愛犬の目の病気を治療するために、動物病院でよく目薬が処方されますよね。
しかし、いざ目薬を差そうとしても、
「犬が嫌がって暴れてしまう」
「目薬を見ただけで逃げてしまう」
「上手に目薬を差す方法はないの?」
といったお悩みを抱えてはいませんか?
実は、無理に押さえつけると愛犬との信頼関係にヒビが入ったり、目薬を余計に嫌がったりするようになることもあります。
本記事では、現役獣医師の意見をもとに、犬が目薬を嫌がる理由や点眼するコツ、できないときの対処法をわかりやすく解説します。
最後に、目薬に関してよくある質問もまとめています。
今、愛犬に目薬を上手に差す方法が知りたい方にとっても、これから目薬を処方されたときの参考にしたい方にとっても、有益な内容をご紹介します。
最後までお読みいただき、愛犬の目の治療への一助になれば幸いです。
目次
【結論】犬が目薬を嫌がるのは普通、「安全に・短時間で」が正解
犬が目薬を嫌がるのはごく自然な反応で、多くの犬が目薬を嫌がります。
人であれば、「目の病気は目薬で治療するもの」と認識することができますが、犬ではそうはいきません。
見慣れないものが急に目の前に来たり、目に液体が入りびっくりしたりすることで、犬は目薬を嫌がります。
そのため、愛犬に目薬を差すにあたっては、
- 無理やりやらないこと
- 安全に短時間で終わらせること
- 事前に慣れさせること
といった点に注意することが大切です。
愛犬の不安を適切に取り除き、安心できる体勢や環境を作れば、嫌がる行動はかなり軽減できるでしょう。
(参考文献:Dealing with Dog Eye Drops Resistance | Eye Surgery Guide)
犬が目薬を嫌がる理由は?①顔・目の周りを触られるのが苦手
では、なぜ犬は目薬を嫌がるのでしょうか?
まず、犬は目や顔を触れられること自体が苦手な場合がとても多いです。
特に、過去に目や顔の周りの毛を引っ張られたり、無理やりブラッシングをされたりしたことがある場合は、目薬を嫌がる傾向があります。
また、顎や歯などの顔周りに痛みを感じていたり、目に違和感を覚えていたりすると、いつもより顔を触られることを嫌がることもあります。
そのため、いきなり目薬を差そうとしても、結果的に嫌がる行動につながってしまうことも少なくありません。
目薬を差す前に、愛犬にそのような様子がないかどうか確認してあげましょう。
(参考文献:7 Reasons Why Your Dog Doesn’t Like You Touching His Face | dogsandclogs.com)
犬が目薬を嫌がる理由は?②目の前から来るのが怖い
前述の通り、犬にとって目の前に突然現れる物は、強い驚きや恐怖を感じる原因となり、目薬を嫌がる行動につながります。
犬は人間のように「これから目薬を差される」と予測することができず、急に視界に入った目薬を本能的に危険なものと認識してしまうことが少なくありません。
特に、もともと怖がりな性格の犬や警戒心が強い犬ほど、正面から近づくことに敏感に反応します。
そのため、正面ではなく視界に入りにくい横や斜め後ろから差すなどの工夫が必要です。
愛犬の性格や反応を理解してあげることが、スムーズな点眼への第一歩となります。
犬が目薬を嫌がる理由は?③点眼そのものの刺激
目薬の種類によっては、目に入った瞬間に冷たさや軽い刺激を感じることがあります。
特に冷蔵庫で保管している目薬は、目薬を差したときに冷たさを感じやすく、愛犬がびっくりしてしまうことが少なくありません。
また、すでに目に炎症や痛み、痒みがある状態では、そこへ液体を垂らされること自体が刺激となります。
このような不快な経験が積み重なってしまうと、愛犬が「目薬=嫌なもの」と学習してしまい、次回以降さらに強く嫌がるという悪循環が生まれがちです。
そのため、刺激をできるだけ抑えるために、
- 冷蔵保存の目薬は使用前に常温に近づける
- まぶたや目を強く押さえない
- 点眼は短時間で終わらせる
- 痛みが強そうな場合は無理をしない
といった工夫をすることが重要になります。
犬に目薬に慣れさせる方法
ここまでは、犬が目薬を嫌がる理由を解説しました。
では、どのようにすれば愛犬を目薬に慣れさせることができるのでしょうか?
前述の通り、愛犬にいきなり目薬を差すと、多くの場合嫌がってしまいます。
そのため日頃から、
- 顔や目周りを触られることに慣れる
- 目薬の容器に慣れる
- 点眼の体勢に慣れる
というステップをトレーニングしておくことが効果的です。
いきなり本番で目薬を差すのではなく、まずはこの3つのステップに慣れさせることで、愛犬の恐怖心を和らげましょう。
では、それぞれを詳しく見ていきましょう。
(参考文献:How to Train Your Dog to Accept Eye Drops | petscare.com)
顔や目の周りを触られることに慣れる
まず、愛犬が落ち着いているときに、マズルや顎、まぶたなどを優しく撫でる練習をします。
最初はおやつなどのご褒美を与えて褒めつつ、少し触る程度にとどめ、「触られる=いいことがある」ということを覚えさせましょう。
そこからさらに徐々に触る時間を延ばしていき、目薬を行うのに十分な時間触れるようにトレーニングを行います。
目薬の容器に慣れてもらう
次に、点眼する前に目薬を愛犬に嗅がせたり、近くに置いたりして、目薬を認識させます。
その際は決して目薬を滴下しないよう注意が必要です。
また、愛犬が目薬を認識したらご褒美を与えて褒めつつ、「目薬=いいことがある」ということを覚えさせましょう。
そうすることで、目薬に対する恐怖心を和らげることができます。
「点眼の体勢」に慣れる
最後に、点眼に適した「おすわり」の姿勢で落ち着いているよう、練習を行います。
また、愛犬をテーブルやソファの上などに座らせ、自分の目の高さに合わせるとやりやすいです。
後ろから抱きかかえるように、タオルや毛布で包んであげると、より安定します。
この体勢で落ち着くことができたら、再度ご褒美を与えて褒めつつ、「おすわりをする=いいことがある」ということを覚えさせましょう。
嫌がって暴れる時の対処法
ここまでは、愛犬を目薬に慣れさせるトレーニングについて解説しました。
では、どうしても嫌がって暴れてしまう場合はどのように対処すればよいのでしょうか?
原則として、暴れてしまうときは無理に押さえつけず、一度中断し落ち着いてから再挑戦します。
そこから、以下のような工夫を行い、点眼を試みてみましょう。
(参考文献:Eye Drops For Dogs: How To Give Your Pup Vital Medicine | thesprucepets.com)
正面から差さない
前述の通り、犬にとって目の前に突然現れる物は、強い驚きや恐怖を感じる原因となり、目薬を嫌がる行動につながります。
そのため、正面ではなく視界に入りにくい横や斜め後ろから差すなどの工夫を行いましょう。
そのためにも、愛犬の後ろからゆっくり目薬を近づけることがおすすめです。
空いている手を犬の顎の下に置き、頭を上に傾けます。
目を完全に開かせる必要はなく、1滴がしっかりと目に入る程度で十分です。
二人がかりの「協力作戦」
目薬は、慣れれば一人で差すことができますが、慣れないうちは二人がかりで行った方がよいでしょう。
一人が愛犬の体を支えたり、おやつで気を引いたりします。
その間に、もう一人が目薬を差す、といった方法であれば、成功する可能性が高まります。
体を支える際にどうしても暴れてしまう場合は、後ろから抱きかかえるようにタオルや毛布で包んであげると、より安定します。
ごほうびで気をそらす
最後に、愛犬が嫌がる瞬間に好きなおやつで注意をそらすことも効果的です。
目薬の直前にごほうびを見せて、目薬を差した後にすぐ与えることで、併せて「目薬=いいことがある」ということを覚えさせることができます。
おやつも、普段よく食べている食べ慣れたものではなく、目薬のときだけにもらえる「特別なおやつ」を用意することで、より効果を発揮することが期待されます。
愛犬が嫌がって目薬をどうしても差せない時は?
ここまでは、上手に愛犬に目薬を差す方法について解説しました。
しかし、それでもどうしても嫌がる場合は、無理に続けようとせず獣医師に相談しましょう。
私自身も、日頃の診察において目薬が苦手な犬によく遭遇します。
そんなとき、例えば抗生剤の目薬を処方する状況であれば、抗生剤の内服薬を処方して、目薬の代わりにすることも少なくありません。
このように、目薬以外の治療法を用いたり、目薬の種類を変更したりすることで、治療をスムーズに行うことができます。
無理に目薬を頑張るより、安全で愛犬のストレスを最小限に抑えた治療法を、獣医師と一緒に考えることが大切です。
「犬 目薬 嫌がる」に関するよくある質問
Q1. 目薬を複数本処方された場合、どれくらい間隔を空ければいいですか?
犬の目の病状により、複数の種類の目薬を処方されることはよくあります。
私自身も複数本の目薬を使用するよう指示することは少なくありません。
一般的には、1本ごとに5〜10分程度間隔を空けるのが目安とされています。
続けて差すと、先に入れた目薬が流れてしまい効果が十分に得られないことがあります。
獣医師から指示された順番と間隔を守って使用しましょう。
もし順番や間隔が分からない場合は、一度動物病院に問い合わせましょう。
(参考文献:How To Give a Dog or Cat Eye Drops | PetMD)
Q2. 犬の目薬は冷蔵庫で保存したほうがいいですか?
目薬は一度開封すると、細菌が繁殖する可能性があるため、冷蔵庫で保管したくなりますよね。
しかし、目薬の保存方法は各製品によって異なります。
多くは「直射日光を避け、室温保存」が基本ですが、一部には、冷蔵保存が推奨される製品もあります。
ただし、冷蔵庫で保存すると点眼時の刺激が強くなり、犬が嫌がる原因になることも少なくありません。
そのため、必ず処方時の指示に従いましょう。
もし保存方法が分からない場合は、一度動物病院に問い合わせましょう。
Q3. 冷たい目薬を嫌がる場合、常温に戻しても大丈夫?
一部の目薬には、冷蔵保存が推奨されている製品があります。
しかし、冷たい目薬だと点眼時の刺激が強くなり、犬が嫌がる原因になることも少なくありません。
そのため、可能であれば常温に近づけた状態で目薬を差すのがよいと考えられます。
一般的に冷蔵保存が必要な目薬でも、使用前に手で数分温め、常温に近づけるのは問題ありません。
ただし、電子レンジなどを使うことはできません。
また、温めても問題がないかを、あらかじめ動物病院に問い合わせましょう。
(参考文献:Giving eye drops to your dog! | Brilliant Family Dog)
【まとめ】嫌がる理由は恐怖心。正面から行かず、背後からリラックスさせて行うのがコツ
今回は、愛犬が目薬を嫌がる理由や点眼のコツ、嫌がるときの対処法を解説しました。
犬が目薬を嫌がる原因は、
- 顔や目を触られることへの不快感
- 目薬への恐怖心
- 目薬による目への刺激
といったものが挙げられます。
そのため、スムーズに目薬を行うには、あらかじめゆっくりと目薬に慣らすことや、正面ではなく後ろから目薬を差すといった工夫を行い、目薬への恐怖心を和らげてあげましょう。
愛犬が嫌がっているところに無理やり点眼を行うと、どんどん目薬が苦手になり悪循環となります。
おやつなどのご褒美をうまく使いながら、上手にかつ安全に治療を進めましょう。
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監修・うさパラ コンテンツ制作チーム