2025/11/25
「犬の緑内障」と診断され、真っ先に「寿命」という言葉が頭をよぎり、不安で胸が張り裂けそうになっていませんか。
結論からお伝えすると緑内障は、愛犬の寿命そのものを直接縮める病気ではありません(参考文献:Dog Glaucoma: 6 Things to Know as a Pet Owner|heart&paw)。
ただし、この病気の本質は、犬にとって耐え難い「激しい痛み」との戦いです。
治療のゴールは、残された寿命の“年数”を数えることではなく、愛犬を痛みから解放し、穏やかで質の高い毎日(QOL)を取り戻してあげることにあります。
この記事では、緑内障の基本から最新の治療法、そしてご家庭でできることまで、飼い主様の不安を行動に変えるための方法について解説します。
【監修】うさパラ コンテンツ制作チーム
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目次
【結論】犬の緑内障が直接「寿命」を縮めることはありません
緑内障は、目の中の圧力(眼圧)が高くなることで視神経がダメージを受ける「目の病気」であり、命に直結するものではありません。
しかし、急激に上昇した眼圧は、人間であれば耐えられないほどの激しい頭痛のような痛みを引き起こします。
その痛みによって元気がなくなり、食欲が落ち、眠れない夜を過ごすことで、愛犬の生活の質(QOL)は大きく損なわれてしまいます。
だからこそ、私たちの治療の目標は、単に寿命を延ばすことではなく、痛みを取り除き、愛犬が「今日も穏やかで、幸せだ」と感じられる日々を取り戻すことなのです。
「少し様子を見よう」ではなく、異変を感じたらその日のうちに動物病院を受診することが、愛犬の光と穏やかな暮らしを守るための絶対的なルールです。
犬の緑内障とは?原因・症状の基本知識
緑内障とは、目の中を循環している「房水(ぼうすい)」という液体の排水がうまくいかなくなり、眼球がパンパンに膨れ上がって眼圧が高くなる病気です。
高まった圧力が、視力にとって最も大切な視神経や網膜を傷つけることで、視力低下や失明に至ります。
原因は大きく分けて2つあります。
原発性緑内障
遺伝的な要因で、もともと房水の排水路が狭いなど、目の構造に問題があるタイプです。柴犬やシー・ズーなどで多く見られます。
続発性緑内障
ぶどう膜炎や白内障、目の怪我など、他の病気が引き金となって排水路が塞がれてしまうタイプです。
飼い主様が気づける症状には、「白目がひどく充血している」「目が白っぽく濁って見える」「瞳孔が開きっぱなしになっている」「光を眩しがる」「目に触られるのを嫌がる」などがあります。
自己判断で様子を見たりせず、迷わず動物病院へ向かってください。
(参考文献:Glaucoma in Dogs|VCA ANIMAL HOSPITALS)
緑内障の治療:ゴールは「痛みのコントロール」と「QOLの維持」
内科治療
治療の基本は、点眼薬(目薬)で眼圧を下げることです。房水の生成を抑える薬や、排出を促す薬などを組み合わせて、眼圧をコントロールします。急性期には、緊急で眼圧を下げるための点滴を行うこともあります。 獣医師は、犬の種類や目の状態に合わせて最適な薬を選択しますが、治療は生涯にわたって続くことがほとんどです。飼い主様による毎日の確実な点眼が、愛犬の快適な暮らしを支える鍵となります。
外科治療
点眼薬だけでは眼圧のコントロールが難しい場合や、すでに視力を失い、痛みが続いている場合には外科手術を検討します。 手術には、視力を維持するために房水の新たな通り道を作る方法や、レーザーで房水の産生を抑える方法などがあります。 一方で、視力を取り戻すことはできなくても、痛みから完全に解放してあげることを最優先する選択肢もあります。それが「眼球摘出」や「シリコン義眼の挿入」です。言葉だけを聞くと辛い選択に思えるかもしれませんが、これは決して「かわいそう」なことではありません。長引く痛みから解放され、点眼のストレスもなくなり、本来の元気と笑顔を取り戻せる、QOLを劇的に改善するための前向きな治療です。
(参考文献:Acute Glaucoma in Small Animals|Merck & Co., Inc.,)
犬の緑内障の予防方法とは?
残念ながら、緑内障の発症を完全に防ぐ方法はまだ確立されていません。
しかし、「早期発見」によって、愛犬の“見える時間”を少しでも長くしてあげることは可能です。
特に緑内障になりやすい犬種は、症状がなくても定期的に動物病院で眼圧を測ってもらう習慣をつけましょう。
日々の暮らしの中でも、「目を細めていないか」「物にぶつからないか」といった小さな変化にいち早く気づいてあげることが、何よりの予防策になります。
(参考文献: Glaucoma in Dogs|The Animal Medical Center)
反対眼(同居眼)の「視覚寿命」を延ばす先手
原発性緑内障の場合、片方の目が発症すると、もう片方の目もいずれ発症する可能性が非常に高いという現実があります。
しかし、これは絶望的な話ではありません。
症状が出ていない方の目に予防的に点眼薬を使用することで、発症を遅らせたり、発症時のダメージを最小限に抑えたりすることが期待できます。
これは、愛犬に残された光をできる限り長く守るための、いわば「視覚寿命」を延ばすための大切な一手です。
片目と診断されたら、必ずもう片方の目のケアについても獣医師と計画を立てていきましょう。
(参考文献:Canine Glaucoma|Vision for Animals Foundation)
「犬の緑内障と寿命」に関するよくある質問
Q1. 犬の緑内障は痛みを感じますか?
はい、非常に強い痛みを感じます。急激な眼圧の上昇は、激しい頭痛や目の奥の痛みを引き起こし、元気や食欲を奪います。この痛みを取り除くことが治療の最優先事項であり、痛みが続く場合には、視力がなくても眼球摘出などの手術がQOL改善のために選ばれることがあります。
Q2. 痛みを和らげるために、食事やサプリでできることはありますか?
残念ながら、食事やサプリメントだけで緑内障の痛みの原因である高い眼圧を下げることはできません。治療の基本は、必ず獣医師が処方する点眼薬や内服薬です。栄養バランスの取れた食事は愛犬の体力を支えますが、自己判断で治療の代わりにするのは非常に危険です。まずは獣医療に専念しましょう。
Q3. 反対眼はどう守る?
予防的な点眼治療と、定期的な眼圧チェックが基本となります。獣医師と相談しながら、数週間〜数ヶ月ごとの検査計画を立てましょう。ご自宅では、目を細める、歩き方をためらうといった初期サインを見逃さないよう、日々の観察を続けることが大切です。
【まとめ】犬の緑内障と寿命との関係性はない、愛犬を守るために正しい知識を得よう
「犬の緑内障と寿命」について考えるとき、本当に大切なのは“何年生きるか”ではなく、“いかに穏やかに、痛みなく生きるか”ということです。
この病気は愛犬の命を直接脅かすものではありませんが、激しい痛みが日々の暮らしの質を大きく左右します。
だからこそ、目に異変を感じたら24時間以内に動物病院へ向かうという迅速な判断が、愛犬の視力と穏やかな未来を守るのです。
治療のゴールは常に、痛みからの解放です。日々の点眼が難しい場合には、眼球摘出などもQOLを劇的に改善するための立派な選択肢となり得ます。
また、片目が発症した際には、もう片方の目を先手のケアで守り、予防的な点眼で“見える時間”を最大限に延ばしてあげましょう。
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監修・うさパラ コンテンツ制作チーム