犬の時間は、人間の約5〜7倍のスピードで進んでいるといわれており、あっという間にその犬生をかけ抜けていきます。
愛犬との別れは、想像するだけでも耐えがたいことですね。
筆者も高齢の愛犬たちと暮らしていたときに、お別れのことを考えるのはとてもつらく、「このまま時間が止まったらいいのに」といつも思っていました。
しかし、どれほど願っても、お別れのときは必ずやってきます。
だからこそ、最期のその瞬間に愛犬を愛と感謝で包んで送り出してあげたいのではないでしょうか。
この記事では、動物介護士の筆者が、犬の最後の気持ちが分かるサインと飼い主としてできる最後のケアについて解説します。
【監修】うさパラ コンテンツ制作チーム
犬猫ペットのお薬通販輸入代行うさパラのコンテンツ制作チーム。専門知識を活かし、正確で分かりやすい情報発信を心がけています。 薬剤師 ・獣医師が在籍。
目次
【結論】犬の最後の気持ちは「そばにいてほしい」という願い
犬の最後の気持ちは、「大好きな飼い主さんにそばにいてほしい・そばにいたい」という想いだと考えられています。
犬にとって、飼い主は世界のすべてです。
犬が「自分の死」というものを理解しているかは、わかっていません。
しかし、自分の終わりが近いことを察知して、信頼する飼い主さんを求める行動が見られたという報告も多数あります。
だからこそ、最後の時間は無理に何かをしてあげる必要はないのかもしれません。
飼い主さんがそばにいて、優しく声をかけてもらえたり撫でてもらえたりすること、それが犬にとって何よりも幸せなことです。
(参考文献:Experiences of Dying Animals: Parallels With End-Of-Life Experiences in Humans|ResearchGate)
犬の最後の気持ちが分かるサイン(死期が近いときの予兆)①食欲と水分の摂取量の低下
犬は死期が近くなると、ご飯を食べなくなったり水を飲まなくなったりするサインが見られることがあります。
これは、体が生命活動を終えるための準備を始めたときに見られる自然な反応で、生きることを諦めたという意味ではありません。
また、終末期になると痛みや苦痛を和らげる「エンドルフィン」という脳内物質が分泌されます。
この物質が分泌されると脳は不快感の代わりに多幸感を優先するため、自然と食欲がなくなります。
もちろん、食欲や水分摂取量の変化は体調不良でも起こり得るので、自己判断せず獣医師に相談しましょう。
犬の最後の気持ちが分かるサイン(死期が近いときの予兆)②排泄と睡眠の変化
犬の死期が近づいてくると、排泄や睡眠の様子にも変化が見られることがあります。
排尿や排便の回数がいつもより減ったり、失禁や失便が増えたりするのは、筋肉や神経、内臓が本来の機能を維持できなくなるからです。
また、これまでよりも長い時間眠るようになり、起きている時間が少なくなる犬も少なくありません。
実際、筆者の愛犬の1匹は、旅立ち前の数日間、ほとんどの時間を寝て過ごしていました。
こうした変化は、体が最期の瞬間に向けて余計なエネルギー消費を抑え、穏やかに過ごそうとするサインでもあります。
ただし、老犬の場合は終末期に限らず、ほかの病気が原因で引き起こされていることもあるため獣医師に相談することが大切です。
犬の最後の気持ちが分かるサイン(死期が近いときの予兆)③呼吸と体温の変化
犬の死期が近くなると、呼吸が浅くなったり、呼吸のリズムが不規則になったりすることがあります。
これは、脳の呼吸中枢の働きが低下したり、心臓や肺の働きが低下したりすることで、体内に十分な酸素を取り込めなくなるからです。
愛犬の呼吸が止まりかけたり、苦しそうな呼吸をしている姿に、胸を痛める飼い主さんも少なくないでしょう。
しかし、多くは苦しさを感じていない状態で、体が自然に生命活動を終えるための最後の調整です。
また、血流も低下して体全体に熱が行き渡らなくなるため、手足や耳先が冷たく感じられることもあります。
(参考文献:Recognizing End-of-Life Breathing Changes In Dogs: A Guide For Comfort Care|The Dog Pedia)
飼い主ができる最後のケア(在宅緩和ケアの基本)
自宅で愛犬の最期を迎える場合、飼い主だからこそできるケアがあります。
在宅ケアの目的は、治すことではありません。
愛犬が最期のときまで穏やかに過ごせるよう、最後のケアについて見ておきましょう。
静かにする
死期が近い犬は、脳や神経が正しく情報を処理できなくなったり、認知症に似た状態が起こって混乱するため、音や刺激に敏感になりやすくなります。
テレビの音を小さくしたり、周りで騒がしくしないなど、できる限り静かな環境を保ってあげましょう。
また、話しかけるときも、穏やかな優しいトーンを意識してあげてくださいね。
体位変換
同じ姿勢が続いたり、寝たきりになると、特定の部位が圧迫されて床ずれを起こしやすくなるため、2〜3時間に1回を目安に体の向きを変えてあげましょう。
ただし、寝ているのを無理に起こしてまで体位変換を行うのは、犬の精神的負担のほうが大きくなります。
低反発と高反発の2層構造のマットなど、高性能な寝具を使用することで夜間のみ間隔を少し広げることも可能です。
身体を清潔にする
身体を清潔にするといっても、定期的な全身ケアを行う必要はありません。汚れに気づいたときに、汚れた部位だけを優しく拭き取ってあげましょう。
シャンプーで洗うのはもちろん、体を拭くという行為そのものも、心と体に大きな負担がかかります。
衛生を維持することよりも、体力を温存し、不快感を取り除いてあげることが優先される時期です。
水分・栄養
終末期は、栄養バランスや食事内容にこだわる必要はありません。
もし愛犬に「食べたい」という気持ちが見られるなら、その子が喜ぶものを少しでも食べさせてあげましょう。
ただし、犬が食べてはいけないネギ類やぶどう、チョコレートは絶対にNGです。
また、水を自分から飲まないときは、湿らせたスポンジを使用して口元を湿らせてあげてください。
これは、喉の渇きによる不快感を和らげ、穏やかな眠りにつかせてあげるための大切なケアです。
そばにいる
最期が近いときに、飼い主さんがそばにいることは何よりも大きな意味を持ちます。
もちろん、常に触れたり話しかけるということではありません。
犬は、飼い主さんの気配を感じられるだけで安心に繋がります。
また、犬は人の感情を敏感に察知し、共感する能力を持っていることが研究でも明らかになりました。
そのため、そばにいる飼い主さん自身が穏やかでいることも大切です。
(参考文献:Social evolution. Oxytocin-gaze positive loop and the coevolution of human-dog bonds|NIH)
看取りを終えた後の後悔を減らすための心構え
筆者自身もそうですが、どんなに精一杯やりきっても「もっとああすればよかった」「こうすればよかった」と後悔は生まれるものです。
それだけ愛犬を大切に想っている証なので後悔をなくすことはできませんが、少しでも後悔を減らすことはできます。
感謝の気持ちを伝えること
愛犬の命の灯が消えたとき、悲しみやショックで何をしていいかわからなくなってしまうものです。
最期の瞬間やその前後に、ありがとうと大好きという気持ちを伝えてあげてください。
終末期の人の研究ではありますが、聴覚は死を迎えるときに最期に機能を失う感覚のひとつとして、声掛けは届いていると考えられています。
(参考文献:Electrophysiological evidence of preserved hearing at the end of life.|scientific reports)
できるだけ傍にいてあげること
看取りとは、理想通りにいかないことも多いものです。実際、筆者は4匹の愛犬を見送りましたが、納得のいく看取りができたのは1匹だけでした。
だからこそ、できる限りそばにいて、愛犬の存在を感じる時間を大切にしてください。
最期の瞬間に立ち会えなかったとしても、そばにいようとしたことが看取り後の後悔を和らげてくれるでしょう。
看取り後、飼い主の心のケア
愛犬を見送った後、深い悲しみや喪失感、自責の念や後悔に襲われるのは自然なことです。
このつらさは、時間が経てば癒えるという単純なものではありません。
ペットロスは、重症化すると生活に支障をきたすこともあるため、心のケアの準備をしておくことも大切です。
思い出の可視化
愛犬の写真や動画を撮ったり、気持ちや記録をノートに書き出してみたり、毛や足形などを取って残しておきましょう。
思い出を可視化することは、亡くなった後に「今もここにいる」「幸せな時間を過ごした」と実感でき、悲しみを和らげてくれることにつながります。
話相手・相談先を決めておく
悲しみを一人で抱え込むのは、ますますペットロスが悪化してしまいます。
信頼できる友人や家族など、相談先を決めておくと良いでしょう。
できれば、同じような経験をした人のほうが、気持ちをわかってくれて心も少し軽くなります。
話せる人がいないときは、SNSを活用したり、カウンセラーを頼るのもひとつの方法です。
「犬の最後の気持ち」に関するよくある質問
Q1.隠れてしまう=嫌っている?
A.嫌っているわけではありません。犬は本能から、体が弱っているときは外敵から身を守るために隠れることがあります。体の痛みや違和感、体調の変化などで不安を感じ、静かで落ち着ける場所を選んでいるのでしょう。無理に引き戻そうとはせず、必要なときに声をかけたり手を差し伸べられる距離で、そっと見守ってあげることが大切です。
Q2.無理に食べさせた方がいい?
A.その犬の状態によって異なります。終末期でまったく口にできないなら無理に食べさせる必要はありませんが、単に体調不良や病気になって食べられない場合や、高齢犬特有の嗜好の変化で食べない場合では、食べてもらう工夫が必要なこともあります。自己判断せず、まずは動物病院を受診しましょう。また、シリンジを使用した食事を検討している場合は、誤嚥のリスクがあるため正しい使用方法を獣医師から教わってください。
Q3.ずっと撫でていた方が安心?
A.撫でていた方が良いかは、個体差があります。ずっと撫でられることで安心する犬もいれば、過度な撫でを刺激に感じ、ストレスとなる犬もいます。愛犬を撫でたときの反応をよく観察し、嫌がる様子があれば無理に続けないようにしてあげましょう。そばにいるだけでも、犬の安心につながります。
【まとめ】最後にしっかり看取ることが、最大の愛情と後悔の軽減に繋がる
犬は話すことができないため、何をしてほしいのか、何を思っているのかは誰にもわかりません。
しかし、犬の最後の気持ちは、飼い主さんのそばにいたいということでしょう。
生命活動を終える準備に入ると、さまざまな変化が見られます。
そして、その変化ひとつひとつに不安や迷いを感じるのは、それだけ愛犬を大切に想っているからこそです。
看取りに正解はなく、理想通りに看取れるとも限りません。だからこそ、愛犬としっかり向き合い、1日1日を大切に過ごすことが大切です。
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監修・うさパラ コンテンツ制作チーム