猫がくしゃみをするけど食欲はあるから大丈夫?何回も出て止まらない時の対処法

      2025/12/02

愛猫が何度もくしゃみを「クシュン、クシュン!」と連発しているのを見ると心配になりますよね。

「でも、ごはんもよく食べるし元気いっぱい。ただのホコリかな?」「わざわざ病院に連れて行くほどではないかも…」。

確かに、食欲は猫の健康状態を知る上でとても大切なバロメーターで、元気にごはんを食べてくれる姿を見ると、つい安心してしまいがちです。

しかし、くしゃみが続く場合、その「食欲はある」という一点だけで「全く問題ない」と自己判断してしまうのは、少し早いかもしれません。

この記事では、獣医師の視点から、「食欲があっても注意すべき猫のくしゃみ」の見分け方、すぐに動物病院へ行くべき危険なサイン、そしてご自宅でできる応急ケアや予防法まで、あなたの疑問と不安に具体的にお答えします。

うさパラ コンテンツ制作チーム

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【結論】猫がくしゃみをして食欲あっても油断は禁物

まず結論として、猫がくしゃみをしていても食欲や元気があれば、必ずしも重篤な状態とは限りません。

しかし、それだけで「全く問題ない」と油断するのは禁物です。 

くしゃみが一時的でなく何回も続けて出たり、数日間にわたって止まらなかったりする場合は注意が必要です。

その背景には、いわゆる「猫風邪」と呼ばれるウイルス性の上部気道感染症や、細菌による鼻炎・副鼻腔炎などが隠れている可能性があります。

これらは初期段階や軽症であれば食欲が落ちないことも多いですが、放置すると重症化したり、こじらせて慢性化したりする恐れがあります。

特に、黄色や緑色のドロッとした鼻水が出ている、熱があるように体が熱い、いつもより元気がないといったサインが見られたら、たとえ食欲があったとしても、早めに動物病院を受診することが大切です。

また、多頭飼育のご家庭では、感染症が他の猫にうつってしまう可能性も高いため、早めの対応と、必要であれば一時的な隔離や食器・トイレの消毒といった衛生管理を検討しましょう。

(参考文献:Runny Nose, Coughing or Sneezing|VCA Animal Hospitals)

今すぐ受診すべき「赤信号」

以下の症状は、食欲の有無に関わらず、緊急性が高いと考えられる危険なサインです。

様子を見ずに、すぐに動物病院を受診してください。

口を開けてハアハア呼吸している、呼吸の回数が異常に速い、息をするのが苦しそう

これらは重度の鼻づまりや、肺炎、喘息、心臓病、あるいは熱中症など、命に関わる緊急事態を示唆しています。

高熱がある(耳や体を触って明らかに熱い)、ぐったりして動かない

体がウィルスや炎症と戦っているサインであり、全身状態が悪化している証拠です。

黄色や緑色の、膿(うみ)のような粘り気のある鼻水が大量に出ている

細菌感染が強く疑われ、抗生物質による治療が必要です。

片方の鼻からだけ膿のような鼻汁が出る

歯の根元に膿が溜まる「歯根膿瘍(しこんのうよう)」が鼻に影響していたり、鼻の中に腫瘍や真菌(カビ)ができていたりする可能性があります。

鼻そのものが腫れたり、形が変わってきたりしている

クリプトコッカス症などの特殊な真菌感染症の疑いも考えられます。

これらの「赤信号」を見逃さず、早期に適切な治療を開始することが、愛猫の苦痛を和らげ、回復への近道となります。

(参考文献:  Emergencies in Cats|VCA Animal Hospitals)

「猫がくしゃみをするけど食欲はある」主な原因

食欲が比較的保たれている状況でも、くしゃみが続く場合には、様々な原因が考えられます。

1. 感染症

猫のくしゃみの原因として最も一般的なのが、「猫風邪」とも呼ばれるウイルス性の呼吸器感染症です。特に「猫ヘルペスウイルス(FHV-1)」や「猫カリシウイルス(FCV)」が代表的で、これらはくしゃみ、鼻水、結膜炎(目の炎症)などを引き起こします。初期段階や軽症の場合は食欲が落ちないことも多いですが、ウイルスによって鼻の粘膜が傷つくと、そこに細菌が二次感染を起こし、黄色や緑色のドロッとした鼻水に変わってくることがあります。ワクチン接種は、これらの感染症の発症リスクを減らし、かかったとしても症状を軽くする効果が期待できます(ただし、感染を100%防ぐものではありません)。

2. 非感染性の原因(アレルギー、刺激物、乾燥)

人間と同じように、猫もハウスダスト、花粉、カビ、あるいは特定の食べ物に対してアレルギー反応を起こし、くしゃみや透明なサラサラした鼻水が出ることがあります。また、タバコの煙、芳香剤や香水、消臭スプレーの粒子、ホコリっぽい猫砂、あるいは単なる空気の乾燥などが鼻の粘膜を物理的に刺激し、くしゃみを誘発することも少なくありません。この場合は、まず原因となっている刺激物を特定し、生活環境から取り除くことが基本的な対策となります。

3. 慢性的な要因(歯周病、慢性副鼻腔炎など)

くしゃみや鼻水が長期間続く場合、慢性的な病気が隠れている可能性も考慮する必要があります。例えば、重度の歯周病が進行し、上顎の歯の根元に膿が溜まる「歯根膿瘍」が鼻腔(鼻の奥の空間)にまで影響を及ぼし、片方の鼻からだけ膿のような鼻汁が出続けることがあります。また、細菌感染などが治りきらずに慢性化した「慢性副鼻腔炎」では、ズーズーという鼻詰まりの音や粘り気のある鼻水が持続します。若い猫では鼻の奥に「鼻咽頭ポリープ」という良性のデキモノができ、くしゃみや鼻詰まり、いびきの原因になることも。まれに、鼻の中に腫瘍ができたり、遊んでいる時に草の穂先などの異物が入り込んでしまったりして、くしゃみが続くケースもあります。

4. 環境要因による悪化(花粉、換気不足など)

花粉が多く飛散する季節や、冬場の暖房による空気の乾燥は、猫の鼻の粘膜を刺激し、くしゃみを悪化させやすい要因となります。室内の湿度を適度(一般的に40〜60%が目安)に保つこと、こまめな換気や空気清浄機の使用、そしてホコリの立ちにくい猫砂を選ぶことなどが、症状の緩和に繋がる場合があります。

(参考文献: Allergies in Cats|VCA Animal Hospitals)

在宅でできる対処法(応急ケア)

動物病院へ行くべきか少し様子を見るか迷う場合でも、ご自宅でできるケアがあります。ただし、これらはあくまで症状を和らげるための補助的なものであり、原因そのものを治療するものではないことを理解しておきましょう。

加湿(湿度40–60%を保つ)

加湿器を利用したり、洗濯物を室内に干したりするなどして、部屋の湿度を**40〜60%**程度に保つよう心がけましょう。適度な湿度は、乾燥しがちな鼻の粘膜を保護し、鼻水を柔らかくして排出しやすくする効果が期待できます。ただし、湿度が高すぎるとカビの発生原因にもなるため、加湿のしすぎには注意が必要です。

刺激物を避ける

タバコの煙(受動喫煙は猫の呼吸器に非常に有害です)、香りの強い芳香剤や消臭スプレー、お香、ヘアスプレーなどの使用は極力控えましょう。猫砂も、細かい粉塵が舞い上がりにくいタイプを選ぶのがおすすめです。こまめな換気と掃除(ホコリを効率的に除去できるHEPAフィルター付きの掃除機などが推奨されます)で、できるだけクリーンな空気環境を保ちましょう。鼻の周りが鼻水で汚れている場合は、ぬるま湯で湿らせた柔らかいコットンやガーゼで優しく拭き取ってあげてください。

記録をつける

くしゃみの回数や頻度(一日何回くらいか、どんな時に出やすいか)、鼻水の色や性状(サラサラかドロドロか)、量、体温(可能であれば)、食欲や元気の度合い、呼吸の状態(速くないか、苦しそうではないか)などを、48〜72時間(2〜3日間)を目安に記録しておきましょう。もし症状が悪化する、あるいは全く改善が見られない場合には、その記録を持って動物病院を受診してください。獣医師が診断を下す上で、非常に重要な情報となります。可能であれば、くしゃみをしている様子や鼻の状態を動画で撮影しておくのも大変役立ちます。

(参考文献:Feline Upper Respiratory Infection|VCA Animal Hospitals

予防と再発低減のために

くしゃみの原因となる病気を予防し、再発を減らすためには、日頃からのケアが大切です。

ワクチン接種と定期健診

猫の混合ワクチン(3種混合ワクチンなど)には、猫風邪の原因となる猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルス感染症の重症化を抑える効果が期待できます。ワクチンで100%感染を防げるわけではありませんが、発症リスクを大幅に減らし、もし感染しても症状を軽くすることができます。特に子猫や免疫力の低い猫にとっては重要です。また、年に1〜2回の定期的な健康診断は、歯周病や慢性鼻炎といった、くしゃみの原因となりうる病気の早期発見・早期治療に繋がります。

環境整備

ホコリの立ちにくい猫砂を選び、香りの強い芳香剤や化学薬品の使用を控える、適切な湿度(40〜60%)を保つ、こまめな掃除と換気を行うなど、鼻への刺激をできるだけ減らす生活環境を整えましょう。

ストレス管理

環境の変化や他の猫との関係など、ストレスは猫ヘルペスウイルスの再活性化(一度感染すると体内に潜伏し、免疫力が落ちた時に再び症状を出すこと)を引き起こし、くしゃみなどの症状が再発するきっかけとなることがあります。安心して隠れられる場所を用意する、毎日決まった時間に遊んであげる、食事やトイレの環境を常に清潔に保つなど、猫が精神的に安定して暮らせる環境を心がけましょう。

(参考文献: Feline Respiratory Disease Complex (Feline Viral Rhinotracheitis, Feline Calicivirus|Merck & Co., Inc)

「猫のくしゃみと食欲」に関するよくある質問

Q1.「逆くしゃみ」というものがあると聞きました。普通のくしゃみとどう違いますか?

A1. 通常のくしゃみは「フン!」と勢いよく息を吐き出す反射です。一方、「逆くしゃみ」は、発作的に「ブーブー」「ズーズー」といった音を立てながら連続して息を吸い込む動作です。これは、鼻の奥や喉への刺激が原因で起こると考えられており、見た目は苦しそうですが、通常は数秒〜数十秒で自然に治まり、猫自身はケロッとしていることが多いです。ただし、通常のくしゃみや咳、あるいは本当に呼吸が苦しい状態との区別が難しい場合もあります。もし頻繁に起こる、長時間続く、治まった後も元気がないなどの場合は、動画を撮影して動物病院に相談しましょう。

(参考文献:Rhinitis and Sinusitis in Cats|Merck & Co., Inc.)

Q2.ワクチンを打っていれば、猫風邪にはなりませんか?

A2. 残念ながら、ワクチンを打っていても猫風邪にかかる可能性はゼロではありません。ワクチンは、主に感染した場合の症状を軽くしたり、重症化(肺炎など)を防いだりすることを目的としています。特に、多くの猫風邪の原因となる猫ヘルペスウイルスは、一度感染すると体内に潜伏してしまうため、ワクチンを打っていてもストレスなどをきっかけに再発することがあります。しかし、ワクチン接種は重症化リスクを大幅に減らすため、非常に重要です。

(参考文献:Herpesvirus Infection in Cats (Feline Viral Rhinotracheitis)|VCA Animal Hospitals)

Q3.くしゃみをしている猫と、他の猫は隔離すべきですか?

A3. はい、隔離することを強く推奨します。特に猫風邪などの感染症が原因である場合、くしゃみによってウイルスや細菌が空気中に飛散し、他の同居猫に容易に感染が広がってしまいます。可能であれば、くしゃみをしている猫を別の部屋に移し、食器やトイレ、寝床などを完全に分けてください。お世話をする飼い主さんも、部屋の行き来の際には手洗いや消毒を徹底し、感染を広げないように注意が必要です。たとえ症状が軽く見えても、多頭飼育環境では感染が広がりやすいため、早めの隔離と動物病院への受診が推奨されます。

【まとめ】食欲は安心材料の一つ。しかし油断せず、猫の全身を観察しよう

猫がくしゃみをしていても、食欲や元気があれば、過度に心配しすぎる必要はないかもしれません。

しかし、それはあくまで「安心材料の一つ」であり、「絶対大丈夫」という保証ではありません。

くしゃみが止まらない、あるいは数日以上続く場合は、何らかの原因が隠れている可能性があります。

特に、黄色や緑色の鼻水、発熱、呼吸が苦しそう、元気がないといった「赤信号」が一つでも見られたら、食欲があっても迷わず動物病院を受診してください。

 ご自宅では、加湿や刺激物の除去といったケアを行いながら、48〜72時間は愛猫の状態を注意深く観察し、記録をつけましょう。 

予防にはワクチン接種と清潔でストレスの少ない環境が基本です。

食欲だけに惑わされず、愛猫の全身の状態をしっかりと見てあげることが、病気の早期発見と健康維持に繋がります。

監修者コメント
監修者の写真

愛猫がくしゃみをしていても食欲があるのは、大変良いことです。しかし、それだけで「大丈夫」と自己判断するのは危険です。特に、鼻水の色(黄色・緑色)や呼吸の異常は、重症化のサインかもしれません。この記事で紹介した「赤信号」のチェックリストを活用し、安全に様子を見る条件と、すぐに動物病院へ行くべき境界線を判断してください。

監修・うさパラ コンテンツ制作チーム

 - 猫の健康

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