【獣医師監修】猫に生肉を与えてもいい?考えられるリスクと食べてしまったときの確認ポイント

      2026/10/02

皿に入った生肉を見つめるキジトラ猫

猫は肉食動物であるため、食事はフードよりも生肉を与える方が自然だと考えてしまいますよね。

そんなとき、「猫に生肉を与えても大丈夫?」、「生肉を与える際のリスクって?」、「猫が生肉を誤食してしまった場合はどうすればいい?」といった疑問をお持ちではありませんか?

たしかに猫は肉食動物ですが、だからといって家庭で生肉を与える必要があるとは限りません。むしろ、生肉には細菌や寄生虫などが存在する可能性があり、栄養バランスが崩れる可能性もあるため、猫に生肉を与えることには注意が必要です。

本記事では、猫に生肉を与える必要性や考えられるリスク、肉の種類ごとの注意点、食べてしまったときに確認したいポイントについて、獣医師がわかりやすく解説します。最後までお読みいただき、猫へ生肉を与えることのリスクについて、正しい理解を深めましょう。

この記事でわかること
  • 猫に生肉を与える必要性が低い理由
  • 鶏肉・豚肉・牛肉など種類別の注意点
  • 食べてしまったときに確認すること
まーふぃー先生

【執筆】まーふぃー先生(獣医師)

犬猫をはじめとした小動物診療に携わってきた獣医師。院長経験を経て、フリーランスとして開業。現在は診療・往診のほか、ペットの健康や医療に関する記事作成、ペット用品の監修など幅広い業務を行っている。

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【結論】猫に生肉を与える必要性は低く、食中毒や寄生虫のリスクがある

結論から申し上げますと、一般的な家庭で猫に生肉を与える必要性が高いわけではありません。

生肉には細菌や寄生虫などの病原体が含まれる可能性があり、食中毒などにつながるリスクがあります。また、骨付き肉の場合は、骨が歯の破折や消化管の閉塞などにつながることも珍しくありません。

さらに、生肉を与えることで、特定の栄養素が不足したり、逆に過剰になったりする可能性があります。

そのため、普段から猫用の総合栄養食を適切に与えているのであれば、リスクを冒してまで栄養補給を目的として生肉を追加する必要性は高くないと考えられています。

(参考文献:Raw Meat Based Diets for Pets | WSAVA)

猫に生肉を与える必要性は高くない

では、なぜ現在は猫に生肉を与える必要性は高くないと考えられているのでしょうか?

現在、一般的な家庭で飼育されている猫には、必要な栄養素を考慮して設計された総合栄養食のフードがあります。

そのため、前述の通り、あえて衛生上のリスクを伴う生肉を普段の食事に追加するメリットは大きくありません。

ここでは、猫に生肉を与えることのリスクと栄養バランスについて、それぞれを詳しく見ていきましょう。

(参考文献:Raw Meat Based Diets for Pets | WSAVA)

①猫は肉食動物でも家庭で与える生肉にはリスクがある

市販されている生肉には、

  • E. coli(大腸菌)
  • Salmonella(サルモネラ)
  • Yersinia(エルシニア)
  • Campylobacter(カンピロバクター)
  • Listeria(リステリア)

などの細菌が存在する可能性があります。これらの細菌は食中毒を引き起こすことがあります。

また、猫だけでなく人にも深刻な健康被害を引き起こす可能性があるため、生肉を扱う飼い主さんや、猫と接触する家族にも感染する可能性があります。

②総合栄養食を食べている猫に生肉を足す必要性は低い

猫の主食として総合栄養食のフードを適切に与えている場合は、基本的には生肉を追加しなくても栄養が不足することはありません。

むしろ生肉だけを自己判断で追加すると、食事全体の栄養バランスが偏る可能性があります。

手作り食や生食を継続的に取り入れたい場合は、獣医師に相談しながら食事内容を検討することが大切です。

猫に生肉を与えることで起こりうる主なリスク

では、猫に生肉を与える場合、具体的にどのようなリスクが考えられるのでしょうか?猫に生肉を与える際の主なリスクとして、

  • 細菌やウイルス、寄生虫などの病原体
  • 栄養バランスの乱れ
  • 家庭内の衛生環境の汚染

といったものが挙げられます。

生肉を食べれば必ず体調を崩すわけではありませんが、与え方や肉の種類によっては、重大な健康被害を引き起こす可能性があります。

また、短期的には問題がないように見えても、長期的に与え続けることで、ゆっくりと健康被害が起こるケースも少なくありません。

さらに、家庭内の衛生環境を汚染することから、猫だけではなく飼い主さんとご家族の健康被害にもつながる可能性があるため、注意が必要です。

ここでは、それぞれのリスクについて、詳しく見ていきましょう。

(参考文献:Raw Meat Based Diets for Pets | WSAVA)

①食中毒につながる細菌が含まれることがある

市販されている生肉には、サルモネラ属菌やカンピロバクターなどの細菌が存在する可能性があります。

特に鶏肉ではカンピロバクター、豚肉ではサルモネラ属菌などが問題となることが珍しくありません。

これらの細菌に猫が感染した場合、嘔吐や下痢などの消化器症状が見られることがあります。

(参考文献:Salmonella (Salmonellosis) | FDA)

(参考文献:Listeria (Listeriosis) | FDA)

②寄生虫やウイルスのリスクがある

生肉では、細菌だけでなく寄生虫やウイルスにも注意が必要です。

特に猫では、生の動物の肉から感染する可能性がある「トキソプラズマ」と呼ばれる感染症がよく知られています。一般的に、外に出ず生肉を食べない室内飼いの猫は、トキソプラズマに感染する可能性は低いです。

しかし、猫がトキソプラズマに感染した動物の肉を食べると、まれに発熱や食欲不振などが見られることがあります。

その後、便中にトキソプラズマのオーシスト※が排泄されますが、排泄する期間は短く、猫から人が感染する可能性は比較的小さいとされています。

しかし、妊婦の方や一部の免疫不全の方では、トキソプラズマの感染から健康上の問題を発症するリスクがあるため、注意が必要です。私の診察でも、妊婦の方からトキソプラズマの検査を依頼された経験があります。

※オーシスト:寄生虫(原虫)の卵のような形態のこと

(参考文献:Toxoplasmosis in Cats | Cornell University College of Veterinary Medicine)

③栄養バランスが偏る可能性がある

生の食材だと、つい「生肉は新鮮で栄養が豊富だ」と考えてしまいますよね。たしかに、加熱した食材と比べ、特定の栄養素が豊富に含まれている可能性はあります。

一方で、

  • カルシウム
  • リン
  • ビタミン

などの栄養素に偏りが起こることもあります。

特に長期間にわたり生肉中心の偏った食事を続けると、栄養バランスの乱れから骨の疾患や体調への悪影響が起こる可能性があると言われています。

④猫だけでなく人への衛生リスクもある

前述の通り、生肉による健康被害は、猫だけではなく人へも起こる可能性があります。

生肉を扱った手や食器、調理器具などを介して、家庭全体に病原体が広がる可能性も否定できません。

もし生肉を扱う場合は、

  • 生肉は使う直前まで適切に保存する
  • 生肉は他の食品とは分けて保管する
  • 食べ残しはそのままにせず、冷蔵庫に入れるか廃棄する
  • 猫の口の周りにキスをしたり、顔を舐めさせたりしないようにする
  • 猫を触った後は手をよく洗う

といった点に注意しましょう。

(参考文献:Get the Facts! Raw Pet Food Diets can be Dangerous to You and Your Pet | FDA)

肉の種類ごとに注意したいポイント

「生肉」と一括りにしても、肉の種類によって注意したい病原体やリスクは異なります。また、生肉の安全性は肉の種類だけでなく、処理や保存方法などによっても左右されます。

では、具体的に各種の肉において、どのような点に注意が必要なのでしょうか?

一般的によく売られている鶏肉や豚肉、牛肉、馬肉に加え、ジビエなどについても、それぞれ詳しく見ていきましょう。

(参考文献:Parasites and Foodborne Illness | Food Safety and Inspection Service)

(参考文献:Roasting Those “Other” Holiday Meats | Food Safety and Inspection Service)

①鶏肉・豚肉・ジビエは特に加熱を前提に考える

鶏肉にはカンピロバクターやサルモネラ属菌、豚肉にはサルモネラ属菌やトキソプラズマなどの病原体が含まれているリスクがあります。猫に与える際は、十分に加熱した上で与えましょう。

また、イノシシやシカといった、いわゆる「ジビエ」の肉に関しても注意が必要です。ジビエの肉は十分な食肉検査を受けていないケースもあるため、加熱を前提に安全な取り扱いを心がけましょう。

具体的な寄生虫としては、トキソプラズマや旋毛虫(トリヒナ症)などに注意が必要です。

②牛肉や馬肉も安全とは言い切れない

「牛肉や馬肉であれば生でも安全」と安直に考えるのも適切ではありません。

人向けに生食用として販売されている肉であっても、それだけを理由に猫への生食が安全だと判断するのは避けたほうがよいでしょう。

具体的な病原体として、

  • 旋毛虫(トリヒナ症)
  • 無鈎条虫(サナダムシ)
  • 腸管出血性大腸菌

などが、生肉で感染しうるものに挙げられます。また、加熱用の肉や加工品は表示に従って十分に加熱しましょう。

猫が生肉を食べてしまったときに確認すること

では、もし愛猫に生肉を与えてしまった場合、もしくは誤食してしまった場合は、どのように対処すればよいのでしょうか?

愛猫が生肉を食べた場合でも、必ず体調を崩すというわけではないため、まずは落ち着いて、何をどれくらい食べたのかを確認しましょう。

具体的に確認する点は、

  1. 肉の種類や状態
  2. 骨や味付けの有無
  3. 愛猫の体調

といったものが挙げられます。ここでは、それぞれの点について具体的なポイントを見ていきましょう。

①食べた肉の種類・量・鮮度を確認する

最初に、愛猫が何の肉をどの程度食べたのかを確認しましょう。

鶏肉や豚肉、牛肉、ジビエなど、肉の種類を確認し、食べた時間やおおよその量も把握します。

購入した肉であれば、商品パッケージや表示を残しておくと、動物病院へ相談するときに役立つことがあります。

また、完全に生であったのか、加熱されていたのか、保存状態はどうだったかなど、鮮度に関する情報も記録しておきましょう。

②骨・味付け・タレ・香辛料の有無を見る

次に、生肉そのものだけでなく、骨や味付けにも注意が必要です。

骨を一緒に食べていないか、タレや調味料が付いていなかったかを確認しましょう。

特に玉ねぎやにんにくなど、猫にとって注意が必要な食材が含まれている場合は、生肉とは別の問題が生じる可能性があります。

骨付き肉の場合は、骨が消化管にトラブルを引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

私の診察でも、骨付き肉を丸ごと食べて、開腹手術をした症例を経験しています。

③嘔吐・下痢・食欲不振・元気消失がないか確認する

愛猫が生肉を食べた後は、嘔吐や下痢、発熱、食欲不振などの変化がないか観察しましょう。もしサルモネラ菌やリステリア菌に感染していた場合、これらの症状が現れる可能性があります。

普段と様子が違う場合は、早急に動物病院に相談するよう心がけましょう。

ただし、症状が見られないからといって、必ずしも問題がないとは言い切れません。家庭内の衛生環境にも注意し、不安があれば獣医師に相談するようにしましょう。

猫に生肉を与えることに関するよくある質問

Q1. 猫は肉食動物なのに、なぜ生肉を与えないほうがいいの?

たしかに猫は肉食動物ですが、一般的な家庭で飼育されている猫では、生肉を安全に食べられるかどうかとは、また別の問題になります。

自然界では獲物を生で食べることがありますが、家庭で与える生肉の安全性を自然界の食事と同じように考えることはできません。

本記事で解説したリスクを考えますと、現在は猫に必要な栄養素を考慮した総合栄養食もあるため、栄養を摂取する目的であえて生肉を与えることは推奨されません。

Q2. 猫が生の鶏肉を少し食べてしまったら危険?

少量の生の鶏肉を食べたからといって、必ず体調を崩すわけではありません。

ただし、鶏肉にはカンピロバクターやサルモネラ属菌などが存在する可能性があり、体調を崩すリスクがあるため、注意が必要です。

まずは、愛猫が食べた鶏肉の量や時間、肉の状態を確認し、その後の体調の変化をよく確認しましょう。

思った以上に量が多かったり、嘔吐や下痢、食欲不振などの体調の変化が見られたりする場合は、速やかに動物病院へ相談することをおすすめします。

Q3. 猫に肉を与えるなら、どうすればリスクを抑えられる?

愛猫に肉を与える場合は、基本的に十分に加熱し、味付けをしないことが大切です。

また、骨を取り除き、量に関しても主食として与えている総合栄養食とのバランスを崩さない程度にとどめましょう。

また、肉の種類もジビエなどの珍しいものは避けることが無難です。もし手作り食を主食にしたい場合は、必要な栄養素が不足しないよう獣医師などの専門家に相談することをおすすめします。

【まとめ】猫に生肉を与える必要性は低く、食べたときは体調変化を確認する

猫は肉食動物ですが、だからといって一般的な家庭の猫に生肉を積極的に与えることが自然というわけではありません。

生肉には、細菌や寄生虫に感染するなどのリスクがあります。特に鶏肉、豚肉、ジビエなどは注意が必要で、牛肉や馬肉も「生食用なら安全」とは言い切れません。

普段から総合栄養食を適切に与えている猫であれば、栄養補給を目的に生肉を追加する必要性は低いと考えられます。

もし愛猫が生肉を食べてしまった場合は、肉の種類や量、骨・味付けの有無を確認し、体調に変化がないか観察しましょう。

気になる症状や食べた生肉に不安がある場合は、早めに動物病院へ相談しましょう。

監修者コメント
監修者の写真

現在の家庭の猫では、「肉食動物だから生肉を与えるのが自然」と単純に考えるのはおすすめできません。生肉を与えることには、さまざまな衛生上のリスクがあり、かつ食事全体の栄養バランスが乱れる原因になりかねません。

猫の健康を守るためには、安全性と栄養バランスの両方を考え、総合栄養食をメインとした猫用の食事を選ぶことが大切だと考えます。

もし生肉を与えてしまった場合も、すぐに慌てるのではなく、食べた肉の種類や量、骨や味付けの有無を確認し、愛猫の体調を観察しましょう。

異常が見られた場合や判断に迷う場合は、自己判断せず獣医師に相談するよう心がけましょう。

監修・うさパラ コンテンツ制作チーム

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