【獣医師監修】フィラリア予防薬は必要か?不要論の危険性について徹底解説

   

犬のフィラリア症は、一度感染すると最終的に命に関わる極めて危険な感染症です。

ですが最近、フィラリア予防薬に関して

「投薬は本当に必要なのか」

「室内飼いだから、フィラリアに感染しないのでは」

といった疑問とともに、フィラリア予防薬の不要論が語られています。

しかし犬のフィラリア症は、その症状に気づいたときには既に重症化していて、治療が難しい場合も少なくない病気であることをご存知でしょうか?

その反面、フィラリア予防薬を正しく使用すれば、ほぼ100%予防できる病気でもあります。

本記事では、現役獣医師の意見をもとにフィラリア予防薬の種類や必要性、不要論のリスクについて分かりやすく解説します。

うさパラ コンテンツ制作チーム

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犬猫ペットのお薬通販輸入代行うさパラのコンテンツ制作チーム。専門知識を活かし、正確で分かりやすい情報発信を心がけています。 薬剤師 ・獣医師が在籍。

【結論】フィラリア予防薬は必要(通年投与推奨)

結論からお伝えすると、フィラリア予防薬は「必要不可欠」です。

近年は、環境や気候の変動の影響で蚊の活動期間が長くなり、フィラリアへの感染リスクが増加しています。

また、犬の輸送や移動が一般的になったことも、感染リスクを増加させる一つの要因です。

そのため現在は、年間を通じてフィラリア予防薬を投与する「通年投与」が推奨されています。

冬に蚊が少なくなるのは事実ですが、フィラリアの感染リスクがゼロになることはありません。

【参考文献】American Heartworm Society Canine Guidelines

フィラリア予防薬が必要である理由①発症すると致死率が極めて高い

フィラリア症は、蚊の吸血を介して体内に侵入したフィラリア(犬糸状虫)が原因となる病気です。

体内に侵入したフィラリアは、成長をしながら心臓や肺動脈に寄生します。

その結果、進行すると呼吸困難や腹水、重度の心不全、貧血などを引き起こし、死に至ることがあります。

フィラリア症は主に犬の病気ではありますが、猫でも発症することがあり、突然ショック状態となり死に至ることも珍しくありません。

その反面、フィラリア症は予防薬を適切に使用することで、ほぼ100%予防できる病気です。

そのため、フィラリア予防薬は愛犬・愛猫の健康を守るためには必要不可欠です。

【参考文献】Heartworm Disease in Dogs, Cats, and Ferrets

フィラリア予防薬が必要である理由②温暖化によって年間を通じてリスクがある

上述の通り、近年は環境や気候の変動の影響で蚊の活動期間が長くなる傾向があります。

これまでのフィラリア予防は、「蚊が出る時期だけ予防すればよい」とされていました。

しかし現在では、地域によっては冬でも蚊が確認されるようになりました。

つまり、フィラリア症は季節限定の予防では防ぎきれない時代に入っており、年間を通じてフィラリア予防薬を投与する「通年投与」を行う必要があります。

冬に蚊が少なくなるのは事実ですが、フィラリアの感染リスクはゼロではないことに注意が必要です。

【参考文献】American Heartworm Society Canine Guidelines

フィラリア予防薬が必要である理由③フィラリア症の治療は困難で、愛犬(猫)の負担が大きい

フィラリア症は、予防に比べて治療の負担が非常に大きい病気です。

フィラリアの成虫が心臓に寄生すると、長期にわたる内科治療が必要になります。

その上、内科治療には血栓症などの副作用のリスクも伴い、完全にフィラリアを駆除することができない場合もあります。

さらに、病状が進行している場合は外科手術が必要になることもあり、愛犬への大きな負担は避けられません。

また、治療中は運動制限や年単位での投薬管理が必要となり、生活の質も低下します。

フィラリア予防薬で感染を未然に防ぐことが、最も負担の少ない選択といえるでしょう。

【参考文献】American Heartworm Society Canine Guidelines

フィラリア予防薬の役割

フィラリア予防薬は「予防薬」と呼ばれているものの、実際は体内に侵入したフィラリア幼虫が成虫になる前に「駆除」をするための薬です。

そのため、蚊に刺されること自体を防ぐ「忌避剤」とは異なりますが、フィラリアの感染を阻止する重要な役割を担っています。

蚊を介して犬の体内に侵入したフィラリアの幼虫は、皮膚の下で生活をしながら心臓や肺動脈に移動する準備を整えます。

その準備期間は約2ヶ月とされていますので、1か月に1回、フィラリア予防薬を定期的に投与することが、愛犬・愛猫を感染リスクから守る確実な方法ということです。

【参考文献】Heartworm Disease in Dogs, Cats, and Ferrets

薬の種類と選び方

ここまでは、フィラリア予防薬の必要性について解説しました。

では、フィラリア予防薬はどのようなものを選べばよいのでしょうか?

フィラリア予防薬には複数のタイプがありますので、性格や生活環境によって愛犬・愛猫に合ったものを選びましょう。

【参考文献】Heartworm Preventives

チュアブル

チュアブルタイプのフィラリア予防薬は、おやつ感覚でそのまま与えられるタイプです。

犬が好むフレーバーで作られているため、多くの飼い主の方が抵抗感なく与えることができる特徴があります。

ただし、チュアブルの成分にアレルギーがある、フレーバーが好みに合わないなど、チュアブルタイプが向かない犬もいるので注意が必要です。

錠剤

昔から使用されている錠剤のタイプで、価格が比較的安いことがメリットです。

ただし、錠剤を嫌がる犬には投与が難しい場合があります。

最近はフレーバーのついた錠剤や、多様な投薬補助おやつが発売されているので、そのようなものを使ってみるのもよいでしょう。

スポットタイプ

スポットタイプは、首元の皮膚に直接滴下するタイプの薬です。

薬を飲ませる必要がないので、投薬が難しい猫や、口からの投薬が苦手な犬に適しています。

ただし、滴下後は乾くまで触らせない、滴下部分に脱毛が起きることがある、シャンプーができないなどのデメリットがあります。

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【不要】もしフィラリア予防薬を投与しないとどうなる?

もしフィラリア予防薬を投与しない場合は、フィラリアに感染するリスクを常に背負うことになります。

近年ではフィラリア予防が広く普及しているため、犬におけるフィラリア陽性率は減少傾向にあるようです。

しかし、国内でのフィラリアの感染は現在でも発生しており、犬のみならず猫でも全国での感染が確認されているのが現状です。

また、万が一フィラリアに感染した場合は、結果として高額な治療費や長期の治療が必要になる可能性が高まります。

フィラリア予防を行っている間は感染することがないことから、フィラリア予防薬の必要性に気づきにくいものですが、フィラリア症は「治療より予防が重要」ということを覚えておきましょう。

参考文献:

Heartworm infection in domestic dogs in Canada, 1977–2016: Prevalence, time trend, and efficacy of prophylaxis

Heartworm Disease in Dogs, Cats, and Ferrets

安全・確実にフィラリア予防薬を始める手順

では、実際にフィラリア予防薬を投与し始めるにはどのようにすればよいのでしょうか?

フィラリア予防薬を安全かつ確実に始めるには、いくつか注意が必要です。

まずは動物病院を受診し、血液検査で既にフィラリアに感染していないか確認してもらいましょう。

フィラリアに感染したままフィラリア予防薬を投与すると、副反応が出る可能性があるので注意が必要です。

その後、犬種や体重に合わせた適切なフィラリア予防薬を処方してもらいましょう。

フィラリア予防薬の多くは安全性の高い薬ではあるものの、適切な量を守らないと副作用が生じたり予防効果が薄れたりする可能性があります。

最後に、フィラリア予防薬を毎月1回決まった日に投与することで、愛犬・愛猫をフィラリアの感染リスクから守ることができます。

【参考文献】Heartworm Disease in Dogs, Cats, and Ferrets

フィラリア予防薬の通年投与は予防率100%

上述の通り、フィラリア症は治療よりも予防が重要と言われています。

その理由は、フィラリア予防薬による予防効果は極めて高く、正しく投与すればフィラリア症はほぼ100%の予防が可能だからです。

その際に重要なのは「飲み忘れないこと」と「適正量を守ること」です。

もし投薬を忘れたり、自己判断で投薬する期間を短縮したり、薬の量を調節したりすると、予防効果が薄れて感染リスクが高まります。

現在は、フィラリア予防薬は1年を通して投薬を行う「通年投与」が、愛犬・愛猫をフィラリア症から守る確実な方法として主流になっています。

「フィラリア予防薬は必要」に関するよくある質問

ここまではフィラリア予防薬の有効性と安全な始め方について解説しました。

最後に、フィラリア予防薬に関して飼い主様からよく寄せられる疑問について、分かりやすくお答えします。

【参考文献】Heartworm Disease in Dogs, Cats, and Ferrets

Q1.室内犬もフィラリアにかかる?

外に出ない室内犬なら、蚊に接触しないのでフィラリアに感染しないと考えてしまいがちです。

しかし、結論から言うと、室内犬でもフィラリアに感染します。

蚊は、窓の隙間や人の出入りに伴って室内に侵入し、愛犬を吸血します。

そのため、室内犬でも感染リスクはゼロではありません。

実際に、室内飼育の犬や猫が感染していた症例も数多く報告されています。

Q2.フィラリア予防薬は愛犬(猫)の身体に負担をかける

生涯を通じて投薬するフィラリア予防薬ですが、副作用がないか心配になってしまいます。

ですが、現在のフィラリア予防薬は安全性の高い成分が使用されており、正しく使えば大きな負担になることはほとんどありません。

副作用が起こることは少なく、多くは一時的な軽い嘔吐や下痢などにとどまります。

フィラリア予防を行わないリスクと比べると、圧倒的に安全性が高いと言えるでしょう。

Q3.フィラリア予防薬の費用を安く抑える方法はありますか?

フィラリア予防薬は、地域や動物病院により値段が異なるものの、年間を通してやや高額な費用がかかってしまいます。

しかし、まとめ買いによる割引や健康診断とのパック料金などを活用することで、実際の費用を抑える方法もあります。

かかりつけの動物病院に相談すれば、無理のない範囲でフィラリア予防薬を続けられるプランを提案してもらえるでしょう。

【まとめ】フィラリア予防薬で愛犬(猫)を守りましょう

フィラリア症は、感染し発症してしまうと治療が困難で致死率が高い病気です。

一方、フィラリア予防はとても簡単で安全性も高く、ほぼ100%の確率で愛犬・愛猫の健康を守ることができます。

「冬だから」「室内飼育だから」と油断せず、正しい知識を持ってフィラリア予防薬を使用することが大切です。

投薬が苦手な愛犬・愛猫でも、さまざまな形状のフィラリア予防薬から適切なものを選ぶことで、無理なく予防を行うことができます。

その小さな一手間で大切な家族の命を守ることができるのは、飼い主様ただひとりだけです。

監修者コメント
監修者の写真

実際に日々診察を行うなかで、フィラリア症にはよく遭遇します。 多くの重症例を見てきましたが、ほぼすべてがフィラリア予防薬を使用していませんでした。 フィラリア予防をしていれば守ることができた命が確実に存在します。 フィラリア予防は、犬や猫を飼育する上で「必ず実施すべき健康管理の一つ」だと考えています。 特にこれからの将来、通年予防を行うことが重要になってくるでしょう。 愛犬・愛猫の命を守るために、本記事を参考に正しいフィラリア予防を行っていただけると幸いです。

監修・うさパラ コンテンツ制作チーム

 - 犬の健康

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