2026/08/24

猫の首根っこを掴むと、「安心して大人しくなる」と見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
そのため、猫が暴れたり爪切りを嫌がったりしたときに首根っこを掴めば、落ち着かせられるかもしれないと考えることもあるでしょう。
確かに、母猫が子猫の首元をくわえて運んでいるとき、子猫は大人しくしていますよね。しかし、だからといって人が猫の首根っこを掴んでもいいというわけではありません。
実際、猫の首根っこを掴む行為は、SNSや知恵袋などでもたびたび問題視されています。
誤った接し方は猫の体の負担となるのはもちろん、信頼関係を損ねることにもつながるため、猫の首根っこを掴む行為について正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、猫の首根っこを掴んでもいいのか、大人しくなる理由や避けたい扱い方とあわせて解説します。
- 猫の首根っこを掴んで大人しくなっても安心しているとは限らない理由
- 成猫の首根っこを掴むときに避けたい扱い方
- 首根っこの代わりに猫が安心しやすい接し方
【執筆】なっきー(ペット専門家・ライター)
ペットケアライター。犬猫に関する資格を多数保有するほか、海外のペット関連講座も複数修了。犬猫に関する記事の執筆・監修、ペット用品の商品開発アドバイスなどに携わる。現在も複数の愛犬と暮らしている。
目次
【結論】猫の首根っこを掴んで大人しくなっても落ち着いているとは限らない
前提として、基本的に猫の首根っこは掴まないようにしましょう。首根っこを掴んで大人しくなっても、猫が落ち着いているとは限りません。
猫が抵抗しなくなると、「嫌がっていない」「この方法が合っている」と思うこともあるでしょう。
しかし、考えてみてください。もし自分が動けず、抵抗できないような状況に置かれたときに、本当に落ち着けますか?
同様に、動かないことだけを基準に、猫の気持ちや状態を判断することはできないのです。
猫の首根っこを掴むと大人しく見える理由
猫の首根っこを掴むと、鳴いたり暴れたりしていた猫が、急に動かなくなるため、一見すると大人しくなったように見えますよね。
しかし、そう見えるのには理由があり、見た目だけで判断しないことが大切です。
なぜ、そうした変化が起こるのか知ることで、首根っこを掴むという行為がどれだけ猫に負担をかけているのかが分かるでしょう。
ここでは、猫の首根っこを掴むと大人しく見える理由について解説します。
①母猫が子猫を運ぶときの反応が関係している
猫が首根っこを掴まれると大人しくなるのは、母猫が子猫を運ぶときの反応が関係しています。
子猫は母猫に首の後ろをくわえられると、母猫が運びやすく、移動中に落下しないよう、反射的に手足を体へ寄せて動きを抑える「運搬反応」を取ることがあります。
ただし、これは主に幼い子猫に見られる反応であり、成猫にも当てはまるわけではありません。
②大人しく見える=安心しているとは限らない
猫の首根っこを掴むと、PIBI(圧迫誘発性行動抑制)が起こり、猫の意図に関係なく大人しくなることもあります。
PIBIは安心やリラックスを示す反応ではなく、首の後ろの皮膚への圧迫によって行動が一時的に抑えられた状態です。
詳しい仕組みは明らかになっていませんが、この反応は年齢とともに弱くなることが報告されています。
③成猫では首まわりへの負担が大きくなりやすい
成猫は子猫より体重が重いため、首根っこだけを掴んで持ち上げられると、首の後ろの皮膚に全身の重さが集中します。
そのため、体を支えられずに動きにくくなり、大人しくなったように見えることもあります。
実際に成猫の首根っこを掴んで持ち上げている様子を見て、「苦しそうな顔をしていてかわいそう」といった声も少なくありません。
猫の首根っこを掴まなければいけない時は?
猫の首根っこを掴むことは推奨されていませんが、火や刃物など危険な物に近づいたときや猫同士のケンカなどで、とっさに猫の動きを止めたい状況になることもありますよね。
また、ケアやキャリーケースに入れるなど、日常の中で猫の体に触れたり、抱き上げたりする場面も少なくありません。
どんな状況でも、猫に負担をかける方法は避けることが大切です。
ここでは、猫の首根っこを掴むときに避けたい扱い方について見ていきましょう。
①成猫を首根っこだけで持ち上げない
成猫の首根っこだけで持ち上げるのはやめましょう。
猫の首まわりには重要な神経や血管が多く、皮膚を強く引っ張ったり圧迫したりすることで、痛みや不快感だけでなく、首周辺の組織に負担をかけることもあります。
また、首の後ろの皮膚を強く掴んで動きを制限する「スクラッフィング」の状態で持ち上げると、猫の恐怖やストレスにつながります。
(参考文献:Getting a grip: cats respond negatively to scruffing and clips|Vet Rec)
②爪切りや通院で押さえつける目的では使わない
爪切りや通院時に、押さえつける目的で猫の首根っこを掴むのはやめてください。
猫はそのときの恐怖や不快感を、状況と結びつけて覚えてしまうことがあります。
その結果、同じ場面になると逃げたり暴れるなど、さらに強く抵抗するようになることも珍しくありません。
人に触れられること自体を警戒し、信頼関係にも影響する可能性もあります。
③緊急時でも体全体を支えて短時間で対応する
たとえ緊急時であっても、猫の首根っこだけを掴まず、体全体を支えて短時間で対応することが大切です。
状況によっては猫も興奮しており、突然触れられることでさらに暴れたり、噛みついたりすることもあります。
また、強く拘束するほど恐怖や不安を与えやすいため、必要な対応が済んだらすぐに解放してあげましょう。
猫が嫌がっているサインを見逃さない
猫は言葉で「嫌だ」と伝えられませんが、体を使ってその時々の気持ちを教えてくれています。信頼関係を損なわないためにも、嫌がっているサインも逃さないことが大切です。
もちろん、反応には個体差があるため、一般的なサインだけで判断せず、普段の様子との違いや、耳やしっぽ、姿勢など複数の反応をあわせて見てあげましょう。
ここでは、猫が嫌がっているときに見せるサインについて解説します。
①耳を伏せる・しっぽを強く振る
猫が耳を横や後ろへ伏せ、しっぽを床に打ちつけるように強く振っているときは、不快感や緊張が高まっているサインです。
この状態の猫に触れようと手を伸ばすと、威嚇するだけでなく、噛みついたり引っかいたりするなどの拒否反応が見られることも珍しくありません。
こうした場合は距離を取り、猫が落ち着くまで見守りましょう。
(参考文献:AAFP and ISFM Feline-Friendly Handling Guidelines|Journal of Feline Medicine and Surgery)
②体を固める・逃げようとする
猫が体を固くして動かなくなったり、逃げようとしたりするときは、触られることを嫌がっている可能性があります。
体を固める反応は「フリーズ」と呼ばれ、恐怖や不安によって動けなくなっている状態です。
動かないから受け入れていると判断せず、それ以上近づいたり手を伸ばしたりしないようにしましょう。
③うなる・噛む・引っかく前にやめる
猫がうなった時点で、触れたり抱き上げたりするのはやめましょう。
うなり声は「これ以上近づかないでほしい」という警告です。
それでも触ろうとしたり逃げ道を塞いだりすると、猫は身を守るために噛む、引っかくといった行動を取ることもあります。
警告を無視せず、猫が落ち着けるように距離を取ってあげることが大切です。
首根っこの代わりに猫が安心しやすい接し方をする
猫の首根っこを掴まなくても、落ち着いてもらえる方法はあります。
猫は周囲の変化や人の動きに敏感なため、接し方が急だったり強引だったりすると、逆に警戒が高まりやすくなる動物です。
一度警戒が高まってしまうと、落ち着くまでに時間がかかることも珍しくありません。
そのため、力で動きを止めるのではなく、猫が警戒しにくい接し方をしてあげましょう。
ここでは、首根っこの代わりに猫が安心しやすい接し方について解説します。
①抱っこは胸とお尻を支えて体を安定させる
猫を抱き上げるときは、片手を胸の下に入れ、もう片方の手でお尻や後ろ足を支えましょう。
両手で体重を受け止めることで姿勢が安定し、足が宙に浮いたままになる不安定さを減らすことができます。
抱き上げたあとは、猫の体を自分の胸元へ軽く寄せて密着させると、より体勢が安定しやすくなり、猫も安心しやすくなりますよ。
②爪切りやケアは短時間に分けて行う
爪切りやブラッシングなどのケアは、一度にすべて終わらせようとせず、短時間に分けて行いましょう。
猫は長時間拘束されると、緊張や不安、ストレスを感じ、ケアそのものを嫌がるようになることも少なくありません。
爪切りなら1回に1〜2本だけ行うなど、猫が我慢できる範囲で切り上げるのがポイントです。
③キャリーやタオルに慣らして無理な保定を減らす
キャリーやタオルには、普段から慣らしておきましょう。
キャリーを通院時だけ取り出すのではなく、日頃から室内に置き、猫が自分から中へ入れる状態にしておくことが大切です。
また、タオルで頭や体の一部をやさしく覆うと、周囲の人や動きが見えにくくなるため、落ち着く猫も少なくありません。
タオルは、手足を必要以上に押さえ込むことも避けられますよ。
「猫の首根っこ」に関するよくある質問
Q1.猫の首根っこを掴むと本当に落ち着くのですか?
猫の首根っこを掴むと一時的に動かなくなることはありますが、落ち着いた状態とは限りません。動きが止まる理由には、首への刺激による行動の抑制や、恐怖や緊張による反応もあり、動かないという見た目だけで猫の感情を判断することはできません。動きを確実に止められる方法でもないため、基本的には猫の首根っこを掴まないようにしてください。
Q2.子猫なら首根っこを掴んでも大丈夫ですか?
子猫であっても、首根っこを掴んで持ち上げるのは避けましょう。母猫は子猫を運ぶ際、首の後ろの適切な位置をくわえ、子猫の大きさや状態に合わせて力加減を調整しています。一方、人が手で掴むと力が一部分に集中しやすく、母猫と同じようには扱えません。子猫を抱き上げるときも、胸とお尻を両手で支えて体全体を安定させましょう。
Q3.爪切りで暴れるときは首根っこを掴んでもよいですか?
爪切りで暴れる場合も、首根っこを掴むのは避けてください。強く押さえて続けるほど、猫の恐怖や抵抗が強まり、噛みつきや引っかきによるケガにつながりやすくなります。また、爪切りに対する苦手意識を猫に与えてしまうでしょう。猫が暴れて安全に切れない場合は無理をせず、動物病院やトリミングサロンへ相談してください。
【まとめ】猫の首根っこは掴んで落ち着かせるより体を支えて接しよう
「猫の首根っこを掴むと落ち着く」という話は、ずいぶん昔から言われてきたことです。
母猫が子猫の首をくわえて運ぶ姿から、人が猫を扱う際にも首根っこを掴む方法が広まり、長く一般的な保定方法として用いられてきました。
しかし、猫の行動やストレスへの理解が進んだ現在では、動かなくなることと安心していることは同じではないと考えられています。
また、体への負担もたびたび問題視されています。
猫の首根っこを掴んで落ち着かせるのではなく、猫の体全体を支える接し方を基本にしていきましょう。
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実は、猫の首根っこを掴む方法は、以前は動物病院などでも一般的に使われていました。しかし、現在は猫への負担をできるだけ減らす「キャットフレンドリー」な扱い方が広がり、必要以上に押さえないことが重視されています。また、首根っこを掴んだ際に抵抗しない猫でも、その経験が繰り返されることで、抱っこを嫌がるようになる可能性もあります。そのため、愛猫が抵抗しない場合でも、首根っこを掴むことは避けてくださいね。
監修・うさパラ コンテンツ制作チーム