【獣医師監修】猫のダウン症とは?症状や顔つきで分かるのか解説

   

子猫を迎えたとき、周りの猫と比べて成長が遅く感じられると、心配になりますよね。

そんなとき、

「何か生まれ持ったトラブルがあるのでは?」

「動物病院を受診した方がいいのかな?」

「猫にダウン症ってあるの?」

といった疑問をお持ちではないでしょうか?

実は、猫には人間と同じ意味の「ダウン症」は確認されていないものの、先天的なトラブルを抱えて生まれてくることは少なくありません。

そのような場合には、一緒に暮らすための工夫が必要であることをご存じでしょうか?

今回は、現役獣医師の意見をもとに、猫にダウン症はあるのか、また先天的なトラブルを抱えた猫との付き合い方や受診の目安について、分かりやすく解説します。

最後までお読みいただき、生まれ持った特徴のある猫との暮らしについて、理解を深めましょう。

うさパラ コンテンツ制作チーム

【監修】うさパラ コンテンツ制作チーム

うさパラ編集部は、犬猫の健康管理や医薬品に関する情報を、正確かつ分かりやすくお届けすることを目的に記事を制作しています。記事内容は、テーマに応じて社内の 獣医師薬剤師 が確認を行っています。なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・投薬の最終判断は獣医師にご相談ください。

【結論】猫に人間と同じ意味でのダウン症は確認されていない

結論から申し上げますと、猫では、人と同じ意味の「ダウン症」を発症することはないといわれています。

人のダウン症とは、生まれてくる段階で21番染色体を1本多く持つことで、発育の遅れや特徴的な外貌が見られる病気です。

そもそも猫では21番目の染色体を持たないため、現状、人と同じダウン症の発症は確認されていません。

しかし、さまざまな原因で、人のダウン症と似た症状が、猫に起きているように見えてしまいます。

具体的には、

  • 他の猫と比べて行動に異常が見られる
  • 耳や鼻の形に異常が見られる
  • 目と目の間隔が異常に広い
  • 運動機能に障害がある

といった様子が見られる場合は、あたかも人のダウン症なのではないかと受け取られてしまうのです。

(参考文献:Down Syndrome-Like Symptoms in Cats | Purina

猫にダウン症のように見える特徴があっても、見た目だけでは判断できない

前述のような症状から、猫がダウン症のように見えた場合でも、見た目だけでは判断できないことが多いです。

その理由として、猫では、外見や行動の特徴には1頭1頭の「個体差」があり、健康な猫でも似た特徴を持つことも少なくありません。

また、猫がダウン症のように見える特徴を持つ原因としては、

  • 小脳低形成
  • 遺伝子変異
  • 妊娠中の感染症
  • 出生後の外傷

といったものが挙げられ、これらは基本的に外見だけでは判断することができません。

(参考文献:Can a Cat Have Down Syndrome? | Pewaukee Veterinary Service

猫のダウン症とは?まずは人間のダウン症との違いを知ろう

では、そもそも人のダウン症とはいったいどのような病気なのでしょうか?

前述の通り、人のダウン症は、21番染色体が1本余分にあることで発症します。

ダウン症の小児では、

  • 発育の遅れ
  • 精神発達の遅れ
  • 特徴的な頭部と顔貌
  • 低身長

といった症状がよくみられます。

出生前は、超音波検査や母親の血液検査の結果からダウン症を疑うことができます。

出生後では、その特徴的な外見や血液検査による21番目の染色体の異常からダウン症と診断されることが一般的です。

人のダウン症には根治的な治療法がありませんが、多くの方は死亡することなく成人になるといわれています。

(参考文献:Down Syndrome (Trisomy 21) – Children’s Health | MSD Manual Consumer Version

猫が「ダウン症みたい」と言われるのはどんな症状や顔つき?

では、実際に「ダウン症みたい」と言われる猫には、どのような症状や特徴が見られるのでしょうか?

その症状や特徴は、人のダウン症と似ている部分があります。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

(参考文献:All to Know About Down Syndrome Cat | Starlight

鼻が低く見える

例えば、ペルシャやヒマラヤンは生まれつき顔が平らで、鼻が低く見えます。

このように、猫種によっては、生まれつきの身体的特徴が異常と誤解されやすいものがあります。

しかし、これは品種上正常な特徴です。

また、出生前後の外傷や感染症などにより、鼻が低く見えるように成長するケースも少なくありません。

私自身の日頃の診察でも、特に野良猫でそのような顔つきの猫に遭遇したことがあります。

目の間隔が広く見える

目と目の間隔が広く見える場合も同様に、個体差の範囲内であることが多く、健康上問題がないケースが少なくありません。

しかし、先天的な顔の構造の異常や、鼻腔内のトラブルによって、目と目の間隔が広く見える場合もあります。

判断には獣医師による診察が必要です。

成長や学習がゆっくりに見える

他の猫と比べて、成長や学習が遅く見える場合、何かしら成長を妨げるトラブルや脳神経系の異常が関係している可能性があります。

ただし、個体差や性格による差も十分に考えられるため、成長を長期的に見守らないと判断できないことも少なくありません。

なかには、マンチカンのようにもともと手足が短くなるように繁殖されてきた品種もあるため、品種によっても成長に差が見られることがあります。

愛猫に異変を感じたらどうする?受診の目安と準備

ここまでは、ダウン症の特徴とそこから考えられる異常について解説しました。

では、実際に愛猫の体調に異常を感じ、先天的なトラブルが考えられる場合、どのようなタイミングで受診すべきなのでしょうか?

それぞれを詳しく見ていきましょう。

成長不良が目立つ

まず、子猫は成猫になるにつれて、正常であれば徐々に体重が増加します。

生後2か月までの目安の体重は以下の通りです。

新生児50~150グラム
生後1週間150~250グラム
生後2週間250~350グラム
生後3週間350~450グラム
生後4週間450~550グラム
生後5週間550~650グラム
生後6週間650~750グラム
生後7週間750~850グラム
生後8週間850~950グラム

もし、この目安の体重から大きく下回る場合は、何か成長を妨げるトラブルがある可能性があります。

具体的な原因としては、

  • 食事量の不足
  • 栄養バランスの偏り
  • 消化管内の寄生虫
  • 骨格や臓器の形成異常

といったものが挙げられます。

一度動物病院を受診し、愛猫に異常がないか確認してもらいましょう。

(参考文献:Kitten Development Stages and Kitten Age Chart | PetMD

歩行異常がある

次に、歩き方に異常が見られる場合も、動物病院を受診するべきタイミングの一つです。

子猫でよくある具体的な原因として、

  • 小脳低形成
  • 水頭症
  • 外傷
  • 骨格の奇形

などの病気が考えられます。

特に小脳低形成は、妊娠中に猫汎白血球減少症などのウイルスに感染したことが原因であることが多いです。

完全に治すことが難しくても、適切なケアを受ければ、健康な子と変わらない充実した生活を送ることができることでしょう。

(参考文献:Can a Cat Have Down Syndrome? | Pewaukee Veterinary Service

発作や意識の異常がある

もし、痙攣のような発作や意識の異常がある場合は、緊急性が高いサインと考えられます。

これらの症状は、脳や神経に関わる異常の可能性があります。

症状が現れた際は様子を見ず、できるだけ早く動物病院を受診することが重要です。

また、発作の様子を記録しておくと、診断がよりスムーズに進みます。

発作が起きたタイミングや時間など、詳細に記録しておきましょう。

個性を持つ愛猫と幸せに暮らすためのケアと心構え

では実際に、生まれ持った個性を持つ猫と一緒に暮らすためには、どのようなケアや心構えが必要なのでしょうか?

具体的なケアや心構えは、愛猫が持つ個性によって大きく異なりますが、個性を理解し寄り添うことで、快適に暮らすことができます。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

安全で暮らしやすい環境づくり(バリアフリー化)

骨格の発達が不十分であったり、歩き方にトラブルがあったりする場合は、愛猫が安全で暮らしやすい家の環境づくりを心がける必要があります。

具体的には、

  • スロープなどで段差を減らす
  • 滑りにくい床にする
  • 階段を上らせない
  • ご飯や水を安全な位置に置く
  • 高いところに登らないようにする
  • 入口の低いトイレを使用する

といった方法が挙げられます。

(参考文献:Caring for Older Cats | Blue Cross

その子の「個性」を受け入れ、適切な距離感で寄り添う

愛猫の個性と向き合ううえで、まずは他の猫と比較せず、愛猫の個性を受け入れてあげましょう。

また、しつけに関しても、愛猫のペースに合わせてトレーニングすることが大切です。

生活リズムに関しても、他の猫と比べてのんびりしていることも少なくありません。その場合は無理に生活リズムを正す必要はなく、愛猫自身が落ち着いて生活できるよう、適度な距離感で寄り添ってあげることが大切です。

猫のダウン症に関するよくある質問

Q1.ダウン症っぽい猫は長生きできますか?

ダウン症のように見える特徴がある猫でも、必ずしも寿命が短いとは限りません。

重要なのは、その背景にある原因です。

個性や体質の範疇であれば、適切な食事や生活環境を整えることで、他の猫と同じように長く健康に暮らせるケースもあります。

小脳低形成では、ふらつきなどのトラブルは残るものの、健康な猫と寿命は変わらないといわれています。

一方で、内臓や神経の異常などの疾患が関係している場合は、寿命に影響することも否定できません。

定期的な獣医師による健康チェックと、異常を見つけた際の早期治療が大切です。

(参考文献:All to Know About Down Syndrome Cat | Starlight

Q2.猫の発達障害や知的障害のようなものはありますか?

猫には人間のような「発達障害」や「知的障害」という明確な診断名は一般的ではありません。

しかし、例えば生まれつきの脳の発育異常や神経系のトラブルによって、しつけの遅れや行動の違いが見られることがあります。

また、外傷や感染症によって脳に影響が出るケースも少なくありません。

こうした状態は個体差が大きいため、気になる場合は獣医師に相談し、神経のトラブルがないかチェックしてもらいましょう。

Q3.子猫の頃から顔つきが違うのは病気ですか?

子猫の頃から他の猫と顔つきが異なる場合でも、必ずしも病気とは限りません。

猫は品種や遺伝によって顔つきに大きな個体差があり、健康であっても特徴的な見た目になることも少なくありません。

ただし、成長不良や歩き方の異常など他の症状を伴う場合は、先天的な異常や疾患の可能性も考えられます。

少しでも気になる点があれば、早めに動物病院で相談すると安心です。

また、自宅でも定期的に体重を測定することで、順調に発育しているか確認することができます。

【まとめ】猫にダウン症はないが、似た症状を引き起こす病気は存在する。

猫には人間と同じダウン症は存在しませんが、似た特徴を示す猫は存在します。

多くの猫は健康で、その特徴とは、個性としてうまく付き合っていくことができます。

しかし、一部では遺伝的な要因や神経系の異常、先天的な疾患などによるものであることも少なくありません。

見た目だけで判断することは難しく、正確な診断には獣医師による診察が必要です。

愛猫の健康を守るためにも、少しでも異変を感じた場合は早めに動物病院を受診しましょう。

また、体質や個性の範疇であれば、適切なケアを行い正しい理解を持つことで、健康な猫と変わらず幸せに暮らすことができます。

監修者コメント
監修者の写真

「猫のダウン症」という言葉は一般的に使われることがありますが、獣医学的には正確ではありません。 今回ご紹介した通り、ダウン症に似た症状の背景にはさまざまな原因があり、適切な診断を行い、正しく付き合っていくことが重要です。 私自身、さまざまな個性を持つ多くの猫を診察してきました。 見た目だけで判断せず、気になる点があれば必ず獣医師に相談しましょう。 今回の記事を参考に、愛猫の個性への理解を深める一助になれば幸いです。

監修・うさパラ コンテンツ制作チーム

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