2025/10/09
「犬にしか聞こえない音」は実在します。
愛犬が何もない場所に向かって吠えたり、その不思議な行動の裏には、私たちには聞こえない「音の世界」が広がっています。
犬の耳は、人間が拾えない高い音(超音波)や、気づかないほど微かな音にとても敏感です。
実は、家電や屋外の装置、小動物の鳴き声など、私たちの身の回りには“人には静かなのに犬には騒がしい音”が溢れています。
この記事では、犬と人間の聴覚の違いを科学的に解き明かし、いわゆる「吠えなくなる超音波」の仕組みと本当の効果、そしてしつけの「正攻法」まで、分かりやすく解説します。
【監修】うさパラ コンテンツ制作チーム
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目次
その行動、犬にしか聞こえない音が原因かも?
誰もいない窓の外をじっと見つめて唸ったり、首をかしげて一点を凝視したり。
愛犬のそんな行動は、私たちには聞こえない高い音や小さな音に反応しているサインかもしれません。
犬の聴覚は人間よりはるかに優れているため、私たちが「静かだ」と感じる環境でも、彼らの耳には様々な音が立体的に響いています。
研究によれば、犬は人間が聞き取れる音の3倍以上高い音まで聞き取れるとされています。
(参考文献:Dogs Don’t Have a Sixth Sense, They Just Have Incredible Hearing|The American Kennel Club)
愛犬が何もない場所で吠える…その時、彼らには何が聞こえているのか
その音の正体は、ご近所の家が設置したネズミ対策の超音波装置かもしれませんし、家の中にある家電製品(充電器、超音波加湿器など)から出る高周波音かもしれません。
これらは人間にはほぼ聞こえませんが、犬の耳にははっきりと届き、刺激や不快感の原因となり得ます。
【犬にしか聞こえない音】人間と犬、聞こえる「音の世界」はこんなに違う
愛犬の不思議な行動は、私たちと聞こえる「音の世界」が違うからかもしれません。
犬は人間には感知できない高い音(超音波)や、遠くのかすかな物音まで捉える驚異の聴覚を持っています。
その能力の秘密を、周波数など3つの大きな違いに注目して科学的に紐解いていきましょう。
聞き取れる音の高さ(周波数)の違いは3倍以上
音の高さは「周波数(Hz)」で表され、数字が大きいほど高音になります。人間が聞き取れるのはおよそ20,000Hzまでですが、犬はおよそ65,000Hzもの高周波まで聞き取れると言われています。これが「犬にしか聞こえない音」が存在する科学的な理由です。
「犬にしか聞こえない音」=人間には聞こえない高周波音(超音波)
一般的に、人間が聞こえない20,000Hz以上の音を「超音波」と呼びます。犬はこの超音波の領域の音に反応することができます。これはオカルトのような話ではなく、身体能力の明確な違いなのです。
人が聞き取れない小さな音も認識可能
犬は、人には聞こえないような静かな音も聞き分けることができます。耳をアンテナのように動かして効率的に音を集められるため、遠くのかすかな物音にも敏感に気づくことができるのです。
実は身近に溢れている「犬にしか聞こえない音」の正体
犬の優れた聴覚は理解できても、具体的にどんな音が聞こえているのか気になりますよね。
実は、静かなはずの家の中や普段の散歩道にも、「犬にしか聞こえない音」は溢れています。
家の外から聞こえる音(害獣駆除装置、遠くのサイレンなど)
住宅や駐車場で稼働しているネズミ除けの超音波装置は、犬の耳にはっきりと聞こえる不快な音です。散歩中に特定の場所を嫌がる場合、こうした装置がないか確認してみるのも良いでしょう。
(参考文献:Do Ultrasonic Pest Repellers Affect Dogs? Everything You Should Know|Sonic Barrier)
自然界の音(ネズミなどの小動物の鳴き声)
ネズミなどの小動物は、超音波を使って仲間とコミュニケーションを取ります。壁の向こうや天井裏から聞こえるその“会話”に、犬が警戒して反応している可能性も考えられます。
「吠えなくなる超音波」の仕組み
犬の優れた聴覚を応用し、「超音波で無駄吠えをやめさせる」と謳う製品があります。これは、犬が吠えた際に不快な高周波音を出すことで行動を止めさせようとする、「嫌悪刺激(罰)」を利用したものです。
しかし、この方法は吠える原因(要求・恐怖・警戒など)を解決するわけではないため、根本的な治療には繋がりません。
獣医学的なしつけの基本は、罰ではなく「正の強化(望ましい行動をほめて増やす)」です。
嫌悪刺激は、犬に恐怖や不安を与え、別の問題行動を引き起こすリスクがあるため、専門家は推奨していません。
どうしても「音」をしつけに使うのであれば、犬笛を「おいで」の合図にするなど、ポジティブな合図として使うのが安全です。
「犬にしか聞こえない音」に関するよくある質問
Q1. 何Hzから人には聞こえず、犬には聞こえる?
A. 一般的に20,000Hzが境界線です。これを超える音は多くの成人には聞こえませんが、犬は65,000Hz程度まで聞き取れるとされ、この「超音波」の帯域に反応できます。
Q2. 超音波で吠え癖は本当に直る?
A. 一時的に吠えるのを“中断”させることはあっても、吠え癖の根本的な解決にはなりません。獣医学では、なぜ吠えているのか原因を探り、「吠えなくてえらいね」と褒めて教える「正の強化」を推奨しています。罰で行動を抑えつける方法は、犬に過度なストレスを与えるため避けましょう。
(参考文献:The effects of using aversive training methods in dogs—A review|Elsevier B.V)
Q.3 副作用はある?
A. あります。主な副作用は、恐怖心や不安感の増大、音への過敏症の悪化、飼い主への不信感など、精神的なものです。特に、怖がりな子や持病のある子への使用は避けるべきです。環境を整え、ポジティブな方法でしつけを行うことを優先し、困った場合は獣医師や行動学の専門家へ相談してください。
(参考文献:Aversive training methods|BSAVA)
まとめ:犬にしか聞こえない音は存在する
犬は人間の3倍以上高い音を聞き取り、小さな音にも敏感です。
家電や屋外の装置、小動物の声など、私たちには聞こえない音が彼らの日常には存在します。
その聴覚を利用した「吠えなくなる超音波」は、一見すると魔法のようですが、その実態は犬に不快感を与える“罰”であり、副作用のリスクも伴います。
行政や専門家は、罰ではなく「正の強化(褒めるしつけ)」を基本とするよう明確に示しています。
愛犬の行動を理解し、信頼関係に基づいて問題を解決していくこと。それが、犬と私たちが共に幸せに暮らすための最も確実な方法です。
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愛犬の不思議な行動の謎は、彼らの驚異的な聴覚に隠されています。本記事では、その科学的な仕組みと身近な音の例を解説しました。同時に、その能力を安易に応用した超音波しつけグッズが犬に与えるストレスや恐怖にも言及しています。罰で行動を抑えるのではなく、理由に寄り添い信頼を育むしつけを選ぶ、そのきっかけとなれば幸いです。
監修・うさパラ コンテンツ制作チーム