【獣医師監修】フィラリア予防薬はいつから始めていつまで?100%駆虫する方法について解説

   

毎年4月頃になると、かかりつけの動物病院から「フィラリア予防をしましょう」と案内を受けますよね。

しかし、フィラリア予防薬に関して、

「何月から何月まで飲ませればいいの?」

「フィラリア予防薬は本当に必要なの?」

「蚊がいない季節はフィラリアに感染しないのでは?」

といった疑問をお持ちではないでしょうか?

実は、近年は気候の変動などにより蚊の活動する時期が長くなる傾向があると言われています。

そのため現在は、1年を通してフィラリア予防薬を投与することが推奨されているのをご存知でしょうか?

本記事では、現役獣医師の意見をもとにフィラリア予防薬の投与期間や必要性、予防の始め方、よくある質問について分かりやすく解説します。

うさパラ コンテンツ制作チーム

【監修】うさパラ コンテンツ制作チーム

犬猫ペットのお薬通販輸入代行うさパラのコンテンツ制作チーム。専門知識を活かし、正確で分かりやすい情報発信を心がけています。 薬剤師 ・獣医師が在籍。

【結論】フィラリア予防薬は「年間投与」がコストも安く効果もある方法

今までの常識として、フィラリア予防薬は「蚊がいる季節のみ」投薬することが一般的でした。

しかし、現在は1年を通して投与する「年間投与」が主流となり始めています。

その理由は、確実にフィラリア症を予防でき、その結果として費用を抑えられる点あります。

犬糸状虫のライフサイクル

犬のフィラリア症の原因である犬糸状虫(フィラリア)は、蚊の吸血を介して犬の体内に侵入します。

侵入した幼虫は、まずは皮膚の下で成長し、その後数か月かけて血管内を移動し心臓や肺動脈へたどり着きます。

成虫となり心臓や肺動脈に寄生し、子虫であるミクロフィラリアを産生する、という流れが犬糸状虫のライフサイクルです。

フィラリア予防薬は、この「体内に侵入した直後の幼虫」を駆除することで、成虫が寄生することを防ぎます。

つまり、フィラリア予防薬は蚊に刺されないように効果を発揮するのではなく、「刺された後に侵入したフィラリアを駆除する薬」ということです。

そのため、1か月に1回の継続投与が非常に重要になります。

参考:https://www.msdvetmanual.com/circulatory-system/heartworm-disease/heartworm-disease-in-dogs-cats-and-ferrets

フィラリア予防薬はいつから始めていつまで?①年間投与だと投与日が忘れづらい

年間投与を行うメリットのひとつに、飲み忘れを防ぐということが挙げられます。

実際、フィラリア予防で最も多い失敗が「飲み忘れ」です。

季節投与の場合、フィラリア予防を始める時期と終了する時期の判断が必要になるため、「今年はいつから投与を始めるのか?」「もうフィラリア予防を終了して良いのか?」と混乱しやすくなります。

一方、年間投与であれば、毎月同じ日に投与するだけで済むため、飲み忘れのリスクを最小限に抑えることができます。

その結果として飲み忘れが減り、確実なフィラリア予防へとつながります。

フィラリア予防薬はいつから始めていつまで?②年間投与はコストが安くなる

年間投与を行うメリットとして、コスト面でのメリットが挙げられます。

フィラリア予防薬は、地域や動物病院により値段が異なるものの、年間を通してやや高額な費用がかかってしまいます。

しかし、まとめ買いによる割引や健康診断とのパック料金などを活用することで、実際の費用を抑える方法もあります。

かかりつけの動物病院に相談すれば、無理のない範囲でフィラリア予防薬を続けられるプランを提案してもらえるでしょう。

さらに、季節投与を行ってもフィラリアに感染してしまった場合の治療費は、年間投与をするよりはるかに高額となってしまいます。

フィラリア予防薬はいつから始めていつまで?③年間投与は昨今の気候変動にも対応

上述の通り、近年は環境や気候の変動の影響で蚊の活動期間が長くなる傾向があります。

これまでのフィラリア予防は、「蚊が出る時期だけ予防すればよい」とされ、冬は予防を行わなくてよいとされてきました。

しかし現在では、地域によっては冬でも蚊が確認されるようになり、フィラリア症は季節限定の予防では防ぎきれない時代になっています。

冬に蚊が少なくなるのは事実ですが、フィラリアの感染リスクはゼロではないことに注意が必要です。

参考: https://d3ft8sckhnqim2.cloudfront.net/images/AHS_Canine_Guidelines_WEB_19JUN2025.pdf

季節投与の判断は難しい

フィラリア予防薬を投与する期間の目安として、HDU(Heartworm Development Unit)という計算式があります。

HDUとは、蚊の体内でフィラリアの幼虫が成熟するために必要な積算温度の単位です。

HDUを算出することによって、フィラリア予防薬を投与すべき期間を推定することができますが、実際は蚊の発生時期はその年ごとに異なります。

また、気候や地域の違いによっても大きく変動するため、正確な予測は難しいと言われています。

「今年は寒いから、早めに投与をやめても大丈夫」といった自己判断は非常にリスクが高い行為です。

フィラリア症の確実な予防のためにも、年間を通じたフィラリア予防薬の投与が推奨されています。

参考:https://www.msdvetmanual.com/circulatory-system/heartworm-disease/heartworm-disease-in-dogs-cats-and-ferrets

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4390526/

フィラリア症に感染した場合の症状

犬におけるフィラリア症の初期では、ほとんど症状を示さないことも珍しくありません。

しかし、病気が進行するにつれて咳や疲れやすさ、呼吸困難などの症状が現れ、やがてうっ血性心不全や腹水などの重篤な症状へと進行します。

また、稀に「急性大静脈症候群」と呼ばれる病態を引き起こし、突然真っ赤な尿(血色素尿)を出し、急に病状が悪化するケースもあります。

猫の場合は「犬糸状虫随伴性呼吸器疾患(HARD)」と呼ばれ、咳の他、突然の呼吸困難やショック状態に陥るケースもあり、発見された時点ですでに危険な状態になっていることも少なくありません。

参考:https://www.msdvetmanual.com/circulatory-system/heartworm-disease/heartworm-disease-in-dogs-cats-and-ferrets

フィラリア予防薬を始める手順

では、実際にフィラリア予防薬を投与し始めるにはどのようにすればよいのでしょうか?

フィラリア予防薬を安全かつ確実に始めるには、いくつか注意が必要です。

まずは動物病院を受診し、血液検査で既にフィラリアに感染していないか確認してもらいましょう。

その後、犬種や体重に合わせた適切なフィラリア予防薬を処方してもらいましょう。

フィラリア予防薬の多くは安全性の高い薬ではあるものの、適切な量を守らないと副作用が生じたり予防効果が薄れたりする可能性があります。

では、それぞれのステップを細かく見ていきましょう。

参考: https://www.msdvetmanual.com/circulatory-system/heartworm-disease/heartworm-disease-in-dogs-cats-and-ferrets

採血検査で感染の有無を確認

フィラリア予防薬を購入する前に、愛犬がフィラリアに感染していないかを血液検査で確認する必要があります。

フィラリアに感染したままフィラリア予防薬を投与すると、副反応が出る可能性があるので注意が必要です。

年間投与を行っている場合でも、確実なフィラリア予防が行われているかを確認するために、毎年の血液検査を行いましょう。

参考:https://www.msdvetmanual.com/circulatory-system/heartworm-disease/heartworm-disease-in-dogs-cats-and-ferrets

愛犬(猫)の体重・体質・ライフスタイルに合った予防薬を選ぶ

現在、フィラリア予防薬はさまざまな形状のものが発売されています。

チュアブルタイプのフィラリア予防薬は、おやつ感覚でそのまま与えられるタイプです。

犬が好むフレーバーで作られているため、多くの飼い主の方が抵抗感なく与えることができる特徴があります。

錠剤タイプは昔から使用されており、価格が比較的安いことがメリットです。

スポットタイプは、首元の皮膚に直接滴下するタイプの薬です。

薬を飲ませる必要がないので、投薬が難しい猫や、口からの投薬が苦手な犬に適しています。

飲み忘れを防ぐためのルーティン化とリマインダー設定

フィラリア予防薬を毎月1回決まった日に投与することで、愛犬・愛猫をフィラリアの感染リスクから守ることができます。

しかし、多くの飼い主様が意外と投与を忘れがちなのが実際のところです。

投与を忘れないために、以下のような工夫をすると良いでしょう。

  • カレンダーにチェックを入れたり、シールを張ったりする
  • スマホのアプリにリマインダーを設定する
  • フィラリア予防薬のパッケージに投薬した日を書き込む
  • メーカーが作った投薬管理アプリを活用する

「フィラリア予防薬はいつから始めていつまで」に関するよくある質問

ここまではフィラリア予防薬の年間投与の重要性と安全な始め方について解説しました。

最後に、フィラリア予防薬に関して飼い主様からよく寄せられる疑問について、分かりやすくお答えします。

Q1.子犬はいつから予防を始めるべき?

子犬のフィラリア予防は、一般的には生後8週齢頃から始めます。

子犬であっても、感染リスクは成犬とほぼ同様だと言われているので、早めのフィラリア予防を心掛けましょう。

また、その頃の月齢ではフィラリアの検査は行わず投薬を始めることが一般的です。

ただし、子犬の体重や健康状態によって異なるため、必ず動物病院を受診し、獣医師の判断を仰ぎましょう。

参考:https://www.heartwormsociety.org/pet-owner-resources/heartworm-basics

Q2.室内飼いだから安心?

結論から言うと、室内犬でもフィラリアに感染します。

外に出ない室内犬なら、蚊に接触しないのでフィラリアに感染しないと考えてしまいがちです。

しかし、蚊は窓の隙間や人の出入りに伴って室内に侵入し、愛犬を吸血します。

そのため、室内犬でも感染リスクはゼロではありません。

実際に、室内飼育の犬や猫が感染していた症例も数多く報告されています。

Q3.飲み忘れたらどうすればいい?

フィラリア予防薬を予定の日に飲み忘れてしまった場合は、まずは気づいた時点で動物病院に相談しましょう。

飲み忘れて1~2か月程度であれば、気づいたその日から投与を再開することが多いです。ただし、犬の健康状態や地域により判断が異なるため、必ず獣医師の判断を仰ぎましょう。自己判断での投与再開はリスクを伴います。

参考:https://www.heartwormsociety.org/pet-owner-resources/heartworm-basics

【まとめ】確実性×コスト!通年投与で愛犬の命と家計を守る

フィラリア症は、フィラリア予防薬を一度投与し忘れただけでも感染してしまうリスクがあります。

一方、フィラリア予防はとても簡単で安全性も高く、ほぼ100%の確率で愛犬の健康を守ることができます。

現在の日本の環境を考えると、フィラリア予防薬は年間投与することが推奨されます。

年間投与は、感染のリスクを考慮すると結果的にコスト面でもメリットがあります。

現在は投薬が苦手な愛犬・愛猫でも、さまざまな形状のフィラリア予防薬から適切なものを選ぶことで、無理なく予防を行うことができます。

ぜひ、今日から年間投与を習慣にしていきましょう。

監修者コメント
監修者の写真

本記事では、フィラリア予防薬の通年投与の重要性について解説しました。 実際に日々診察を行うなかで、フィラリア予防薬の飲み忘れはよく耳にしますし、飲み忘れからフィラリア症に感染したケースも経験しています。 特にこれからの日本の環境変化を考えると、年間投与が一般的になっていくと考えられます。 フィラリア予防は、犬や猫を飼育するうえで「必ず実施すべき健康管理の一つ」だと考えています。 愛犬・愛猫の命を守るために、本記事をきっかけに年間投与の重要性を知っていただければ幸いです。

監修・うさパラ コンテンツ制作チーム

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