2025/11/26
愛犬が、眠る時にそっと体に寄り添ってくれる。
飼い主さんにとって、それは何とも言えない温かくて幸せな瞬間ですよね。
「どうしてこんなにくっついて寝るのかな?」「甘えているだけ?それとも何か他の理由があるの?」そんな風に、愛犬の気持ちをもっと深く知りたいと思ったことはありませんか。
この記事では、その愛らしい行動の科学的な根拠を紐解き、寝る場所による意味についても考察していきます。
【監修】うさパラ コンテンツ制作チーム
犬猫ペットのお薬通販輸入代行うさパラのコンテンツ制作チーム。専門知識を活かし、正確で分かりやすい情報発信を心がけています。 薬剤師 資格保有者が在籍。
目次
犬がくっついて寝るのは“甘え”だけじゃない
犬がくっついて寝るのは、群れで生きてきた本能(安全確保や体温保持)、飼い主さんへの強い愛着と安心感、寝床そのものの快適さ、そして「くっついていると良いことがある」という学習など、様々な要因が複雑に絡み合っています。
特に、人と犬が見つめ合うことで、互いに「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが分泌され、絆が深まることは科学的にも示されています。
「飼い主さんのそばにいると落ち着く」というのは、生物学的な根拠があるのです。
加えて、犬は人間のようにまとめて深く眠るのではなく、短い睡眠を繰り返す傾向があります。
そのため、静かで暖かく、安心できる場所、つまり飼い主さんのそばを選びやすいという環境的な理由も考えられます。
(参考文献:Oxytocin-gaze positive loop and the coevolution of human-dog bonds|Science)
犬がくっついて寝る理由①:群れの安全戦略
犬の祖先であるオオカミは、群れで体を寄せ合って眠ることで、互いを外敵や寒さから守ってきました。
一匹が休んでいる間も他の仲間が警戒することで、群れ全体の安全を確保していたのです。
家庭で暮らす犬にも、この「群れで身を守る」という本能は色濃く残っています。
飼い主さんの体に背中を預けたり、ぴったりとくっついたりするのは、「ここは信頼できる仲間(リーダー)のそばだから安全だ」と感じている証拠。
体を近づけることは、彼らにとって安心と安全を得るための自然な行動なのです。
(参考文献: Social Context Influences Resting Physiology in Dogs|MDPI)
犬がくっついて寝る理由②:体温保持・睡眠効率
特に寒い季節や、体温調節がまだ苦手な子犬、体力が落ちているシニア犬にとって、くっついて寝ることは体温を保つための合理的な方法です。
互いの体温で暖め合うことで、エネルギーの消耗を抑え、効率よく体を休めることができます。
また、犬の睡眠は人間よりも浅く、物音や気温の変化で目を覚ましやすい傾向があります。
暖かく安心できる飼い主さんのそばは、犬にとって質の高い睡眠を得やすい場所でもあるのです。
犬がくっついて寝る理由③:愛着・安心
犬は、信頼する相手との触れ合いを通じて強い安心感を覚える社会的な動物です。
飼い主さんにくっついて寝る行動は、「あなたのそばが一番安心できる」という、深い愛着と信頼の何よりの証拠と言えるでしょう。
い主さんの匂いや心臓の音、穏やかな呼吸のリズムは、犬にとって最高の精神安定剤。
日本で行われた研究では、人と犬が見つめ合うことで、双方に「幸せホルモン」オキシトシンが分泌され、リラックス効果が高まることが示されています。
犬がくっついて寝る時、犬も人も共に心が落ち着くのは、こうした生物学的なメカニズムも関係しているのです。
犬がくっついて寝る理由④:環境快適性
時には、とてもシンプルな理由も考えられます。
それは、「飼い主さんのベッドや布団が、自分の寝床よりも快適だから」。
柔らかい感触、適度な暖かさ、そして大好きな飼い主さんの匂い。
犬にとって、これ以上魅力的な寝場所はないのかもしれません。
もちろん、一緒に寝ること自体は問題ありませんが、ベッドからの転落や、衛生面、お互いの睡眠を妨げてしまう可能性といったリスクには注意が必要です。
犬がくっついて寝る理由⑤:学習
犬はとても賢いので、「くっつくと良いことがある」と学習している場合もあります。
例えば、飼い主さんのベッドに乗ると、撫でてもらえたり、優しく声をかけてもらえたりする経験が繰り返されると、「ここに来れば注目してもらえる」と学習し、くっついて寝る行動が習慣化することがあります。
もし、夜中にクンクン鳴いて起こすなど、過度な要求行動に繋がっている場合は、落ち着いている時にだけ優しく声をかけるなど、対応を一貫させることが大切です。
寝る場所によって意味がある?
「足元で寝るのは尊敬の証?」「顔の近くは下に見ているから?」
犬がくっついて寝る場所によって、その心理や関係性を読み解こうとする情報がありますが、単純な上下関係で解釈するのは、科学的な根拠に乏しく、誤解を生む可能性があります。
犬が寝る場所を選ぶ理由は、安心感、快適さ、飼い主さんの動きやすさ、その時の気分など様々です。
以下は、あくまで考えられる可能性の一つとして参考にしてください。
背中合わせ
互いの死角をなくし、背中を預けられる高い信頼を示しているのかもしれません。また、適度な距離感を保ちつつ暖を取れる心地よさもあるでしょう。
足元
飼い主さんの寝返りの影響を受けにくく、何かあった時にすぐに動きやすい場所です。また、ベッドの中で比較的涼しい場所であることも理由かもしれません。
脇腹/腕枕
飼い主さんの体にぴったりと密着し、心音などを感じられる最大限の安心感を求めているのでしょう。甘えたい気持ちが強い子に見られるかもしれません。
枕元・顔の近く
飼い主さんの表情や呼吸を一番近くで感じていたい、強い親近感の表れと考えられます。
ベッドの下
狭くて暗い場所は、犬にとって巣穴のような安心できる空間なのかもしれません。
暑い時期に涼を求めている場合や、静かに眠りたい時に選ぶことがあります。
ただし、急に隠れるようになった場合は、痛みや体調不良のサインではないか注意が必要です。
愛犬と寝る人間にとって心理的な効果
犬がくっついて寝ることは、飼い主さんにとっても、科学的に証明された良い効果があります。
愛犬との触れ合いは、人のオキシトシンの分泌を促し、心拍数を落ち着かせ、ストレスを軽減し、幸福感を高めることが分かっています。
言葉を交わさなくても、寄り添って眠る時間は、愛犬との絆を深めるかけがえのないひとときとなるでしょう。
ただし、睡眠不足や衛生面での懸念がある場合は、無理なく続けられる形を見つけることが大切です。
「犬がくっついて寝る」に関するよくある質問
Q1. 一緒に寝ると分離不安になりますか?
A. 一緒に寝ること自体が直接の原因ではありません。大切なのは昼間の過ごし方です。飼い主さんがいる時でも一人で落ち着いて過ごす練習をしたり、外出や帰宅時に過剰に構いすぎないようにしたりすることで、夜は一緒に寝ていても、昼間は自立して過ごせるようにバランスを取ることは可能です。
Q2. 子どもや高齢者と同室で寝ても大丈夫?
A. 衛生面と安全管理を最優先してください。特に免疫力の低いお子さんや高齢者の方がいる場合は、犬が顔や傷口を舐めないように注意し、寝具の洗濯や犬のノミ・ダニ予防などを徹底しましょう。心配な場合は、寝室は同じでも寝床を分ける「同室別床」を検討するのが安全です。
Q3.犬は一緒に寝る人を選ぶのでしょうか?
A. はい、犬が特定の人を選んでくっついて寝ることはよくあります。その理由は、最も安心できると感じる人、最も強い信頼関係を築いている人を選ぶ傾向があるからです。また、単純にその人の寝相が穏やかで邪魔されにくい、あるいはベッドが快適といった物理的な理由の場合もあります。もし自分が選ばれなくても、それは愛情がないということでは必ずしもないので、がっかりしないでくださいね。
【まとめ】犬がくっついて寝るのは本能と信頼の証
愛犬があなたのそばにくっついて寝るのは、遠い祖先から受け継いだ群れとしての本能(安全・保温)と、あなたへの深い信頼と安心感、そして快適な環境を求めた、彼らなりの合理的な選択です。
寝る場所で上下関係を決めつけるのではなく、その行動の根底にある愛犬からのメッセージを受け止めてあげてください。
ただし、その幸せな時間には、衛生面や安全面での注意も必要です。
メリットと注意点の両方を理解し、ご家族全員にとって最も安全で快適な就寝スタイルを見つけることが、長く続く幸せな関係の鍵となります。
関連記事
-
-
デコピンの犬種(大谷翔平選手愛犬)ってなに?値段はいくらという疑問について解説
大谷翔平選手の愛犬として一躍注目を集めた「デコピン」。 その愛らしい姿に「犬種は何?」「値段はいくらくらい?」と、日本中で検索が急増しています。 結論から言うと、デコピンの犬種は「コーイケルホンディエ …
-
-
犬の嗅覚ってどれくらい?
犬は嗅球というにおいの情報処理を行なう脳の部位が発達しているため、犬は人間と比較して数千倍から1億倍、臭いを感知する能力が優れていると言われています。
-
-
犬にしか聞こえない音とは?吠えなくなる超音波について解説
「犬にしか聞こえない音」は実在します。 愛犬が何もない場所に向かって吠えたり、その不思議な行動の裏には、私たちには聞こえない「音の世界」が広がっています。 犬の耳は、人間が拾えない高い音(超音波)や、 …
-
-
犬のかさ増しダイエットってなに?おすすめの食事や注意点について解説
愛犬のぽっちゃり体型は愛らしいものですが、「肥満は万病のもと」と言われるように、関節や心臓への負担、糖尿病のリスクなど、健康に与える影響は決して無視できません。 「ダイエットさせたいけど、食事の量を減 …
-
-
犬の歯石がポロッと取れる方法はある?歯石ができる仕組みと対処法について解説
愛犬の口臭が気になり始め、歯を見てみたら黄色や茶色の硬い塊がびっしり…。 「この歯石、どうにかならないかな」「SNSで『犬の歯石がポロッと取れる』というグッズを見たけど、本当かな?」。 その「ポロッと …
愛犬が寄り添って眠る姿は、飼い主にとって至福の時ですよね。この行動は、群れで身を守る本能や体温維持、そして何よりあなたへの「絶対的な信頼」の証です。本記事では、その心理的背景を獣医学・行動学の視点で解説しました。お互いの快適な睡眠と健康を守るためには、衛生面や安全面でのルール作りも大切です。愛犬との絆を深めつつ、無理のない共寝の形を見つけるヒントになれば幸いです。
監修・うさパラ コンテンツ制作チーム