康補助」として捉えましょう。
さつまいもが犬のてんかんに良いとされる理由③腸内環境を整える豊富な「食物繊維」
さつまいもに豊富な食物繊維は、腸内環境を整え、お通じを安定させてくれます。
近年注目されている「脳腸相関」という考え方では、腸の健康が脳の状態にも良い影響を与えるとされています。
ただし、与えすぎは下痢の原因になるため、少量から始めてうんちの様子を見ることが大切です。
【実践編】安全な与え方(量・頻度・調理)
量
おやつやトッピングとして、1日の総カロリーの10%以内が基本の目安です。例えば超小型犬なら約20g、中型犬なら約100gが上限の参考に。その分、いつものフードを少し減らしてカロリーオーバーにならないようにしましょう。
頻度
毎日与える必要はなく、週に数回程度から始めるのが安心です。大切なのは、日によって量を大きく変えず、一定のリズムで与えることです。
調理
必ず蒸すか茹でるかして加熱し、よく冷ましてから一口大にカットするか、潰して与えてください。生は消化に悪く、塩や砂糖、バターなどの味付けは絶対にしないでください。皮は消化しにくいことがあるため、心配な場合はむいてあげましょう。
犬のてんかん原因と食べ物の因果関係はある?
「特定の食べ物がてんかんを『発症』させる」という直接的な因果関係は、現在の獣医学では明確に証明されていません。
てんかんの多くは、原因が特定できない特発性のもので、遺伝的素因などが関わると考えられています。
ただし、てんかんを持つ犬において、食事内容が発作の引き金(トリガー)になったり、頻度に影響を与えたりする可能性はあります。
特に血糖値の急な変動は脳の興奮に関わるため、食事管理は投薬治療を支える重要な柱の一つなのです。
「犬 てんかん さつまいも」に関するよくある質問
Q1. さつまいもの皮は与えてよい?
A1. サツマイモの皮は毒性はありませんが、消化が難しく、特に小型犬の場合は窒息するリスクが高くなります。喉に詰まらせないか心配な場合は皮をむくのが安全です。
(参考文献:Can Dogs Eat Sweet Potatoes?|petMD)
Q2. 食事を変えたら、てんかんの薬は減らせますか?
A2. 自己判断で薬の量を変更したり、中止したりするのは絶対にやめてください。食事はあくまで治療の補助であり、薬の代わりにはなりません。薬の調整は、必ず獣医師が発作の頻度や血液検査の結果を見て慎重に行います。
Q3. さつまいものアレルギーが心配です。
A3. まれですが、アレルギーの可能性はゼロではありません。初めて与える際は、なめさせる程度の本当にごく少量から始め、数時間は痒みや嘔吐などがないか様子を見てあげてください。
【まとめ】さつまいもは薬ではない、治療を補助する賢い選択肢の一つ
さつまいもは、てんかんの犬に与えても良い食材です。しかし、それは万能薬ではありません。
味付けをせず、少量にとどめ、毎日続けるというルールを守り、あくまで「治療の補助」として賢く活用しましょう。
食事について何かを変える時は、必ずかかりつけの獣医師に相談する。
それが愛犬の毎日を安定させる一番の近道です。
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監修・うさパラ コンテンツ制作チーム