子犬を迎えたばかりは、分からないことがたくさんありますよね。
特にフィラリア予防に関して、
「子犬にもフィラリア予防薬は必要なの?」
「子犬は検査が不要と聞いたけど本当なの?」
「フィラリア予防薬にはどのような種類があるのだろう?」
といった疑問をお持ちではないでしょうか?
実際に私自身も、日頃の診察においてそのようなご相談をよく受けます。
子犬にもフィラリア予防は必要で、一般的には生後6〜8週齢頃から開始が推奨されます。
フィラリア症は命に関わる重大な病気でありながら、正しい知識が十分に伝わっていないことも多いです。
「子犬にフィラリア検査は不要」という言葉だけが一人歩きし、予防そのものをしなくてよいと誤解されていることもあります。
本記事では、現役獣医師の意見をもとに、子犬に予防薬が必要な理由、検査が不要とされるケースの正しい意味、そして子犬に適したフィラリア予防薬の選び方について分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、愛犬に最適なフィラリア予防薬選びの一助になれば幸いです。
目次
子犬にフィラリア予防薬は必要?
犬のフィラリア症は、蚊の吸血を介して感染したフィラリア(犬糸状虫)が原因で起こる感染症です。
そのため、子犬であっても、蚊に刺されることでフィラリアに感染する可能性はあります。
フィラリア症は進行すると、呼吸困難や腹水、重度の心不全、貧血などを引き起こし、死に至ることがある病気です。
まだお散歩に出ていない月齢で、外に出ない子犬であったとしても、人間が室内に蚊を持ち込んでしまい感染する可能性もあります。
そのため、子犬であっても1か月に1回フィラリア予防薬を定期的に投与し、フィラリア症を予防することが大切です。
(参考文献:Heartworm Disease in Dogs, Cats, and Ferrets – Circulatory System | MSD Veterinary Manual)
「子犬はフィラリア検査不要」は本当?誤解しやすいポイントを整理
通常、成犬にフィラリア予防薬を与え始める際には、フィラリアに感染していないか血液検査で確認することが一般的です。
一方、子犬ではフィラリア検査をせずにフィラリア予防薬を投与する場合があります。
では、いったいどのような理由でこの違いが生まれるのでしょうか?
もし生後数か月の子犬がフィラリアに感染していた場合、まだフィラリアが体内で成虫になっておらず、血液検査で陽性反応が出ない可能性があります。
具体的には、フィラリアに感染して6カ月以上経たないと陽性反応が出ないといわれています。
そのため、初回は検査を省略してフィラリア予防を開始し、生後6~7カ月以上でフィラリアの検査をすることが一般的です。
(参考文献:Heartworm disease – Overview, intervention, and industry perspective|PubMed CentralⓇ)
(参考文献:Heartworm Basics|American Heartworm Society)
子犬のフィラリア予防薬はいつから必要?
一般的に、子犬のフィラリア予防は生後6〜8週齢頃から開始し、遅くとも生後8週齢以内にはフィラリア予防薬の投与を開始することが推奨されています。
多くのフィラリア予防薬には使用できる最低体重や月齢が決められており、それを満たしていればフィラリア予防が可能です。
また、蚊に刺される機会がある環境であれば、子犬がフィラリア症にかかるリスクは成犬とほぼ同等です。
そのため、ワクチン接種のタイミングなどに合わせて、フィラリア予防についても動物病院で相談することをおすすめします。
私自身も子犬を診察する際は、フィラリア予防に関して積極的に説明するよう心がけています。
(参考文献:Heartworm Basics|American Heartworm Society)
子犬のためのフィラリア予防薬の選び方
ここまでは、子犬におけるフィラリア予防薬の必要性と予防を始めるタイミングについて解説しました。
では、さまざまなフィラリア予防薬の種類がある中で、予防薬はどのような基準で選べばよいのでしょうか?現在、一般的に使用されているフィラリア予防薬は、
- チュアブル(おやつ)タイプ
- 錠剤タイプ
- スポットタイプ
- 注射タイプ
の4種類があります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、愛犬に合ったフィラリア予防薬を選ぶことが重要です。
それぞれのフィラリア予防薬の特徴を詳しく見ていきましょう。
(参考文献:Choosing Heartworm Prevention | Just 4 Pets Wellness Center)
チュアブル(おやつ)タイプ
チュアブルタイプのフィラリア予防薬は、味のついたおやつの形の予防薬で、飲み薬が苦手な犬でも与えやすい特徴があります。
フィラリア予防単体のほかに、ノミ・マダニやお腹の寄生虫の駆除も同時に行うことができる製品も開発されています。
その製品であれば、月に1回飲ませるだけでオールインワンの予防が可能です。
子犬を飼い始めたばかりの飼い主様でも美味しく簡単にフィラリア予防を行うことができます。
また、シャンプーの影響を受けず、投与直後でもいつも通り安心して触れ合うことができる特徴があります。
(参考文献:Heartworm Disease in Dogs, Cats, and Ferrets – Circulatory System | MSD Veterinary Manual)
錠剤タイプ
錠剤タイプのフィラリア予防薬は、一般的な飲み薬と同様の外見をした予防薬です。
かつては味のない単純な錠剤としての製品のみでしたが、近年はフレーバーがついたタイプの製品も開発されています。
そのままの錠剤では薬を飲むのが難しい犬でも、フレーバーがつくことによりおやつ感覚でフィラリア予防を行うことができます。
月1回の投与で予防効果を発揮し、シャンプーの影響を受けず、投与直後でもいつも通り安心して触れ合うことができます。
スポットオンタイプ
スポットオンタイプは、月に1回皮膚に塗布するフィラリア予防薬です。
こちらもチュアブルタイプと同様に、飲み薬が苦手な犬にも最適です。
多くの製品で、フィラリア予防のほかにもノミやミミヒゼンダニ、シラミなどの駆除も同時に行うことができます。
ただし、使用前には皮膚の状態を確認し、異常がないことを確かめたうえで使用することが重要です。
また、
- 使用直後にシャンプーができない
- 塗布した部位にかゆみや脱毛が起こることがある
- マダニの予防ができない
などのデメリットもあるので、愛犬のライフスタイルや健康状態を考慮して選択しましょう。
注射タイプ
注射タイプは、動物病院で体に直接注射して投与するフィラリア予防薬です。
注射タイプのフィラリア予防薬は、1回の投与で一年中予防ができる特徴があります。
また、自宅で予防薬を飲ませる手間も必要ありません。
ノミ・ダニもまとめたい人へ:オールインワンの考え方
ここまでは、フィラリア症の予防を中心とした予防薬を解説しました。
しかし、犬において予防すべき寄生虫はフィラリアのほかにも、
- ノミ
- マダニ
- 内部寄生虫(回虫や鉤虫など)
といったものが挙げられます。
以前は、これらの予防は別々の薬を用いて行うことが一般的でした。
しかし、最近は複数の予防効果を1つにまとめた「オールインワンタイプ」のフィラリア予防薬が開発されています。
月に1回の投与で、フィラリアに加えてノミ・マダニ・内部寄生虫までまとめて対策できるため、投与管理がしやすく、飲み忘れ防止にもつながります。
特に初めて犬を飼う方は、手間が少なくおすすめです。
一方で、すべての犬に適しているとは限らないため、体質や生活環境に合わせて獣医師と相談しながら選びましょう。
(参考文献:How To Choose the Best All-In-One Flea, Tick, and Heartworm Pill for Dogs | PetMD)
子犬へのフィラリア予防薬投与で失敗しないチェックリスト
では、上記のフィラリア予防薬の中から選ぶにあたって、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
特に子犬に初めてフィラリア予防薬を与える際には、私自身もこのご質問をよく受けます。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
(参考文献:How To Choose the Best All-In-One Flea, Tick, and Heartworm Pill for Dogs | PetMD)
今の体重で使える規格か
まず、フィラリア予防薬を処方してもらう前に、獣医師に身体検査をしてもらい、愛犬の体重や寄生虫の感染リスクを確認してもらいましょう。
フィラリア予防薬は一般的に、体重別に薬の用量が決められています。
体重に合わない予防薬を使用すると、十分な効果が得られなかったり、副作用のリスクが高まったりする可能性があります。
また、子犬は成長が早いため、体重測定をこまめに行い、その時点の体重に適した予防薬を選ぶことが重要です。
投与のしやすさ
フィラリア予防薬は月に1回投与する必要があります。
そのため、子犬へフィラリア予防薬が投与しやすいかどうかは、非常に重要なポイントです。
食欲が旺盛な子犬であれば、チュアブルタイプのフィラリア予防薬が投与しやすいでしょう。
一方で、チュアブルタイプや錠剤タイプの投与が難しい場合は、スポットタイプのフィラリア予防薬の方が適切です。
このように、子犬の性格に合わせてフィラリア予防薬を選んであげましょう。
フィラリア予防薬は通年投与がおすすめ!
ここまではフィラリア予防薬の種類や選び方について解説しました。
では、フィラリア予防薬はどれくらいの期間投与した方がよいのでしょうか?
結論から申し上げますと、フィラリア予防薬は「通年年間投与」がおすすめです。
これまでは、蚊のいる季節のみ予防を行う「季節投与」が主流でした。
しかし近年は、環境や気候の変動の影響で蚊の活動期間が長くなり、フィラリアへの感染リスクが増加しています。
そのため現在は、年間を通じてフィラリア予防薬を投与する「通年年間投与」が推奨されています。
冬に蚊が少なくなるのは事実ですが、フィラリアの感染リスクがゼロになることはありません。
そのうえ、通年投与であれば飲み忘れを防ぐこともできるというメリットもあります。
フィラリア予防は通年で行い、確実にフィラリア症を予防してあげましょう。
(参考文献:AHS_Canine_Guidelines_WEB_19JUN2025 | American Heartworm society)
「フィラリア予防薬 子犬」に関するよくある質問
Q1.動物病院で予防薬だけもらえる?
動物病院によって対応は異なりますが、一般的には健康チェックや問診を行ったうえで処方されます。
上述の通り、フィラリア予防薬を処方してもらうには、獣医師による診察が必要です。
特に子犬では、体重測定や体調の確認が重要となるからです。
しかし、過去に診察歴がありフィラリアの検査が陰性で、かつ体調が安定している場合は、診察なしで処方されるケースもあります。
ただし、自己判断での継続購入は避け、定期的に獣医師の診察を受けましょう。
フィラリア予防薬を通年で投与している場合でも、年1回のフィラリア検査が推奨されています。
(参考文献:Heartworm Basics|American Heartworm Society)
Q2.飼っている子犬がフィラリア予防薬を飲み忘れたら?
フィラリア予防薬を予定の日に飲み忘れてしまった場合は、まずは気づいた時点で動物病院に相談し、獣医師の指示を仰ぎましょう。
飲み忘れて1~2か月以内であれば、気づいたその日から投与を再開することが多いです。
フィラリア予防薬は、体内に侵入したフィラリア幼虫を成虫になる前に駆除する薬です。
さらに、フィラリアが寄生部位である心臓や肺動脈に移動するまでの準備期間は、約2か月とされています。
以上の理由から、フィラリア予防薬は飲み忘れてもすぐに投与を行うことが一般的です。
ただし、犬の健康状態や地域により判断が異なるため、必ず獣医師の判断を仰ぎましょう。
(参考文献:Heartworm Basics|American Heartworm Society)
Q3.フィラリア症は、母犬が陽性だと母子感染する?
一般的に、フィラリアが母犬から子犬に直接感染し、子犬がフィラリア症を起こした状態で生まれることはないといわれています。
その理由は、フィラリアが成虫になるには、蚊の体内で成長する過程が必要だからと考えられています。
母犬が保有しているミクロフィラリアが血流を介して子犬に移行することはありますが、これらは成虫に発育することはなく、子犬がフィラリア症を発症することはありません。
また、出生後に蚊に刺されることで感染する可能性も十分にあるため、子犬であっても早期のフィラリア予防が大切です。
(参考文献:Heartworms In Dogs: Can Puppies Be Born With It? | PetShun)
【まとめ】子犬のフィラリア予防は、月齢と体重に合わせて柔軟に行うことが大切
子犬であっても、フィラリア症の感染リスクは決してゼロではなく、成犬と同等といわれています。
そのため、子犬の年齢によりフィラリアの検査は不要な場合はありますが、子犬であってもフィラリア予防は必要です。
近年では地球温暖化の影響もあり、1年を通したフィラリア予防が推奨されています。
また、フィラリア予防薬にはさまざまなタイプがあり、手間なく投薬できる便利な「オールインワン予防薬」も開発されています。
本記事を参考に、愛犬の体重や性格、飼育環境に合ったフィラリア予防薬を選び、適切な時期からフィラリア予防を開始しましょう。
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監修・うさパラ コンテンツ制作チーム